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2007年度 大阪府生協連「政策討論集会」
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雪氷圏への影響
地球温暖化と農業
IPCCの排出シナリオと現実の排出量の経緯
国際交渉の経緯
図16 拡大
図17 拡大
図18 拡大
図19 拡大
図20 拡大
図21 拡大
[講 師]地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
専務理事 早川 光俊 氏
国際交渉の経緯
国際交渉の経緯を少しお話しさせていただきます。地球温暖化問題に国際社会が取り組むようになったのは、1992年のリオの地球サミットからです。大阪の生協の代表の皆さんと、私も一緒にリオ・デ・ジェネイロに行きました。そして、法的拘束力のある削減義務を定めた京都議定書が1997年に採択されて、8年後の2005年にようやく発効し、やっと3年たったわけです。昨年、IPCCの第4次報告書が出され、2013年以降の削減義務と制度枠組みの議論が始まりました。京都議定書は2008年から2012年までのことしか定めていません。日本の6%削減というのは皆さんもご存じだろうと思いますが、これは2012年までの義務です。2013年以降、日本はどういう対策を取るのか、どういった制度にするのかということは、全く決まっていません。京都議定書は2013年以降の議論を、第1約束期間が終わる7年前の2005年から始めなさいと規定していますので、一昨年のモントリオールのCOP11からその議論が始まりました。今回のバリ会議のテーマは、まさにこの2013年以降の削減義務の議論をどう進めるかということだったわけです。
今後の課題としては2つほど上げておきました。1つは、現在の第1約束期間の日本でいうと6%削減、EUでいうと8%、その外の議定書に参加して義務を負っている国が確実に約束を守らなければいけないということです。ここで失敗すると次がありません。もう1つは、今申し上げた2013年以降の制度枠組みの交渉です。
日本はどうなっているか。(図16)日本は1990年レベルから6%削減しないといけないのですが。1990年ではこの横に線が引いてあるレベルでしたが、2005年は減るどころか8.4%増えています。2006年はまだ確定していませんが、速報値で6.4%位増えてしまっています。ということは逆に言いますと、今から2012年までの5年間で年平均で6%削減しようとすると12.4%削減しないといけない。減らすどころか増えてしまっているわけですから。これをどうするかということで2005年、京都議定書の発効した年の4月に、京都議定書目標達成計画が閣議決定されました。名前だけ見ると非常に立派な計画です。この名前を読んだだけでも目標が達成できた気分になるのですが、実はまったくそうではなくて、この目標達成計画はそもそも6%削減できる計画ではありません。私なんかが言ってもあんまり迫力がないのですが、この目標達成計画が閣議決定される1週間ほど前に、衆議院でこれについての参考人質疑が行われ、森島昭夫さんというこの問題を審議してきた政府の審議会の議長さんが国会で参考人として呼ばれて証言しました。「今回、閣議決定される予定の目標達成計画で6%達成できますか」と聞かれて、「出来ません」と答えています。目標達成計画は、そもそも6%の目標を達成できる計画ではなかったわけです。なぜかと言いますと、森林吸収で3.8%削減する計画になっているのですが、これは出来そうもないのです。森林などを所管している林野庁が、せいぜい2.6%程度だと言っているのですから、1.2%数字が合わない。
「原子力発電所の着実な前進」ということで、原子力発電を87~88%利用するということですが、今まで利用してきた中で最高が84%です。最近の原子力発電の利用率は70%前後です。去年は地震があったせいでもっと落ち込みますね。ですから、87、88%なんてことは、そもそも実現出来そうもないのです。
