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2007年度 大阪府生協連「政策討論集会」

トップ 雪氷圏への影響 地球温暖化と農業 IPCCの排出シナリオと現実の排出量の経緯 国際交渉の経緯

図5 拡大
図6 拡大
図7 拡大
図8 拡大
図9 拡大
図10 拡大
[講 師]地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
専務理事 早川 光俊 氏

雪氷圏への影響
もっとも影響が顕著に現れるのが雪氷圏、極域です。山岳氷河、積雪面積はもちろん減っていますが、特に北極や南極等で大きな変化が起こっています。特に北極です。なぜ北極が南極より変化が大きいかと言いますと、やはり北半球に陸地が多いからです。陸地が多いとやはり、海より温まるやすいので、どうしても北半球の方が温暖化の影響が大きくなります。北極の平均気温の上昇というのは世界平均の約2倍の速さで上昇している。昨年北極の海氷が非常に小さくなったというニュースを新聞でみられたと思いますが、昨年の9月24日、北極の海氷面積が過去最小になりました。この写真は、人工衛星から北極海を写したものです。(図5)北極の氷は南極やグリーンランドと違って海に浮かんでいる氷がほとんどです。だから海氷と書きます。だいたい過去は3メートル位の厚さで、写真のこの黄色いライン位まで、海氷面積が最も小さくなる夏場でもこの位は海に氷が張っていました。これまで過去最小を記録したのは2005年9月22日です。写真のこの白いラインが過去最小になった時の海氷の面積です。この青く剥き出しになっているところが氷が融けて海水面が見えているところです。その2005年の過去最小記録をたった2年後の昨年9月24日に大幅に更新したということです。
左側が2005年9月22日で、右側が2007年9月24日です。(図6)太平洋側が随分溶けてしまっています。アラスカの上のあたりを多島海というのですが、ここのところが融けてしまって、大西洋から太平洋への航路が出来ています。人類の夢の航路と言われていまして、だいたい2週間位の航海の期間が短縮出来ると言われています。
だいたい、1970年代を100とすると昨年9月24日は61位にまで減っています。40%位海氷面積が減ってしまっています。これは、実は昨年のIPCCの第4次報告書の予測をはるかに超えています。IPCCの第4次報告書は2050年に450万k㎡になると予測していましたが、去年の9月24日は425万㎡ですから、IPCCの2050年予測よりはるかに小さくなってしまったということです。IPCCというのは確かに世界の科学者の叡智を集めた報告書ですが、現実はIPCCの予測をはるかに超えて進んでいるのだと思います。
 そういった幾つかの報告が最近なされていますが、これもその1つです。(図7)この写真は、キリマンジャロというアフリカの最高峰で、6千メートル位ある山の山頂の氷帽の写真です。1993年から2000年にかけて、随分融けてしまったのが分かります。この写真は、東ネパールの1.7キロの小さな氷河ですが、1978年から1998年の20年間を比べると、随分融けてしまって、1998年には溶けた水で池が出来てしまっています。この東ネパールの氷河は、1978年から1988年頃までの最初の10年間は年に3.4メートル位氷河が後退していましたが、1988年から1998年に至る後の10年間は、1年間に13~14メートルくらい後退しているとのことです。ここでも温暖化が加速していることが分かります。この氷河湖はまだ小さいので池ですが、大きな氷河になりますと溶けた氷河湖になります。この氷河湖が決壊して土石流が流域を襲います。すでにヒマラヤでは、いくつもの氷河湖が決壊して土石流が起きています。そうすると、その流域の生態系、人々の命が奪われることになります。それだけではなくて、こういった氷河が年間を通じて少しずつ解けて流域を潤してくれていたのが無くなってしまって、流域の生態系が壊滅的な打撃をうけるのが心配されています。

上昇する海面水位
