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2007年度 大阪府生協連「政策討論集会」

トップ 雪氷圏への影響 地球温暖化と農業 IPCCの排出シナリオと現実の排出量の経緯 国際交渉の経緯

図13 拡大
図14 拡大
図15 拡大
[講 師]地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
専務理事 早川 光俊 氏

IPCCの排出シナリオと現実の排出量の経緯
IPCCは6つの社会シナリオを考えて、将来の気温変化の予測をしています。1番排出量の大きいのはこの赤いグラフですが、最近の排出量はIPCCが最も多いと考えたシナリオを超えてしまっています。2005年ははるかに超えて2006年はもっと多いです。IPCCをどう読むかというのはいろいろあるのですが、IPCCの科学は正しいと私は思います。ただ、IPCCの言っていることはある意味保守的です。安全な側でものを言っている。IPCCといっても科学者だけの集まりではなく、政府関係者も出ていて、いろんな意見を戦わせまして、極端なデータは全部外そうとしますし、都合の悪いデータなどは消したり、代えさせたりしますので、非常に保守的なレベルで記述しています。だからIPCCの予測は現実に起こりえる最低限の線で、実際にはもっと高く、もっと激しい変化が起こる可能性の方が高いと思っておいた方がいいと思います。その事を表しているのが、排出量は現実にはIPCCの予測はもうすでに超えているということと、北極などの現実が、予測をはるかに超えて進行しているということです。
今後の予測についていろんな事を言っていますが、動物及び植物の20から30%は、全球温度の上昇が1,5℃から2,5℃を超えた場合、絶滅のリスクに直面する可能性が高いです。すべての生態系が壊れてしまうとは言いませんが、かなり驚異的な数字です。今地球上の生態系にどれくらいの種がいるかは、正直言ってはっきりしたことは分かっていません。今、種が確定されているのは、例えば人間が1つの種ですね。象もそう、キリンもそうですが、そういった種が確定されているのは160万種から180万種だと言われています。実際地球上にどれくらいの種がいるかというと、3千万とも4千万とも言われています。分かっていないのでいろんなことをいろんな人が言うのですが、2千万から3千万は確実にいるだろうというのが大体の予測です。そういったものも含めて2、30%が絶滅してしまう可能性がある。先ほど申しました食料生産量は1~3℃までの上昇幅では増加すると予測されていますが、それを超えて上昇すれば減少に転じると予測される。これは世界全体です。
1番怖いのは水の変化です。これは、21世紀末の降水量の予測です。(図13)濃い茶色いのが20%以上減る、薄い茶色で10~20%減る、青いのは増える。概して言うと中緯度地域は減る。高緯度地域、極地に近くなると降水量が増える。左の図は12~2月で冬の時期ですね。右が6~8月ですから夏の時期です。世界の穀倉地帯の一つのヨーロッパ辺りは降水量が減るという予測になります。オーストラリアも減ると予測されています。
もっと顕著なのは河川流量の変化です。(図14)上が現在で、下が予測。赤いところが、河川流量が減ると予測されている地域です。1番赤いところは40%以上減る。河川の流量、要するに水の流れる量ですね。ヨーロッパは軒並み河川の流量が減ります。世界の穀倉地帯の1つであるミシシッピー沿岸、ここも減る。もう1つの穀倉地帯であるアジアは増える予測になっておりますが、これも日本の雨期のようにしとしと降ってくれればいいのですが、おそらく洪水とかのような形で降りますから、食料生産増産に結びつくとは到底考えられない。

2℃が限度
どのくらいの気温上昇までが、私たち人間を含む生態系が危険にならずに済むのかは2℃だと言われています。これは今からではありません。産業革命以前から2℃です。すでに0,74℃上昇していますから、残された幅は1,26℃です。1.1℃はどうやっても上がってしまうという予測ですから、ちょっと考えるだけでも恐ろしいくらいの数字です。2℃を超えると、地球規模の回復が不可能な環境破壊により人類の健全な生存が脅かされる可能性があるというふうに言われています。実はEUはこの2℃という目標を、京都議定書が合意される前の1996年にすでに政策目標に掲げて対策を進めてきている。そのことが、日本に比べてはるかに対策が進んでいる理由の1つです。
1~2℃、2~3℃がどう変わるか。(図15)
細かい表なので、また読んでもらったらいいのですが、例えば水不足は1~2℃だと5億人位に新たに影響が出るに留まりますが、2~3℃になると30億人以上になります。世界人口は今64億人。おそらくこの頃には、80億人を超えているでしょうから3分の1強の人たちが水不足になる。水不足になるということは何を意味するかと言いますと、子供たちの命も奪われます。今3秒に1人、子供たちの命が奪われています。その1番大きな理由がきれいな水が飲めないということです。脱水性の下痢で死んでいるわけです。温暖化により、その子供たちの数が飛躍的に増えるだろう。では、どうしたらいいのか?
今回のIPCCの第4次報告書は、産業革命以前から平均気温上昇が2~2,4℃に抑えるためにはCO2濃度を350~400ppmで安定化させなければいけない。現在は380ppmです。すでにこのレベルに達しています。ただ地球の気候系というのは複雑なシステムですから、濃度が380ppmになったからといって、すぐに2℃上がってしまうわけではありません。すぐに反応しませんが、もう危険なレベルに入ってしまっているわけです。CO2だけではなくて他の温室効果ガスを含めた濃度では445~490ppm。現在430ppmです。もう445 ppmまで15ppmしかありません。年間約2ppm上がっています。あと7年で444ppmです。そして2015年までに世界全部のCO2排出量をピークにして削減に向かわなければならない。そして2050年までに2000年比で50~80%削減しなければならないというのがIPCCの結論です。考えるだけで簡単でないことが分かります。

