HOME > 活動のご紹介 > 役職員や組合員の研修 > 『新しい時代における生協の役割について』

『新しい時代における生協の役割について』

2009年12月3日(木)
ドーンセンター・ホール(大阪府立男女共同参画・青少年センター)
大阪府生協連「2009年度生協大会~活動交流会~」
[講 師] 京都大学大学院経営管理研究部・京都大学大学院経済学研究科 教授 若林 靖永 氏 

今ご紹介いただきました、京都大学経営管理大学院でマーケティングを教えております若林と申します。今日は今から1時間ぐらいお時間をいただきまして「新しい時代における生協の役割について」ということで、私なりの問題提起ですので、最初にお断りしておきますが、生協の未来を決めるのは私のような学者ではなくて、組合員である皆様自身がどのような未来を選択するか、どのような未来を創造するかという視点で考えた時に、生協は私たちの生活を応援してくれる重要な手がかりであり、私たちの生活を充実させてくれる重要な一つの場だと思うのですね。皆様自身の意志で選択することが、あるいは挑戦することが求められている。そういったことをお話できればと思っております。
やはり大阪の皆さんが「うちらのことは、うちらで決める。」ということで、大阪の皆さんの心意気を示すような、これは生協の分野でもそうだと思うのですね。そういった生協作りというものを進めてもらえると嬉しいかなというふうに思っております。というぐらいで、実はこれだけが言いたかったのです。あとは、私が研究者として生協についてずっといろいろウオッチしてまいりましたから、その内容をご紹介したいと思います。でも、結論は今で終わりですからね。あとは付録ですので、ごゆるりと見ていただけたら結構です。
「生協とは何か」というところから一応始めとこうと思ったわけですが、ICA(国際協同組合同盟)というのがあります。これは生協の組織ではないのですね。協同組合の組織ですので、協同組合であるということで、ですから生産者の協同組合もあれば農業者の協同組合もあれば、例えば建設業者、日本ではゼネコンとか建設業者というとそういう株式会社のイメージがありますが、イタリアなんかですと南部の開発とかのために建設業をやっている協同組合とか、あるいは若い人たちがデザインとかコンピュターのITプログラミングなんかをやる協同組合を作ったりとかいうことで、実は様々な分野で協同組合という形で頑張っている人たちがいるのですね。もちろん、典型的にそういったものでありとあらゆる生活領域、産業領域を協同組合形式でやっている例というと、スペインのモントラゴンのケースが有名ですね。あれは銀行や学校や全部協同組合でやってしまうという、協同組合が一つの地域社会を形成してしまっているというような広がりを持った多角的な協同組合をやっています。
協同組合のアイデンティティに関するICA声明
そういった、世界には様々な協同組合がございまして、その協同組合が集まって作られているのが、この国際協同組合同盟(ICA)と呼ばれているのですね。ICAがこの間、世界の変化の中で協同組合も発展した面もありますが、やはりいろんな事情がありまして解散したりとか、倒産したりとか、衰退したりだとかということで、協同組合が世界的に見てどこでも成功している、頑張っているというふうには言えないような大きな変化を遂げています。そういう状況を踏まえて、そもそも協同組合というのは何を大事にする組織なのか、自分たちで自分たちの在り方というものについてしっかりと再確認しなければ、自分たちで自分たちの未来を考えて行く事は出来ないというふうに考えてこんな整理をしてるのですね。
私は今日はこれをメインにやろうとは思っていないのでお見せしているだけですが、 ここに書かれている1つ1つにそういった世界中の人々の協同組合への取り組みの経験、そして未来に向けて協同組合はどういう役割を果たすべきかということの自覚みたいなことがここには明らかになっていますので、ぜひ機会があればこの内容を受験勉強のように丸覚えしても意味がありません。これを自分たちの活動、自分たちの生協に照らして見る一つの物差しとして考えてみて、ああでもないこうでもないというふうに自分たちのこれからの行動、或いは考え方を問う際の一つの参考にして行くということでいいのではないかと思っています。例えばこの協同組合のアイデンティティに関するICA声明の価値のところですね。まん中のところには「協同組合は自助、自己責任、民主主義、平等、公正、そして連帯の価値を基礎とする」と書いていますし、さらにそれぞれの創設者の伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、組合ではなく組合員ですよ。組合員は正直であること、オープンであること、社会的責任を自覚すること、そして他人への配慮をするということを大事にした活動を進めるということを言っているのですね。ですから協同組合が何か社会的役割をするということだけではなくて、協同組合の組合員がこういうことを大事にするということを基礎に、例えば正直であることとか、隠しだてはしないとか、そういうことを基礎にしてより良き社会づくりに関わって行くんだということが、こういうところにも表れているのだろうと思います。