海面水位の上昇も加速しています。1961年から2003年に年平均1.8mmの割合で上昇していたのが、最近10年間は平均3.1mmと上昇幅が増加している。そして、少し怖いのがグリーンランドと南極氷床の融解がすでに始まっているという報告です。第3次報告書では南極氷床については、むしろ氷床は増えるというふうに予測していました。しかし最近では、南極もすでに融け始めているというデータが随分たくさん出て来ています。北極の氷は海に浮かんだ海氷ですから、融けてもほとんど海面水位は上がりません。オン・ザ・ロックです。ところが、グリーンランドと南極は、陸地の上に氷が乗っていますので、それが融けるともろに海面が上昇します。グリーンランドの氷がすべて解けると海面が6~7メートル位、南極の氷が融けると海水面は60~70メートル位上がります。もちろんすぐに融けるという意味ではありませんが。
これはマーシャでCASAのスタッフだった大久保さんが撮った写真ですが、海面上昇によってヤシの木の下の砂が現われてしまっています。さらに海面上昇が進むと、ヤシの木は倒れてしまうということです。(図8)
私は昨年バリに行ったのですが、バリにもヤシの木がたくさんありました。すべてのヤシの木に所有者がいると聞きました。たくさんの小さな島で出来ている島しょ国が四十数カ国ありますが、島しょ国ではヤシの木が非常に大切な資源です。だから1本1本に所有者の名前が書いてあるそうです。ヤシの果汁を飲み、ヤシの油を取り、そして殻は燃料にし、葉っぱで家を作ったり、いろんな食器を作ったりします。ヤシの木は彼らにとっては非常に大事なものですが、これが海面上昇で倒れてしまう。これは島嶼国の人たちにとっては非常に大きな問題で、生活の破壊につながりかねません。
この図は、IPCCの第4報告書に出ている海水面の上昇の経緯とこれからの予測です。赤いのが現在観測されている海面上昇で、2000年から先の青い部分は今後の上昇予測です。左側の灰色の部分はデータが無いので過去を予測したものですが、ほぼ横ばいできたものが最近ずっと上がってきて、さらなる上昇が予測されています。(図9)

生態系への影響
温暖化による生態系への影響が、すでに出てきています。植物や動物というのは私たちが考えている以上に気温に敏感です。気温が上がって来ると、植物や動物は、適温を求めて北に移動するか、高いところに移動することになります。植物が適応できるかどうかが一番の問題です。そして、すでに日本でも最近の気温上昇の影響がすでに報告されています。桜の開花時期が早まっていることは実感されていると思います。紅葉はもっと深刻でして2週間位遅れています。動物、植物の生息数の減少などがすでに観測されています。
これはサンゴ礁の写真です。(図10)沖縄の近くの阿嘉島というところの臨海研究所から頂いた写真なんですが、左側が1994年の正常な状態のサンゴ礁で、右側が1998年。過去150年で最も暑かった年に白化してしまったサンゴ礁です。サンゴは動物でして、サンゴが緑色だったりするのは、サンゴの中に褐虫藻という藻が共生していて、その藻の色です。サンゴは動物ですから、酸素を吸って二酸化炭素を出す。褐虫藻は植物ですから、サンゴの出した二酸化炭素を吸って、酸素を出すという共生関係を保っているわけですね。ところが、サンゴが白化するのは、いろんな原因がありますが、最も大きな原因は海水温の上昇です。海水温が1℃以上上がるとサンゴはストレスを感じで弱ってしまい、褐虫藻がサンゴから逃げ出してしまうと、こういった白化を起こします。こういう状態が続くとサンゴが死滅してしまいます。
1990年頃には、世界のサンゴ礁の10%位が海水温の上昇によって白化の危機にあると言われていましたが、2000年にはそれが27%に増加したとされています。去年2007年は猛暑のために1998年を超える白化現象が世界の海で起こったと言われています。このまま行くと世界の海からサンゴ礁が消えてしまう日もそう遠くない。私たちはあんまりサンゴに馴染みは無いのですが、世界の海に面した途上国の4割位のタンパク源はこのサンゴ礁から得ています。サンゴ礁は海の中では最も生態系が豊かなところなんですね。左の正常なサンゴ礁には魚がたくさんいるでしょう?白化したサンゴ礁には、殆んど魚がいません。要するに、サンゴが正常な状態で生きている時には、そこにこういった豊かな生態が出来る。