環境税、国内排出量取引や自然エネルギー普及などの対策は、まったくやろうとしない。去年から目標達成計画を見直さなければいけないということで、30回の審議会が行われました。そして、最終報告案が、去年の12月26日に公表されて、今年1月25日までパブリックコメントを募集していました。CASAも意見を出しましたが、読めば読むほど腹が立つ内容です。6%削減が達成できると書いてないのです。いろんな数字を挙げていますが、合計していくら削減出来るかが書いていない。みんなで一生懸命やれば達成出来るでしょう、みたいなことだけ書いてある。私は精神論だと意見を書いたのですが、今年からいよいよ第1約束期間が始まっているのに、その程度のことしか書いません。なぜそうなるかと言いますと、産業界が反対するからです。環境税もすでにヨーロッパで導入されていて効果を上げています。排出取引制度もヨーロッパ全域で、今年1月1日から本格施行になって、アメリカでも、シュワルズネッカー知事のカルフォルニア州をはじめとする西部の州、東部の州、カナダの州なども、EUの制度に連動した排出量取引制度を動かそうとしています。ところが、日本ではまったく導入しようとしないのです。いちばん排出量の大きい産業界の排出削減については、日本経団連の自主行動計画にすべて丸投げです。ヨーロッパでは自主行動計画ではなく、政府や地方自治体などとの協定になっています。だから、計画の達成が義務となっていて、しかも義務が達成できなければ、環境税をかけられたり、規制がかかるのもやむをえませんということになっています。日本ではそういう計画はなっていないわけです。
地球温暖化を防止するために
温暖化を防止するためにはどうしたらいいか。単純です。日本の場合は90%が化石燃料から出ています。石炭・石油・天然ガス。だから化石燃料から脱却するしかないんです。化石燃料に頼らない社会を創るしかないのです。対策はつきつめれば2つです。省エネ行動と自然エネルギーへの転換です。化石燃料を使わずに、太陽光とか風力とかの自然エネルギーにエネルギー源へ変える。この2つしかないのです。
日本の二酸化炭素排出量の統計です。(図17)内側の円グラフでは、発電所などのエネルギー転換部門が6%で、工場などの産業部門が36%、運輸部門が20%で、業務部門などが18%で、13%は家庭から出ていますという統計になっています。ところが、世界でこんな統計を取っている国はありません。この外側の円グラフでは、発電所から31%、産業から30%、運輸19%、業務8%、家庭が5%。これが世界的には普通の統計データです。何が違うかといいますと、使っている電気を、家庭などのそれぞれの部門に割り振る前か、後かということです。家庭で使っている電気からの二酸化炭素を、家庭で出ていることにすると13%になります。それを発電所が出したことにすると、外側の円グラフの数字になります。電気のCO2排出量というのは我々では操作出来ないのです。原子力発電所を稼働させるか、火力発電所を稼働させるか、などということなんかを我々はいちども聞かれたことはありませんから。にもかかわらず、電気を使っている部門に勝手に割り振るというやり方を普通はしないのですが、日本はそうしています。外側の円の排出量、これを直接排出量と言いますが、家庭部門で見ますと、家庭における排出量は、運輸部門の自家用車の分を入れても10%位しかありません。要するに9割が企業関連から出ています。運輸関係も75%がトラックであり商用自家用車です。その事をまず私たちは頭に置いておかなければなりません。要するに、私たちが煮炊きもすべて止める、料理も作らない、電気も点けない、テレビも見ないという事をしても、日本の排出量は%しか減らないのです。
日本における排出量の推移についてみると、家庭、業務は確かに増えています。(図18)1990年から2005年までで家庭部門19.6%、業務部門28.5%増えています。産業は横ばいです。ただエネルギーの転換部門では24.9%増えています。確かに家庭部門は増えていますので、私たちが対策を取らないといけないのは事実ですが、私たちがいくら取り組んでも解決出来ないこともあるという事も知っておく必要があると思います。
いろんな活動を今日の後のパネルディスカッションでお話いただく事になっておりますが、皆さんが取り組んでおられる環境家計簿、省エネチャレンジ活動は非常に大切ですが、限界があるということを知っておいていただきたいということです。より大事なのはグリーンコンシューマーとしての活動です。これもあとのパネルディスカッションでお話しいただけると思いますので、自然エネルギーの普及についてお話しておきたいと思います。
