2007年度 大阪府生協連「政策討論集会」
図11 拡大
図12 拡大
[講 師]地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
専務理事 早川 光俊 氏
地球温暖化と農業
温暖化は農業にも大きな影響を与えることが予測されます。温暖化の農業への影響は、プラスの影響とマイナスの影響があります。温暖化すれば、今までお米が作れなかった北の方まで作れるようになるとか、二酸化炭素濃度が上がれば光合成が活発化して生産量が増えるとか、そういったプラスの影響はもちろん考えられますが、一方で異常気象によって干ばつや洪水が増える、高温障害がおこるなどのマイナス影響など、両方考えなければならない。しかし、その両方を考えても平均気温上昇が3℃を超えると、世界全体の食糧生産が減るだろうというのがIPCCの予測です。それは、世界全体で3℃まで大丈夫という話ではなくて、すでに食糧危機に襲われている途上国ではもう影響が出始めています。11月にオーストラリアで政権交代がありましたが、その1つの大きな理由がオーストラリアを2年越しで襲っている干ばつです。そのため、京都議定書に後ろ向きのハワード政権が倒れたのだと言われています。もう1つ側面は、農業は温室効果ガスの発生源でもあります。水田もメタンガスを発生させますし、牛のゲップは非常に大きなメタンガスの発生源ですね。ニュージーランドという国は非常に牧畜業が盛んで、あそこの温室効果ガス排出量の3割は牛のゲップのなかのメタンだということで計算されています。また一方で、これは皆さんの方が詳しいのでしょうが、農業というのは環境の守り手です。多面的な機能ということが言われますが、水田が持っている保水機能、そして気候の緩和機能というのは非常に大きな価値です。こういったものを総合的に考えていく必要があるということですね。ただ、そうは言っても温暖化によって、農業が非常に大きな影響を受けるのは避けられないと思います。
2003年の欧州の熱波
2003年、ヨーロッパを猛暑が襲いました。フランスだけでも1万5千人、ヨーロッパ全体で3万5千人の人が亡くなりました。熱中症です。亡くなった方は、老人が多かったようです。人の死亡だけではなくて、農林業も非常に大きな影響を受けました。特に牧畜業です。家畜の餌となる青刈り飼料が非常に大きな影響を受け、非常に大きな被害が出ています。また、熱によるブロイラーの死亡がフランス国内だけでも400万羽といわれています。この2003年の欧州の熱波というものが温暖化によるものかどうかは確定は出来ません。台風もそうですが、1つの気象イベントを、温暖化が原因だという因果関係を確定することは不可能に近いです。ただはっきりしていることは、温暖化してくれば、こういうことが頻繁に起こってくるということです。そういう意味で2003年のヨーロッパの猛暑みたいなものは、私たちが温暖化を考える上では1つの指標になりうるのだろうと思います。
顕著化する地球温暖化の影響
IPCCの今回の報告書は、世界全地域ですでに温暖化の影響が顕在化していることが明らかになっていると報告しています。観測されたデータの内、雪とか氷、永久凍土、沿岸域とかの物理環境において94%、動植物などの生物環境の観測データでは、90%以上において温暖化の影響が科学的に証明されていると報告しています。
これが、その図です。(図11)こういう橙に塗られているところが、すでに2℃から3℃気温が上がっているところです。青い点が物理環境で温暖化の影響とみられる観測データがあるところです。緑の点が生物環境において影響が出ているというふうに観測されているデータがあるところです。世界全体ですでに90%において温暖化の影響が科学的にみられるということです。途上国で少ないのは、やはり観測数が少ないからでしょう。