小さな生まれたばかりの魚の子どもはこのサンゴの中に隠れている。それを狙っていろんな魚が集まって来るという豊かな生態を作っているわけですが、白化すると殆んど寄りつかなくなるんですね。またサンゴ礁というのは、自然の防波堤です。台風の脅威を和らげ、津波の脅威を和らげてくれます。この前のスマトラ沖で起こった30万人死んだという地震でも、サンゴ礁で囲まれた島は殆んど被害が出ていません。江戸の末期に沖縄の石垣島あたりを大きな地震が襲いましたが、石垣島では4000人という死者が出ていますが、すぐ近くのサンゴ礁で囲まれた島では1人も死者が出ていません。そうした、私たち人間にとって大切なサンゴ礁ものが今無くなろうとしているのです。
シロクマも温暖化の被害者です。カナダに、シロクマがたくさん生息しているハドソン湾という大きな湾があります。シロクマというのは泳げますが、泳いでトドやアザラシを狩るほど泳ぎは上手くありませんので、氷の上で休んでいるトドとかアザラシを狩って生きているわけです。そして氷が融けている夏の間は、殆んど絶食状態で過ごすようです。ところが、ハドソン湾の氷の張る時期がどんどん短くなって来ている。従来10月から翌年5~6月まで氷が張っていたのが、1か月氷が張るのが遅れて、融けるのも1カ月くらい早くなって来ている。そうするとシロクマが餌をとる期間が2か月間短くなってしまう。そのため栄養を摂れずに、また子どもを産む体力も養われない。そしてそういった影響は子どもにも現れますから、どんどん頭数が減っている。世界に2万2千頭のシロクマが生息していると言われていますが、2006年5月にシロクマは絶滅危惧種に指定され、遠からず絶滅するだろうと言われています。
また、ナンキョクオキアミも減っています。オキアミとは釣りをする方には馴染みの深い釣り餌ですが、南極の生態系を支えている小さな甲殻類です。これが、1970年代に比べると8割減少したと言われています。減った理由はおそらく海水温が上昇して、生息する海氷面が狭まってしまったためだといわれています。オキアミはクジラも食べていますし、ペンギンも食べています。遠からず、南極域の生態系に非常に深刻な影響をもたらすだろうと思われます。
[講 師]地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
専務理事 早川 光俊 氏

雪氷圏への影響
もっとも影響が顕著に現れるのが雪氷圏、極域です。山岳氷河、積雪面積はもちろん減っていますが、特に北極や南極等で大きな変化が起こっています。特に北極です。なぜ北極が南極より変化が大きいかと言いますと、やはり北半球に陸地が多いからです。陸地が多いとやはり、海より温まるやすいので、どうしても北半球の方が温暖化の影響が大きくなります。北極の平均気温の上昇というのは世界平均の約2倍の速さで上昇している。昨年北極の海氷が非常に小さくなったというニュースを新聞でみられたと思いますが、昨年の9月24日、北極の海氷面積が過去最小になりました。この写真は、人工衛星から北極海を写したものです。(図5)北極の氷は南極やグリーンランドと違って海に浮かんでいる氷がほとんどです。だから海氷と書きます。だいたい過去は3メートル位の厚さで、写真のこの黄色いライン位まで、海氷面積が最も小さくなる夏場でもこの位は海に氷が張っていました。これまで過去最小を記録したのは2005年9月22日です。写真のこの白いラインが過去最小になった時の海氷の面積です。この青く剥き出しになっているところが氷が融けて海水面が見えているところです。その2005年の過去最小記録をたった2年後の昨年9月24日に大幅に更新したということです。
 左側が2005年9月22日で、右側が2007年9月24日です。(図6)太平洋側が随分溶けてしまっています。アラスカの上のあたりを多島海というのですが、ここのところが融けてしまって、大西洋から太平洋への航路が出来ています。人類の夢の航路と言われていまして、だいたい2週間位の航海の期間が短縮出来ると言われています。