気候変動の経済学(スターン・レビュー)
一昨年になりますが、10月にイギリス政府がスターン・レビューとういうニコラ・スターンさんという世界的に著名な経済学者に依頼して、気候変動、温暖化が経済にどういう影響を与えるかという報告書を作りました。600ページ位のものですが、その中に書いてあることです。「今後数十年間の内の対策に失敗すれば、20世紀前半に人類が経験した大戦や経済恐慌に匹敵するような社会・経済的な損害を被る危険がある。その被害を金額に換算すると世界の年間総生産(GDP)の5~20%に相当する可能性がある」と。これは半端な数字ではないですね。そして、では危険レベルに至らないように対策をとる費用がどれくらいかかるかと言いますと、GDPの1%程度と予測しています。そして、「気温は人間活動の影響により急速に変化しつつあり、政策的対応をとるべき十分な情報がある」としています。少しびっくりするのですが、スターン・レビューを作ったのはイギリスの財務省です。環境省ではないのです。当時の財務大臣はブラウンさん、今のイギリスの首相です。彼は当時、ブレアさんのあとの首相に指名されていましたから、首相になることが分かっていて、財務大臣としてこの報告書を作ったわけです。あまり単純でないのは、イギリス政府は明らかに気候変動問題を梃子にしてイギリス経済を発展させようとしている。そういう戦略的意図があるように私には思えます。後でそのことを少しお話します。
スターン・レビューにあるですが、安全なレベルに温室効果ガスの濃度を収束させるには、ピークをできるだけ低く、また早くすれば緩やかな社会変化でいけるが、対策をさぼってどんどん増やしてしまい、ピークが遅くなればなるほど急激に社会経済を変えなければいけない。このシナリオでは、次の世代は非常に大きな負担を強いられます。急カーブを曲がるのに、手前からスピードを落とすと安全に曲がれますが、カーブに入ってから速度を落としたのでは、不安定になるというようなことだろうと思います。
[講 師]地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
専務理事 早川 光俊 氏

IPCCの排出シナリオと現実の排出量の経緯
IPCCは6つの社会シナリオを考えて、将来の気温変化の予測をしています。1番排出量の大きいのはこの赤いグラフですが、最近の排出量はIPCCが最も多いと考えたシナリオを超えてしまっています。2005年ははるかに超えて2006年はもっと多いです。IPCCをどう読むかというのはいろいろあるのですが、IPCCの科学は正しいと私は思います。ただ、IPCCの言っていることはある意味保守的です。安全な側でものを言っている。IPCCといっても科学者だけの集まりではなく、政府関係者も出ていて、いろんな意見を戦わせまして、極端なデータは全部外そうとしますし、都合の悪いデータなどは消したり、代えさせたりしますので、非常に保守的なレベルで記述しています。だからIPCCの予測は現実に起こりえる最低限の線で、実際にはもっと高く、もっと激しい変化が起こる可能性の方が高いと思っておいた方がいいと思います。その事を表しているのが、排出量は現実にはIPCCの予測はもうすでに超えているということと、北極などの現実が、予測をはるかに超えて進行しているということです。
今後の予測についていろんな事を言っていますが、動物及び植物の20から30%は、全球温度の上昇が1,5℃から2,5℃を超えた場合、絶滅のリスクに直面する可能性が高いです。すべての生態系が壊れてしまうとは言いませんが、かなり驚異的な数字です。今地球上の生態系にどれくらいの種がいるかは、正直言ってはっきりしたことは分かっていません。今、種が確定されているのは、例えば人間が1つの種ですね。象もそう、キリンもそうですが、そういった種が確定されているのは160万種から180万種だと言われています。実際地球上にどれくらいの種がいるかというと、3千万とも4千万とも言われています。分かっていないのでいろんなことをいろんな人が言うのですが、2千万から3千万は確実にいるだろうというのが大体の予測です。そういったものも含めて2、30%が絶滅してしまう可能性がある。先ほど申しました食料生産量は1~3℃までの上昇幅では増加すると予測されていますが、それを超えて上昇すれば減少に転じると予測される。これは世界全体です。
1番怖いのは水の変化です。これは、21世紀末の降水量の予測です。(図13)濃い茶色いのが20%以上減る、薄い茶色で10~20%減る、青いのは増える。概して言うと中緯度地域は減る。高緯度地域、極地に近くなると降水量が増える。左の図は12~2月で冬の時期ですね。右が6~8月ですから夏の時期です。世界の穀倉地帯の一つのヨーロッパ辺りは降水量が減るという予測になります。オーストラリアも減ると予測されています。
もっと顕著なのは河川流量の変化です。(図14)上が現在で、下が予測。赤いところが、河川流量が減ると予測されている地域です。1番赤いところは40%以上減る。河川の流量、要するに水の流れる量ですね。ヨーロッパは軒並み河川の流量が減ります。世界の穀倉地帯の1つであるミシシッピー沿岸、ここも減る。もう1つの穀倉地帯であるアジアは増える予測になっておりますが、これも日本の雨期のようにしとしと降ってくれればいいのですが、おそらく洪水とかのような形で降りますから、食料生産増産に結びつくとは到底考えられない。