なぜ自然エネルギーがいいのか。環境にやさしい、大気汚染物質も二酸化炭素も出さない、災害に強いといろいろありますが、私が一番気に入っているのは、平和で安全だということです。平和って何が関係あるのと思われるかもしれませんが、石炭・石油、特に石油は世界である地域とない地域があります。だから戦争を起こします。石油を巡って戦争が起きます。今度のイラク戦争が起こされた理由については、がいろんな見方があっていいと思いますが、一面が石油を巡る戦争であることは間違いありません。ですが、太陽光とか風とかはどこにでもありますから、太陽光や風を争って戦争は起きません。だから平和なんですね。このキャッチフレーズが一番気に入っています。
太陽光発電設備容量はずっと日本が世界一でした。(図19)この青い線が日本です。他の国は少なくて、日本がダントツ1位だったのですが、最近ドイツにあっという間に越されてしまいました。なぜか。ドイツでは買取保障制度という制度を作りました。高い価格で太陽光発電の電気を買い取ってくれる。60円か70円位で買い取ってくれるので、太陽光発電設備を作っても損はしないのです。そのために、あっという間に日本を越してしまいました。風力発電は、ドイツは今2千万キロワットを超えています。原発20基分です。日本は140万キロワットですから、原発1.3~1.4基分です。ドイツの2千万キロワットの風力発電の8割を市民がお金を出して作っています。何故かと言えば損をしないからです。日本は1300基位ある風車の内20基程度しかまだ市民がお金を出して作った風車はありません。何故かと言うとリスクが伴うからです。私も自然エネルギー市民の会を作って、関西でなんとか風車を作ろうと活動しておりますが、なかなかいろいろな障壁があって難しいです。
それでも何とか作ろうと思っていますが、まだ具体化できていません。しかし、ドイツのような制度があれば、資金回収の目途がたち、事業見通しもたって作り易くなる。要するに仕組みを変えることが大事だということです。仕組みを変えないと行動が広がらない。いろいろな人が参加するシステムを、しかも持続可能な形で作るためには、個々の努力とかももちろん大事ですが、それを踏まえた仕組みを変えていくとか制度を作っていかなければ、こういったものは進まないだろうと私は思います。
この円グラフがドイツにおける風力発電所の所有割合です。(図20)投資会社の投資しているのは市民です。協同組合も市民が作っていますから、全部合わせると8割になるのです。
バリ会議で決まったこと
バリ会議について、少し触れたいと思います。バリ会議は、大きな成果をあげたと思います。バリ会議についての新聞報道はほとんど間違えていますから、あんまり新聞報道を気にしないで下さい。何を間違えたか今から申し上げます。
まず1つの成果は、2009年までに2013年以降の制度について合意していこうというデットライン、交渉期限を決めたことです。交渉期限を決めた交渉というのは、何とかそこに向かって努力して合意の達成が高まります。決めていないとずるずる延びてしまいますから、これが2009年と決まったことは非常に大きいことだと思います。京都議定書もCOP3で合意することが決めていたから、合意できたのです。期限がなかったら、出来ていなかったと思います。もう1つはIPCCの科学的知見を前提にして交渉しようとこれが決まったことです。世界の温室効果ガスの排出量を、今後10年から15年の間に排出のピークとし、削減に向かわなければいけない。世界の温室効果ガス排出量を、2050年までに2000年比で半減以下にしなければならない。そして、とりわけ日本のような先進国は2020年までに1990年比で25~40%削減しないといけないと、IPCC第4次報告書が指摘していることを念頭において交渉していこうということが決まりました。新聞報道が何を間違えたかと言うと、こうしたIPCCの指摘する中長期目標が決定に入っていることを報道しなかったということです。確かに条約の決定と議定書の決定の2つがあって、条約の方の決定にこれは書かれていません。そもそも書かれていたのに落とされてしまった、そのことだけを新聞が書いて、議定書の決定、先進国の削減義務についての決定では、これがちゃんと書き込まれたことを報道しなかったのです。先進国のこれからの削減目標を決めるのが第一の課題ですから、それに関する決定にこうした中長期目標の具体的数値が書かれたことは非常に大きな前進だと思うのですが、その事にまったく触れようとしない報道は私は片手落ちだと思います。
それから、もう1つはアメリカや途上国。今の段階では、自分たちは絶対に新しい義務を負わない、何もしないと言って来たのが、今回は譲歩して、アメリカや途上国の削減目標や対策についても議論して行くことは認めましょうという事で、まだ弱い表現ですが、これも書き込まれています。2013年以降の削減義務や制度設計の交渉を進めるうえで、非常に大きな成果をあげたと思います。