だいたい、1970年代を100とすると昨年9月24日は61位にまで減っています。40%位海氷面積が減ってしまっています。これは、実は昨年のIPCCの第4次報告書の予測をはるかに超えています。IPCCの第4次報告書は2050年に450万k㎡になると予測していましたが、去年の9月24日は425万㎡ですから、IPCCの2050年予測よりはるかに小さくなってしまったということです。IPCCというのは確かに世界の科学者の叡智を集めた報告書ですが、現実はIPCCの予測をはるかに超えて進んでいるのだと思います。
そういった幾つかの報告が最近なされていますが、これもその1つです。(図7)この写真は、キリマンジャロというアフリカの最高峰で、6千メートル位ある山の山頂の氷帽の写真です。1993年から2000年にかけて、随分融けてしまったのが分かります。この写真は、東ネパールの1.7キロの小さな氷河ですが、1978年から1998年の20年間を比べると、随分融けてしまって、1998年には溶けた水で池が出来てしまっています。この東ネパールの氷河は、1978年から1988年頃までの最初の10年間は年に3.4メートル位氷河が後退していましたが、1988年から1998年に至る後の10年間は、1年間に13~14メートルくらい後退しているとのことです。ここでも温暖化が加速していることが分かります。この氷河湖はまだ小さいので池ですが、大きな氷河になりますと溶けた氷河湖になります。この氷河湖が決壊して土石流が流域を襲います。すでにヒマラヤでは、いくつもの氷河湖が決壊して土石流が起きています。そうすると、その流域の生態系、人々の命が奪われることになります。それだけではなくて、こういった氷河が年間を通じて少しずつ解けて流域を潤してくれていたのが無くなってしまって、流域の生態系が壊滅的な打撃をうけるのが心配されています。

上昇する海面水位
海面水位の上昇も加速しています。1961年から2003年に年平均1.8mmの割合で上昇していたのが、最近10年間は平均3.1mmと上昇幅が増加している。そして、少し怖いのがグリーンランドと南極氷床の融解がすでに始まっているという報告です。第3次報告書では南極氷床については、むしろ氷床は増えるというふうに予測していました。しかし最近では、南極もすでに融け始めているというデータが随分たくさん出て来ています。北極の氷は海に浮かんだ海氷ですから、融けてもほとんど海面水位は上がりません。オン・ザ・ロックです。ところが、グリーンランドと南極は、陸地の上に氷が乗っていますので、それが融けるともろに海面が上昇します。グリーンランドの氷がすべて解けると海面が6~7メートル位、南極の氷が融けると海水面は60~70メートル位上がります。もちろんすぐに融けるという意味ではありませんが。
これはマーシャでCASAのスタッフだった大久保さんが撮った写真ですが、海面上昇によってヤシの木の下の砂が現われてしまっています。さらに海面上昇が進むと、ヤシの木は倒れてしまうということです。(図8)
私は昨年バリに行ったのですが、バリにもヤシの木がたくさんありました。すべてのヤシの木に所有者がいると聞きました。たくさんの小さな島で出来ている島しょ国が四十数カ国ありますが、島しょ国ではヤシの木が非常に大切な資源です。だから1本1本に所有者の名前が書いてあるそうです。ヤシの果汁を飲み、ヤシの油を取り、そして殻は燃料にし、葉っぱで家を作ったり、いろんな食器を作ったりします。ヤシの木は彼らにとっては非常に大事なものですが、これが海面上昇で倒れてしまう。これは島嶼国の人たちにとっては非常に大きな問題で、生活の破壊につながりかねません。
この図は、IPCCの第4報告書に出ている海水面の上昇の経緯とこれからの予測です。赤いのが現在観測されている海面上昇で、2000年から先の青い部分は今後の上昇予測です。左側の灰色の部分はデータが無いので過去を予測したものですが、ほぼ横ばいできたものが最近ずっと上がってきて、さらなる上昇が予測されています。(図9)

生態系への影響
温暖化による生態系への影響が、すでに出てきています。植物や動物というのは私たちが考えている以上に気温に敏感です。気温が上がって来ると、植物や動物は、適温を求めて北に移動するか、高いところに移動することになります。植物が適応できるかどうかが一番の問題です。そして、すでに日本でも最近の気温上昇の影響がすでに報告されています。桜の開花時期が早まっていることは実感されていると思います。紅葉はもっと深刻でして2週間位遅れています。動物、植物の生息数の減少などがすでに観測されています。