生協と株式会社
株式会社と生協を比較した図ですが、最大の違いはやはり株式会社は株主に利益を還元するということが義務なんですね。つまり株主はそこの会社の株を購入したら株価が上がるとか配当が頂けるという経済的な利益を求めて株を買ったり、場合によっては売ったりする。ところが生協の組合員になるということは売ったり売らなかったりというのは出来ないのですね。自分は組合員でこれを誰かに譲ろうなんてことは出来ません。生協の場合はお金を出してるのではなくて、人が生協の構成員になるのですね。そして出資金を払っているだけなので、出資金を増やしたり減らしたりすることは出来ますが、売買が出来るわけではないのですね。しかも、私たちが出資金を払うのはその出資金が増えるというような意味での経済的利益を求めてるわけではありません。生協が提供する商品、生協が提供するサービス、生協の事業の利用を通じて私たちの生活がプラスになるように、そういうことを目的に私たちは組合員になるわけですね。この辺りの根本的な株主と株式会社の関係と、生協と組合員の関係は違うということを見ておく必要があると思います。でも、一方で私のようなマーケティングとかマネジメントの研究者からすると、根本的に違うけれども株式会社も株主の利益だけを考えていたら21世紀の現代に於いてやっていけない。やっぱり地球環境問題にせよ、地域社会の問題にせよ、或いは従業員のワークライフバランスの問題にせよ、ちゃんと配慮がないような株式会社はやっていけませんよね。逆に生協も生協というのは一番上に書いてあるように「協同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、自発的に手を結んだ人々の自治的な組織です」と書いてあります。ですから一方では自治的な組織なんですね。でも、他方で管理する事業体というふうに書かれています。事業体であるということは、当然ある程度の利益が出てその利益が、例えば地震とか災害があった時に手元に利益が内部蓄積で蓄積されているから多少大損害を受けてもカバー出来るわけではないですか。或いは新しいお店を作ろうという場合でも、その為の投資の資金が獲得できる。つまりある程度の利益が出る事業体でなければ生協の職員にお金を払ったり、商品の取引先にお金を払ったりということも出来ないし、さらに未来に向けて投資をしたり、様々な災害に対する保険として使ったりということが出来なくなります。やっぱり事業体であるということは株式会社と同じような意味において、ちゃんと会計的に見れば利益が何%か出ていなければならない。もちろん利益を出すことが目的ではありませんので、株主であればアメリカの企業だったら10%の利益率なのに日本は3%、4%しかない、低いよという圧力がありますが、生協に対してはそんな圧力が世界比較で起こるわけではありません。国際比較でおこるわけがないという違いはありますが、生協もまた利益を出すことが求められるという点は共通点であると思います。
生協は不況に強い!…生協事業の特性
私はリーマン不況以降、地域生協も大学生協もなかなか経営が大変になってるということはよく存じ上げておりますが、敢えて皆さんに問題提起をしたいと思います。生協は本当は不況に強いはずなんです。もし弱いとしたら、それは生協の以下説明する強みが充分に発揮出来てない。生協がもっと生協だったら、こんな不況は吹っ飛ぶのではないですかというような話です。例えば、そのポイントは5つです。皆さんにお配りしたのは最後の組合員参加が無いと思います。この間いろいろ考えて、最初の会員制の説明だけでは組合員参加の意味が入らないので、新たに1つ追加していますからそれだけ見て下さい。会員制というのはどんなことかと言いますと、不特定多数に販売する場合であれば不況になったら知らない間に売り上げが落ちるわけですが、生協は違いますよね。協同購入・個配でも、毎週毎週同じ人に販売しているわけですよ。店舗に来る組合員も組合員で毎週毎週、毎日毎日利用してくれるわけですよ。特定の人に商品やサービスを供給しているわけですから、そういう特定の組合員との結びつきを深めていくことが出来れば不況には非常に強い、揺らがない事業になるはずです。組合員とのコミュニケーション、組合員の声に応えるということを通じで、組合員が何を望んでいるのかという、これは顧客知識と言いますが、そういった組合員についての知識、組合員についての情報をしっかり蓄積して、一人一人の組合員が「さすが生協、私のことよう分かってるなぁ」と思ってくれるような事業を展開したら、当然喜んだ組合員は他の組合員に「さすが生協やで。こんなええことあったんや」というふうに言ってくれると。そういうのが続けば当然不況に負けない生協事業になるはずなんですね。