今後、どのくらいの気温上昇が起こるのか。これはさっき見ていただいた、過去1000年の気温の変化で、なだらかな右肩下がりだったのが、最近どんどん上がって来ていて、IPCCは、今後100年で最高6,4℃、最低1,1℃の気温上昇を予測しています。(図12)この最高と最低の幅は誤差ではなく、これからの社会シナリオによる違いです。例えば、エネルギー源を化石燃料、石炭・石油・天然ガスに多く頼って、今のような高度成長を続けて行くと6,4℃に限りなく近づきますし、いろいろ対策を取って環境にやさしい社会を作れば1,1℃位にという6つ位の社会像を描いて予測しています。私たちが考えておかなければいけないのは、どうやっても1,1℃上がってしまうと予測されていることです。1,1℃以下の予測はありませんから、どんな対策を取っても1,1℃以上の上昇は避けられない。そういう意味では、温暖化は防げるかどうかと聞かれれば、答えはノーです。温暖化は防げません。危険なレベルに至らないレベルで温暖化を止めることができるのか、ソフトランニングさえることが出来るのかというのが今のテーマです。私たちも温暖化防止という言葉を使いますが、温暖化を防止出来るかということでいえば出来ません。ただ、どの程度のレベルまでで温暖化が抑えられるかです。そして、今のような化石燃料に頼って、石炭、石油をずっと使い続けると6,4℃位上がってしまうわけです。
1万8千万年前に最後の氷河期が終わりました。地球上の3分の1位が氷で覆われていた時ですが、その時の平均気温が10℃です。さきほど過去1万年はだいたい15℃だと申し上げました。氷河期から数千年かけて1万年前までの間に5℃気温が変化したわけです。今起ころうとしている温暖化はたった100年という非常に短い、地球の歴史からすれば一瞬に近い短い期間で5℃という気温変化が起ころうとしています。この気温の変化に地球上の生態系、私たち人間を含む生態系がついていけるかのというのが、温暖化のテーマです。生態系がどのくらいの変化まで適応できるかというのは、いろいろなデータがありますが、だいたい10年間で0,1℃、100年間で1℃までです。1℃を超える気温の変化には生態系はついていけない可能性が高い。最低でも1,1℃だというのはギリギリの線だということを私たちは認識しなければいけないのですね。
[講 師]地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
専務理事 早川 光俊 氏
地球温暖化と農業
温暖化は農業にも大きな影響を与えることが予測されます。温暖化の農業への影響は、プラスの影響とマイナスの影響があります。温暖化すれば、今までお米が作れなかった北の方まで作れるようになるとか、二酸化炭素濃度が上がれば光合成が活発化して生産量が増えるとか、そういったプラスの影響はもちろん考えられますが、一方で異常気象によって干ばつや洪水が増える、高温障害がおこるなどのマイナス影響など、両方考えなければならない。しかし、その両方を考えても平均気温上昇が3℃を超えると、世界全体の食糧生産が減るだろうというのがIPCCの予測です。それは、世界全体で3℃まで大丈夫という話ではなくて、すでに食糧危機に襲われている途上国ではもう影響が出始めています。11月にオーストラリアで政権交代がありましたが、その1つの大きな理由がオーストラリアを2年越しで襲っている干ばつです。そのため、京都議定書に後ろ向きのハワード政権が倒れたのだと言われています。もう1つ側面は、農業は温室効果ガスの発生源でもあります。水田もメタンガスを発生させますし、牛のゲップは非常に大きなメタンガスの発生源ですね。ニュージーランドという国は非常に牧畜業が盛んで、あそこの温室効果ガス排出量の3割は牛のゲップのなかのメタンだということで計算されています。また一方で、これは皆さんの方が詳しいのでしょうが、農業というのは環境の守り手です。多面的な機能ということが言われますが、水田が持っている保水機能、そして気候の緩和機能というのは非常に大きな価値です。こういったものを総合的に考えていく必要があるということですね。ただ、そうは言っても温暖化によって、農業が非常に大きな影響を受けるのは避けられないと思います。
2003年の欧州の熱波