これはサンゴ礁の写真です。(図10)沖縄の近くの阿嘉島というところの臨海研究所から頂いた写真なんですが、左側が1994年の正常な状態のサンゴ礁で、右側が1998年。過去150年で最も暑かった年に白化してしまったサンゴ礁です。サンゴは動物でして、サンゴが緑色だったりするのは、サンゴの中に褐虫藻という藻が共生していて、その藻の色です。サンゴは動物ですから、酸素を吸って二酸化炭素を出す。褐虫藻は植物ですから、サンゴの出した二酸化炭素を吸って、酸素を出すという共生関係を保っているわけですね。ところが、サンゴが白化するのは、いろんな原因がありますが、最も大きな原因は海水温の上昇です。海水温が1℃以上上がるとサンゴはストレスを感じで弱ってしまい、褐虫藻がサンゴから逃げ出してしまうと、こういった白化を起こします。こういう状態が続くとサンゴが死滅してしまいます。
1990年頃には、世界のサンゴ礁の10%位が海水温の上昇によって白化の危機にあると言われていましたが、2000年にはそれが27%に増加したとされています。去年2007年は猛暑のために1998年を超える白化現象が世界の海で起こったと言われています。このまま行くと世界の海からサンゴ礁が消えてしまう日もそう遠くない。私たちはあんまりサンゴに馴染みは無いのですが、世界の海に面した途上国の4割位のタンパク源はこのサンゴ礁から得ています。サンゴ礁は海の中では最も生態系が豊かなところなんですね。左の正常なサンゴ礁には魚がたくさんいるでしょう?白化したサンゴ礁には、殆んど魚がいません。要するに、サンゴが正常な状態で生きている時には、そこにこういった豊かな生態が出来る。小さな生まれたばかりの魚の子どもはこのサンゴの中に隠れている。それを狙っていろんな魚が集まって来るという豊かな生態を作っているわけですが、白化すると殆んど寄りつかなくなるんですね。またサンゴ礁というのは、自然の防波堤です。台風の脅威を和らげ、津波の脅威を和らげてくれます。この前のスマトラ沖で起こった30万人死んだという地震でも、サンゴ礁で囲まれた島は殆んど被害が出ていません。江戸の末期に沖縄の石垣島あたりを大きな地震が襲いましたが、石垣島では4000人という死者が出ていますが、すぐ近くのサンゴ礁で囲まれた島では1人も死者が出ていません。そうした、私たち人間にとって大切なサンゴ礁ものが今無くなろうとしているのです。
シロクマも温暖化の被害者です。カナダに、シロクマがたくさん生息しているハドソン湾という大きな湾があります。シロクマというのは泳げますが、泳いでトドやアザラシを狩るほど泳ぎは上手くありませんので、氷の上で休んでいるトドとかアザラシを狩って生きているわけです。そして氷が融けている夏の間は、殆んど絶食状態で過ごすようです。ところが、ハドソン湾の氷の張る時期がどんどん短くなって来ている。従来10月から翌年5~6月まで氷が張っていたのが、1か月氷が張るのが遅れて、融けるのも1カ月くらい早くなって来ている。そうするとシロクマが餌をとる期間が2か月間短くなってしまう。そのため栄養を摂れずに、また子どもを産む体力も養われない。そしてそういった影響は子どもにも現れますから、どんどん頭数が減っている。世界に2万2千頭のシロクマが生息していると言われていますが、2006年5月にシロクマは絶滅危惧種に指定され、遠からず絶滅するだろうと言われています。
また、ナンキョクオキアミも減っています。オキアミとは釣りをする方には馴染みの深い釣り餌ですが、南極の生態系を支えている小さな甲殻類です。これが、1970年代に比べると8割減少したと言われています。減った理由はおそらく海水温が上昇して、生息する海氷面が狭まってしまったためだといわれています。オキアミはクジラも食べていますし、ペンギンも食べています。遠からず、南極域の生態系に非常に深刻な影響をもたらすだろうと思われます。
図5 拡大
図6 拡大
図7 拡大
図8 拡大
図9 拡大
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