次に2つ目に、組合員組織であることですよね。これは後でも出てきますので、ちょっと飛ばしましょうか。そういうふうに組合員が対話をする。組合員自身が生協を通じて工夫したりしたことを、さらに他の組合員に伝える。さらに、それを生協が学ぶ。生協と組合員、組合員と組合員、場合によっては生協を通じて組合員と取引先、そういったキャッチボールが、コミュニケーションが輪のように広がって行くということで生協の中ではテレビで広告をやっているから商品が売れるというような企業のメーカーのマーケティングの結果で物が売れるという売れ方ではなくて、組合員同士の組織だからこそ、生協でこれが評判になって売れるという売れ方です。これがここにいう対話による市場創造です。
2つ目の不況に強いポイントは日常の食を中心にしているということです。もし、宝石だとか高級ブランドだとかを相手にしてるところは、こんな不況期になって株価がダーンと下がったら、いわゆる富裕層、たくさんの株を持っているような人たちが物凄い割合で自らの金融資産を失っているのですね。もう2割とか3割という割合で失っていたりする。大損をしてしまっている人がいっぱいいるわけですよ。実際ミラノのブランドでアルマーニと3つぐらいありますが、その内の2つが確か銀座から撤退しましたよね。ですから、いよいよ日本でもブランド品が売れないという変化が起こってきて、そういうブランドのショップが日本から撤退するなんてことも起こってるというぐらい、この手の贅沢商品というのは、こういった不況気には大きなダメージを受けます。自動車もリーマンショック以降、売り上げが25%失うような状況で、大変な状況になりながら再建をしているところですよね。でも、日常の食ですよ。人間食べないわけにはいかないわけですよ。だから、食を中心としたビジネスをやってるということは凄く不況に強いはずなんですよね。
続いて組合員出資であること。先ほども申し上げましたが、株式会社であれば株主が鋭くチェックをします。その企業が儲かれへんとなったら株価が下がります。株価が下がれば資金調達が困難になると同時に他の企業や投資家ファンドから買収させられてしまうという、そういう懸念も出てきます。株式会社が上場するということは、そういうリスクを負うということも意味していて、ですから経営者は利益を上げることに、従業員の首切りをしてまでも利益を上げないと会社を守れない、そういうシビアな不況に立たされているのです。一般の市民、労働者の立場から見れば民間企業の多くが、この間派遣その他首切りをしていると、あの三越百貨店もついに早期退職優遇制度を始めたら、なんと4分の1位の人が募集に応じているという大変な首切りがどんどん展開されようとしているのですが、ナンセンスだというのも大事です。大事ですが、会社の経営者側からすればそこで首を切らなくて、利益が出なかったらその会社はだめになるのですね。株価が下がって資金繰りが出来なくなって投資が出来なくなって、結局どっかで吸収合併して救済してもらうということになるしかないという状況になりかねない。株式会社はそれぐらいダイナミックです。ところが生協は組合員が出資をしています。だれも生協を買い占めることは出来ませんし、誰も生協を売ることが出来ません。そして組合員は決して生協の利益率が低いからという理由で出資金を下げるということはないはずです。基本的には生協は組合員がお金を出してくれているということで安定しているのですね。不況だからと言って、銀行からの借り入れとかは大変かもしれませんが、資金調達面で特別な困難さが生まれるわけではない。そして生協ブランドというのがあります。皆さま方がこの大阪の地で生協の取り組みを進めてきた結果、やっぱり生協って安心安全だなと、先ほど大阪府の人も言っていましたが、そういったブランドがすでに出来ています。そういうブランドがあるから、信頼があるから、民間企業で商品開発をするから手伝ってくれと言われたら、じゃあいくら手当てをくれるんですかという話に当然なります。生協も最近はちょっとくらい出した方がいいかなということで出してくれる生協がないわけではないようですが、基本的には自分たちの生協ですから、もし面白い商品を作ろうという機会があるならいつでも応援するわよという感じではあります。組合員が主体的に参加して生協の場を自分の成長、自分の生きがいを感じる1つの重要な場、サードプレイスという言葉がありますね。  働く場と家庭、そして人間は家と会社の往復だけではだめなんですね、サードプレイス。つまり第3の領域、これは趣味でもいいし、地域活動でもいいし、そして生協活動でもいいと思いますが、この3つのバランスが取れてるということが、人間がバランスを取っていろんな繋がりの中で成長したり、あるいは自分の存在感を社会的に確認したりということに繋がるのだろうと思いますが、そういう場になっている。ですから不況で困った時に組合員が助けてくれる。組合員の知恵と行動力で打開するということも可能です。こういう意味で生協というのは非常に不況に強い特徴を持っているはずなんだろうというふうに思っています。