2009年までの2年間が非常に重要です。おそらく人類の未来を決めるのはこの2年間だろうと思います。この2年で、どのような合意ができるのか。今の温暖化の進行具合から見れば、5~6%程度の削減で温暖化を防ぐことはできません。2020年までに25~40%削減というのはかなり重たい数字ですが、こういうところを目指して、それぞれの国が自分のところの削減目標を提示して、それを合意にしていかないと、温暖化は危険なレベルに入ってしまうということです。
日本政府は今回のバリ会議で、一貫して交渉を妨害して非難を浴びました。化石賞という、毎日の交渉で一番後ろ向きな行動や発言した国を、会議に参加している環境NGOが投票して、1~3位を決めて表彰式をやるのですが、会議2日目に日本は1~3位を独占しました。何故かといいますと、日本が2013年以降の枠組みについて、京都議定書を受け継ぐという事を言わなかったからです。むしろ、その逆の、京都議定書とまったく違う制度を目指すかのような発言したからです。今回ダボスで、福田首相が総量削減目標というふうに言いました。京都議定書に定められている国ごとの総量削減を日本も目指すということです。初めての発言です。いままでは一貫して国別の総量削減目標については避けて通っていました。だから非難されたわけです。
温暖化問題について、私たちの日本という国は加害者です。日本は世界の約2%の人口で5%の温室効果ガスを排出しています。世界で第5位の排出国です。1位がアメリカ、2位が中国、3位がロシア、4位がインドで、5位が日本です。工業国でいうとアメリカに次ぐ排出国です。アフリカ全体の排出量よりはるかに日本の方が多いです。そういう意味では残念ながら日本は、温暖化問題では加害国であるという認識を私たちはしないといけないのです。貧しい国、バングラディッシュとかアフガニスタンの人たちの排出量に比べて、一人当たりで百倍以上の排出量です。そういう人たちとの関係をどうするかというのも、やはり私たちは考えなければいけないのです。加害国である日本は率先して対策を進める義務があると思います。また、それは将来世代に対する責務でもあると思います。将来世代といっても、孫やひ孫ではなく、もういまの子供たちの世代ですが。それは、日本の子供たちだけではなく、世界の子供たちに対する責務でもあるということです。
所得と経済の不均衡
リオで3つの公平ということが議論されました。「同世代の人達との公平」、「将来世代との公平」、そして、「人間を含む地球上に生存している多くの生物たちとの公平」です。
これはUNDPという国連機関が作った図です。(図21)
世界の人口を5分割して、最も豊かな2割、次に豊かな2割、中間的な2割、貧しい2割、最も貧しい2割とすると、日本を含む先進国、もっとも豊かな2割が8割以上の富を独占し、エネルギーを独占している。そしてCO2を排出している。最も貧しい人たちは、ほとんどそういった加害行為はしていないのに、影響、被害だけを受ける。温暖化の原因を作ったのは先進国でありながら、最も大きな被害を受けるのは途上国の人たちです。この貧しい人たちの中で3秒に1人子供たちの命が奪われています。こういった状況を変えていくのは、私たち市民の役割だと私は思っていますし、市民が鍵だと思っています。とりわけ、女性が鍵だと思っています。
木津川計さんという方が、「男が元気な時は碌なことがない。やれ戦争だ。やれ高度成長だ。女性が元気な社会が、一番安定してて、平和でいい。」と言っています。その通りだと思います。
加えて私は、弁護士を30年やっていて思うのは、女性が本気になった運動というのは後戻りしない。非常に粘り強いのです。その点男というのは、口ではいい恰好言うのですが、すぐに腰砕けになりますね。日照権を勝ち取る闘いひとつとっても、お父さん連中が出ている時は威勢がいいのですが、すぐに腰砕けになってしまいます。しかしお母さん方が中心になると長続きしますね。私がやった大気汚染裁判もおばあちゃん達が中心です。裁判でおじいちゃんを発言させてもあまり迫力がない。ええ格好をしますからね。おばあちゃん達は、本当の被害を率直に語り、裁判官を動かしました。
私は生協の皆さんと西淀川裁判の闘い以来、お付き合いしてきて本当に思うのは、皆さんがこういう活動に取り組む重要性をぜひ認識して欲しいということです。西淀川の公害裁判も皆さんのおかげで勝つことができました。皆さんは消費者でもあり、そして女性が中心ですから、こういった生協の組織が動くことがやはり日本の社会を、よいほうに変えていくことになるのだと思います。私も、皆さんと一緒にこれからもやって行きたいと思います。