2℃が限度
どのくらいの気温上昇までが、私たち人間を含む生態系が危険にならずに済むのかは2℃だと言われています。これは今からではありません。産業革命以前から2℃です。すでに0,74℃上昇していますから、残された幅は1,26℃です。1.1℃はどうやっても上がってしまうという予測ですから、ちょっと考えるだけでも恐ろしいくらいの数字です。2℃を超えると、地球規模の回復が不可能な環境破壊により人類の健全な生存が脅かされる可能性があるというふうに言われています。実はEUはこの2℃という目標を、京都議定書が合意される前の1996年にすでに政策目標に掲げて対策を進めてきている。そのことが、日本に比べてはるかに対策が進んでいる理由の1つです。
1~2℃、2~3℃がどう変わるか。(図15)
細かい表なので、また読んでもらったらいいのですが、例えば水不足は1~2℃だと5億人位に新たに影響が出るに留まりますが、2~3℃になると30億人以上になります。世界人口は今64億人。おそらくこの頃には、80億人を超えているでしょうから3分の1強の人たちが水不足になる。水不足になるということは何を意味するかと言いますと、子供たちの命も奪われます。今3秒に1人、子供たちの命が奪われています。その1番大きな理由がきれいな水が飲めないということです。脱水性の下痢で死んでいるわけです。温暖化により、その子供たちの数が飛躍的に増えるだろう。では、どうしたらいいのか?
今回のIPCCの第4次報告書は、産業革命以前から平均気温上昇が2~2,4℃に抑えるためにはCO2濃度を350~400ppmで安定化させなければいけない。現在は380ppmです。すでにこのレベルに達しています。ただ地球の気候系というのは複雑なシステムですから、濃度が380ppmになったからといって、すぐに2℃上がってしまうわけではありません。すぐに反応しませんが、もう危険なレベルに入ってしまっているわけです。CO2だけではなくて他の温室効果ガスを含めた濃度では445~490ppm。現在430ppmです。もう445 ppmまで15ppmしかありません。年間約2ppm上がっています。あと7年で444ppmです。そして2015年までに世界全部のCO2排出量をピークにして削減に向かわなければならない。そして2050年までに2000年比で50~80%削減しなければならないというのがIPCCの結論です。考えるだけで簡単でないことが分かります。

気候変動の経済学(スターン・レビュー)
一昨年になりますが、10月にイギリス政府がスターン・レビューとういうニコラ・スターンさんという世界的に著名な経済学者に依頼して、気候変動、温暖化が経済にどういう影響を与えるかという報告書を作りました。600ページ位のものですが、その中に書いてあることです。「今後数十年間の内の対策に失敗すれば、20世紀前半に人類が経験した大戦や経済恐慌に匹敵するような社会・経済的な損害を被る危険がある。その被害を金額に換算すると世界の年間総生産(GDP)の5~20%に相当する可能性がある」と。これは半端な数字ではないですね。そして、では危険レベルに至らないように対策をとる費用がどれくらいかかるかと言いますと、GDPの1%程度と予測しています。そして、「気温は人間活動の影響により急速に変化しつつあり、政策的対応をとるべき十分な情報がある」としています。少しびっくりするのですが、スターン・レビューを作ったのはイギリスの財務省です。環境省ではないのです。当時の財務大臣はブラウンさん、今のイギリスの首相です。彼は当時、ブレアさんのあとの首相に指名されていましたから、首相になることが分かっていて、財務大臣としてこの報告書を作ったわけです。あまり単純でないのは、イギリス政府は明らかに気候変動問題を梃子にしてイギリス経済を発展させようとしている。そういう戦略的意図があるように私には思えます。後でそのことを少しお話します。
スターン・レビューにあるですが、安全なレベルに温室効果ガスの濃度を収束させるには、ピークをできるだけ低く、また早くすれば緩やかな社会変化でいけるが、対策をさぼってどんどん増やしてしまい、ピークが遅くなればなるほど急激に社会経済を変えなければいけない。このシナリオでは、次の世代は非常に大きな負担を強いられます。急カーブを曲がるのに、手前からスピードを落とすと安全に曲がれますが、カーブに入ってから速度を落としたのでは、不安定になるというようなことだろうと思います。
図13 拡大
図14 拡大
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