2003年、ヨーロッパを猛暑が襲いました。フランスだけでも1万5千人、ヨーロッパ全体で3万5千人の人が亡くなりました。熱中症です。亡くなった方は、老人が多かったようです。人の死亡だけではなくて、農林業も非常に大きな影響を受けました。特に牧畜業です。家畜の餌となる青刈り飼料が非常に大きな影響を受け、非常に大きな被害が出ています。また、熱によるブロイラーの死亡がフランス国内だけでも400万羽といわれています。この2003年の欧州の熱波というものが温暖化によるものかどうかは確定は出来ません。台風もそうですが、1つの気象イベントを、温暖化が原因だという因果関係を確定することは不可能に近いです。ただはっきりしていることは、温暖化してくれば、こういうことが頻繁に起こってくるということです。そういう意味で2003年のヨーロッパの猛暑みたいなものは、私たちが温暖化を考える上では1つの指標になりうるのだろうと思います。
顕著化する地球温暖化の影響
IPCCの今回の報告書は、世界全地域ですでに温暖化の影響が顕在化していることが明らかになっていると報告しています。観測されたデータの内、雪とか氷、永久凍土、沿岸域とかの物理環境において94%、動植物などの生物環境の観測データでは、90%以上において温暖化の影響が科学的に証明されていると報告しています。
これが、その図です。(図11)こういう橙に塗られているところが、すでに2℃から3℃気温が上がっているところです。青い点が物理環境で温暖化の影響とみられる観測データがあるところです。緑の点が生物環境において影響が出ているというふうに観測されているデータがあるところです。世界全体ですでに90%において温暖化の影響が科学的にみられるということです。途上国で少ないのは、やはり観測数が少ないからでしょう。
今後、どのくらいの気温上昇が起こるのか。これはさっき見ていただいた、過去1000年の気温の変化で、なだらかな右肩下がりだったのが、最近どんどん上がって来ていて、IPCCは、今後100年で最高6,4℃、最低1,1℃の気温上昇を予測しています。(図12)この最高と最低の幅は誤差ではなく、これからの社会シナリオによる違いです。例えば、エネルギー源を化石燃料、石炭・石油・天然ガスに多く頼って、今のような高度成長を続けて行くと6,4℃に限りなく近づきますし、いろいろ対策を取って環境にやさしい社会を作れば1,1℃位にという6つ位の社会像を描いて予測しています。私たちが考えておかなければいけないのは、どうやっても1,1℃上がってしまうと予測されていることです。1,1℃以下の予測はありませんから、どんな対策を取っても1,1℃以上の上昇は避けられない。そういう意味では、温暖化は防げるかどうかと聞かれれば、答えはノーです。温暖化は防げません。危険なレベルに至らないレベルで温暖化を止めることができるのか、ソフトランニングさえることが出来るのかというのが今のテーマです。私たちも温暖化防止という言葉を使いますが、温暖化を防止出来るかということでいえば出来ません。ただ、どの程度のレベルまでで温暖化が抑えられるかです。そして、今のような化石燃料に頼って、石炭、石油をずっと使い続けると6,4℃位上がってしまうわけです。
1万8千万年前に最後の氷河期が終わりました。地球上の3分の1位が氷で覆われていた時ですが、その時の平均気温が10℃です。さきほど過去1万年はだいたい15℃だと申し上げました。氷河期から数千年かけて1万年前までの間に5℃気温が変化したわけです。今起ころうとしている温暖化はたった100年という非常に短い、地球の歴史からすれば一瞬に近い短い期間で5℃という気温変化が起ころうとしています。この気温の変化に地球上の生態系、私たち人間を含む生態系がついていけるかのというのが、温暖化のテーマです。生態系がどのくらいの変化まで適応できるかというのは、いろいろなデータがありますが、だいたい10年間で0,1℃、100年間で1℃までです。1℃を超える気温の変化には生態系はついていけない可能性が高い。最低でも1,1℃だというのはギリギリの線だということを私たちは認識しなければいけないのですね。
図11 拡大
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