どうも、ありがとうございました。
[講 師]地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
専務理事 早川 光俊 氏
国際交渉の経緯
国際交渉の経緯を少しお話しさせていただきます。地球温暖化問題に国際社会が取り組むようになったのは、1992年のリオの地球サミットからです。大阪の生協の代表の皆さんと、私も一緒にリオ・デ・ジェネイロに行きました。そして、法的拘束力のある削減義務を定めた京都議定書が1997年に採択されて、8年後の2005年にようやく発効し、やっと3年たったわけです。昨年、IPCCの第4次報告書が出され、2013年以降の削減義務と制度枠組みの議論が始まりました。京都議定書は2008年から2012年までのことしか定めていません。日本の6%削減というのは皆さんもご存じだろうと思いますが、これは2012年までの義務です。2013年以降、日本はどういう対策を取るのか、どういった制度にするのかということは、全く決まっていません。京都議定書は2013年以降の議論を、第1約束期間が終わる7年前の2005年から始めなさいと規定していますので、一昨年のモントリオールのCOP11からその議論が始まりました。今回のバリ会議のテーマは、まさにこの2013年以降の削減義務の議論をどう進めるかということだったわけです。
今後の課題としては2つほど上げておきました。1つは、現在の第1約束期間の日本でいうと6%削減、EUでいうと8%、その外の議定書に参加して義務を負っている国が確実に約束を守らなければいけないということです。ここで失敗すると次がありません。もう1つは、今申し上げた2013年以降の制度枠組みの交渉です。
日本はどうなっているか。(図16)日本は1990年レベルから6%削減しないといけないのですが。1990年ではこの横に線が引いてあるレベルでしたが、2005年は減るどころか8.4%増えています。2006年はまだ確定していませんが、速報値で6.4%位増えてしまっています。ということは逆に言いますと、今から2012年までの5年間で年平均で6%削減しようとすると12.4%削減しないといけない。減らすどころか増えてしまっているわけですから。これをどうするかということで2005年、京都議定書の発効した年の4月に、京都議定書目標達成計画が閣議決定されました。名前だけ見ると非常に立派な計画です。この名前を読んだだけでも目標が達成できた気分になるのですが、実はまったくそうではなくて、この目標達成計画はそもそも6%削減できる計画ではありません。私なんかが言ってもあんまり迫力がないのですが、この目標達成計画が閣議決定される1週間ほど前に、衆議院でこれについての参考人質疑が行われ、森島昭夫さんというこの問題を審議してきた政府の審議会の議長さんが国会で参考人として呼ばれて証言しました。「今回、閣議決定される予定の目標達成計画で6%達成できますか」と聞かれて、「出来ません」と答えています。目標達成計画は、そもそも6%の目標を達成できる計画ではなかったわけです。なぜかと言いますと、森林吸収で3.8%削減する計画になっているのですが、これは出来そうもないのです。森林などを所管している林野庁が、せいぜい2.6%程度だと言っているのですから、1.2%数字が合わない。
「原子力発電所の着実な前進」ということで、原子力発電を87~88%利用するということですが、今まで利用してきた中で最高が84%です。最近の原子力発電の利用率は70%前後です。去年は地震があったせいでもっと落ち込みますね。ですから、87、88%なんてことは、そもそも実現出来そうもないのです。
環境税、国内排出量取引や自然エネルギー普及などの対策は、まったくやろうとしない。去年から目標達成計画を見直さなければいけないということで、30回の審議会が行われました。そして、最終報告案が、去年の12月26日に公表されて、今年1月25日までパブリックコメントを募集していました。CASAも意見を出しましたが、読めば読むほど腹が立つ内容です。6%削減が達成できると書いてないのです。いろんな数字を挙げていますが、合計していくら削減出来るかが書いていない。みんなで一生懸命やれば達成出来るでしょう、みたいなことだけ書いてある。私は精神論だと意見を書いたのですが、今年からいよいよ第1約束期間が始まっているのに、その程度のことしか書いません。なぜそうなるかと言いますと、産業界が反対するからです。環境税もすでにヨーロッパで導入されていて効果を上げています。排出取引制度もヨーロッパ全域で、今年1月1日から本格施行になって、アメリカでも、シュワルズネッカー知事のカルフォルニア州をはじめとする西部の州、東部の州、カナダの州なども、EUの制度に連動した排出量取引制度を動かそうとしています。ところが、日本ではまったく導入しようとしないのです。いちばん排出量の大きい産業界の排出削減については、日本経団連の自主行動計画にすべて丸投げです。ヨーロッパでは自主行動計画ではなく、政府や地方自治体などとの協定になっています。だから、計画の達成が義務となっていて、しかも義務が達成できなければ、環境税をかけられたり、規制がかかるのもやむをえませんということになっています。日本ではそういう計画はなっていないわけです。
地球温暖化を防止するために
温暖化を防止するためにはどうしたらいいか。単純です。日本の場合は90%が化石燃料から出ています。石炭・石油・天然ガス。だから化石燃料から脱却するしかないんです。化石燃料に頼らない社会を創るしかないのです。対策はつきつめれば2つです。省エネ行動と自然エネルギーへの転換です。化石燃料を使わずに、太陽光とか風力とかの自然エネルギーにエネルギー源へ変える。この2つしかないのです。
日本の二酸化炭素排出量の統計です。(図17)内側の円グラフでは、発電所などのエネルギー転換部門が6%で、工場などの産業部門が36%、運輸部門が20%で、業務部門などが18%で、13%は家庭から出ていますという統計になっています。ところが、世界でこんな統計を取っている国はありません。この外側の円グラフでは、発電所から31%、産業から30%、運輸19%、業務8%、家庭が5%。これが世界的には普通の統計データです。何が違うかといいますと、使っている電気を、家庭などのそれぞれの部門に割り振る前か、後かということです。家庭で使っている電気からの二酸化炭素を、家庭で出ていることにすると13%になります。それを発電所が出したことにすると、外側の円グラフの数字になります。電気のCO2排出量というのは我々では操作出来ないのです。原子力発電所を稼働させるか、火力発電所を稼働させるか、などということなんかを我々はいちども聞かれたことはありませんから。にもかかわらず、電気を使っている部門に勝手に割り振るというやり方を普通はしないのですが、日本はそうしています。外側の円の排出量、これを直接排出量と言いますが、家庭部門で見ますと、家庭における排出量は、運輸部門の自家用車の分を入れても10%位しかありません。要するに9割が企業関連から出ています。運輸関係も75%がトラックであり商用自家用車です。その事をまず私たちは頭に置いておかなければなりません。要するに、私たちが煮炊きもすべて止める、料理も作らない、電気も点けない、テレビも見ないという事をしても、日本の排出量は%しか減らないのです。
日本における排出量の推移についてみると、家庭、業務は確かに増えています。(図18)1990年から2005年までで家庭部門19.6%、業務部門28.5%増えています。産業は横ばいです。ただエネルギーの転換部門では24.9%増えています。確かに家庭部門は増えていますので、私たちが対策を取らないといけないのは事実ですが、私たちがいくら取り組んでも解決出来ないこともあるという事も知っておく必要があると思います。
いろんな活動を今日の後のパネルディスカッションでお話いただく事になっておりますが、皆さんが取り組んでおられる環境家計簿、省エネチャレンジ活動は非常に大切ですが、限界があるということを知っておいていただきたいということです。より大事なのはグリーンコンシューマーとしての活動です。これもあとのパネルディスカッションでお話しいただけると思いますので、自然エネルギーの普及についてお話しておきたいと思います。
なぜ自然エネルギーがいいのか。環境にやさしい、大気汚染物質も二酸化炭素も出さない、災害に強いといろいろありますが、私が一番気に入っているのは、平和で安全だということです。平和って何が関係あるのと思われるかもしれませんが、石炭・石油、特に石油は世界である地域とない地域があります。だから戦争を起こします。石油を巡って戦争が起きます。今度のイラク戦争が起こされた理由については、がいろんな見方があっていいと思いますが、一面が石油を巡る戦争であることは間違いありません。ですが、太陽光とか風とかはどこにでもありますから、太陽光や風を争って戦争は起きません。だから平和なんですね。このキャッチフレーズが一番気に入っています。
太陽光発電設備容量はずっと日本が世界一でした。(図19)この青い線が日本です。他の国は少なくて、日本がダントツ1位だったのですが、最近ドイツにあっという間に越されてしまいました。なぜか。ドイツでは買取保障制度という制度を作りました。高い価格で太陽光発電の電気を買い取ってくれる。60円か70円位で買い取ってくれるので、太陽光発電設備を作っても損はしないのです。そのために、あっという間に日本を越してしまいました。風力発電は、ドイツは今2千万キロワットを超えています。原発20基分です。日本は140万キロワットですから、原発1.3~1.4基分です。ドイツの2千万キロワットの風力発電の8割を市民がお金を出して作っています。何故かと言えば損をしないからです。日本は1300基位ある風車の内20基程度しかまだ市民がお金を出して作った風車はありません。何故かと言うとリスクが伴うからです。私も自然エネルギー市民の会を作って、関西でなんとか風車を作ろうと活動しておりますが、なかなかいろいろな障壁があって難しいです。
それでも何とか作ろうと思っていますが、まだ具体化できていません。しかし、ドイツのような制度があれば、資金回収の目途がたち、事業見通しもたって作り易くなる。要するに仕組みを変えることが大事だということです。仕組みを変えないと行動が広がらない。いろいろな人が参加するシステムを、しかも持続可能な形で作るためには、個々の努力とかももちろん大事ですが、それを踏まえた仕組みを変えていくとか制度を作っていかなければ、こういったものは進まないだろうと私は思います。
この円グラフがドイツにおける風力発電所の所有割合です。(図20)投資会社の投資しているのは市民です。協同組合も市民が作っていますから、全部合わせると8割になるのです。
バリ会議で決まったこと
バリ会議について、少し触れたいと思います。バリ会議は、大きな成果をあげたと思います。バリ会議についての新聞報道はほとんど間違えていますから、あんまり新聞報道を気にしないで下さい。何を間違えたか今から申し上げます。
まず1つの成果は、2009年までに2013年以降の制度について合意していこうというデットライン、交渉期限を決めたことです。交渉期限を決めた交渉というのは、何とかそこに向かって努力して合意の達成が高まります。決めていないとずるずる延びてしまいますから、これが2009年と決まったことは非常に大きいことだと思います。京都議定書もCOP3で合意することが決めていたから、合意できたのです。期限がなかったら、出来ていなかったと思います。もう1つはIPCCの科学的知見を前提にして交渉しようとこれが決まったことです。世界の温室効果ガスの排出量を、今後10年から15年の間に排出のピークとし、削減に向かわなければいけない。世界の温室効果ガス排出量を、2050年までに2000年比で半減以下にしなければならない。そして、とりわけ日本のような先進国は2020年までに1990年比で25~40%削減しないといけないと、IPCC第4次報告書が指摘していることを念頭において交渉していこうということが決まりました。新聞報道が何を間違えたかと言うと、こうしたIPCCの指摘する中長期目標が決定に入っていることを報道しなかったということです。確かに条約の決定と議定書の決定の2つがあって、条約の方の決定にこれは書かれていません。そもそも書かれていたのに落とされてしまった、そのことだけを新聞が書いて、議定書の決定、先進国の削減義務についての決定では、これがちゃんと書き込まれたことを報道しなかったのです。先進国のこれからの削減目標を決めるのが第一の課題ですから、それに関する決定にこうした中長期目標の具体的数値が書かれたことは非常に大きな前進だと思うのですが、その事にまったく触れようとしない報道は私は片手落ちだと思います。
それから、もう1つはアメリカや途上国。今の段階では、自分たちは絶対に新しい義務を負わない、何もしないと言って来たのが、今回は譲歩して、アメリカや途上国の削減目標や対策についても議論して行くことは認めましょうという事で、まだ弱い表現ですが、これも書き込まれています。2013年以降の削減義務や制度設計の交渉を進めるうえで、非常に大きな成果をあげたと思います。
2009年までの2年間が非常に重要です。おそらく人類の未来を決めるのはこの2年間だろうと思います。この2年で、どのような合意ができるのか。今の温暖化の進行具合から見れば、5~6%程度の削減で温暖化を防ぐことはできません。2020年までに25~40%削減というのはかなり重たい数字ですが、こういうところを目指して、それぞれの国が自分のところの削減目標を提示して、それを合意にしていかないと、温暖化は危険なレベルに入ってしまうということです。
日本政府は今回のバリ会議で、一貫して交渉を妨害して非難を浴びました。化石賞という、毎日の交渉で一番後ろ向きな行動や発言した国を、会議に参加している環境NGOが投票して、1~3位を決めて表彰式をやるのですが、会議2日目に日本は1~3位を独占しました。何故かといいますと、日本が2013年以降の枠組みについて、京都議定書を受け継ぐという事を言わなかったからです。むしろ、その逆の、京都議定書とまったく違う制度を目指すかのような発言したからです。今回ダボスで、福田首相が総量削減目標というふうに言いました。京都議定書に定められている国ごとの総量削減を日本も目指すということです。初めての発言です。いままでは一貫して国別の総量削減目標については避けて通っていました。だから非難されたわけです。
温暖化問題について、私たちの日本という国は加害者です。日本は世界の約2%の人口で5%の温室効果ガスを排出しています。世界で第5位の排出国です。1位がアメリカ、2位が中国、3位がロシア、4位がインドで、5位が日本です。工業国でいうとアメリカに次ぐ排出国です。アフリカ全体の排出量よりはるかに日本の方が多いです。そういう意味では残念ながら日本は、温暖化問題では加害国であるという認識を私たちはしないといけないのです。貧しい国、バングラディッシュとかアフガニスタンの人たちの排出量に比べて、一人当たりで百倍以上の排出量です。そういう人たちとの関係をどうするかというのも、やはり私たちは考えなければいけないのです。加害国である日本は率先して対策を進める義務があると思います。また、それは将来世代に対する責務でもあると思います。将来世代といっても、孫やひ孫ではなく、もういまの子供たちの世代ですが。それは、日本の子供たちだけではなく、世界の子供たちに対する責務でもあるということです。
所得と経済の不均衡
リオで3つの公平ということが議論されました。「同世代の人達との公平」、「将来世代との公平」、そして、「人間を含む地球上に生存している多くの生物たちとの公平」です。
これはUNDPという国連機関が作った図です。(図21)
世界の人口を5分割して、最も豊かな2割、次に豊かな2割、中間的な2割、貧しい2割、最も貧しい2割とすると、日本を含む先進国、もっとも豊かな2割が8割以上の富を独占し、エネルギーを独占している。そしてCO2を排出している。最も貧しい人たちは、ほとんどそういった加害行為はしていないのに、影響、被害だけを受ける。温暖化の原因を作ったのは先進国でありながら、最も大きな被害を受けるのは途上国の人たちです。この貧しい人たちの中で3秒に1人子供たちの命が奪われています。こういった状況を変えていくのは、私たち市民の役割だと私は思っていますし、市民が鍵だと思っています。とりわけ、女性が鍵だと思っています。
木津川計さんという方が、「男が元気な時は碌なことがない。やれ戦争だ。やれ高度成長だ。女性が元気な社会が、一番安定してて、平和でいい。」と言っています。その通りだと思います。
加えて私は、弁護士を30年やっていて思うのは、女性が本気になった運動というのは後戻りしない。非常に粘り強いのです。その点男というのは、口ではいい恰好言うのですが、すぐに腰砕けになりますね。日照権を勝ち取る闘いひとつとっても、お父さん連中が出ている時は威勢がいいのですが、すぐに腰砕けになってしまいます。しかしお母さん方が中心になると長続きしますね。私がやった大気汚染裁判もおばあちゃん達が中心です。裁判でおじいちゃんを発言させてもあまり迫力がない。ええ格好をしますからね。おばあちゃん達は、本当の被害を率直に語り、裁判官を動かしました。
私は生協の皆さんと西淀川裁判の闘い以来、お付き合いしてきて本当に思うのは、皆さんがこういう活動に取り組む重要性をぜひ認識して欲しいということです。西淀川の公害裁判も皆さんのおかげで勝つことができました。皆さんは消費者でもあり、そして女性が中心ですから、こういった生協の組織が動くことがやはり日本の社会を、よいほうに変えていくことになるのだと思います。私も、皆さんと一緒にこれからもやって行きたいと思います。
どうも、ありがとうございました。
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