利益志向と社会志向
続いて「生協とは何か」という話をもう少し進めたいと思います。生協も先ほど申し上げたように事業体ですので、利益追求の組織ではないけれども利益追求を進める必要があり、そして、ややもすると利益追求の組織ではないのに経営者が利益追求ばかりを優先するようになる怖れというのはあります。従ってそこはしっかりと組合員が利益は大事だけれども、利益優先になっていないか?その区別は難しい点ですが、そこをしっかりと見極めて関わって行く必要があると思います。また、生協はそもそも私たちの暮らしを良くしようというところから始まっているので、一人一人の願いに答えるということをみんなの力で実現する。そして一人一人の生活を良くするということは、実は地域社会を変えて行く、大事にして行くということを抜きにはそうはならないという意味においては、一人一人の要求から出発していますが、同時にそれは社会的な問題解決の広がりを持っているというのが生協の特徴だろうと思います。純粋に言えば生協はNPOではありません。NPOというのは2つの要件が必要なんですね。1つは不特定多数を対象にしないといけないのです。生協は組合員という特定ですよね。不特定ではないという意味でNPOではないというふうに定義されますし、もう1つのNPOの定義は事業の結果得られた利益を関係者に還元してはならないというルールがありますが、生協は利用高割戻しとか出資配当という形で組合員に何らかのリターンバックがありますよね。あれをやると厳密な意味でのNPOの定義からは外れてしまいます。そういう意味ではNPO法人で言うところのNPO法人の定義に生協は値しないのですが、でも実質的には組合員の利益を大事にすると言っても、地域の多くの組合員の願いに答えるということは、地域の共通の暮らしの問題を解決しようとするという意味において、生協というのは極めて公益性が高い事業を進めようとしているというふうにも見ることが出来るだろうと思います。ということで、そもそもは組合員の利益を共同で実現しようということですが、それが同時に単に組合員だけの利益ではなくて、地域社会あるいは安全安心な社会システムというのを日本国内でも、そして国際的にも作って行こうという社会的な広がりを持っているというふうに見るべきなんだろうと思います。
生協の社会的活動
そのようなことで、皆さん自身が様々な分野でここにも挙げられているように、地域の事業者・団体と連携する、「食の安全」を追求する、消費者組織としての役割を発揮する、男女共同参画を推進する、子育てを支援する、家計活動やくらしの見直し活動、そして最近はお年寄りの介護だけではなくて、様々なご家庭のいろんなお悩みにお答えするようなそういった助け合いの活動ということが全国に広がっていますよね。さらに、今日から神戸でルミナリエがスタートするらしいのですが、私の記憶に間違いがなければ阪神大震災から15年くらいになるんですかね。やはり、あれを大きなきっかけにして日本でもボランティアというものの大事さが問われるようになりましたが、同時にあれをきっかけに生活協同組合が地域で何か大変な事が起こった時にどのようにその地域の危機に生協が貢献できるかということで、緊急物資協定を結んで生協の店舗や倉庫にある商品を供給したりするなどなどの取り決めがなされたり、あるいはユニセフとかピースアクションなどの平和の取り組みなどが広がるという形で、様々な社会的活動が広がっているということだと思います。
環境の取り組み
さらに地球温暖化の問題を中心に様々な環境の取り組みも進められている。進められていますが、もっともっと今後どうなるか、ほんとに25%という鳩山政権の公約、これがどうなって行くのかということは予断を許しません。コペンハーゲンで開かれるCOP15ですかね。この取り組みに関しては残念ながら国際合意には至らないのではないかという 話にはなっていますが、とにかく人類全体としては新しい大きな問題を掲げて、いろんな対立や利害はありますが、それを実現するためにはやって行かなくてはいけない。京都大学の総長は最近、「もうサステナビリティ、持続可能性なんていう認識は甘い。これはサバイバビリティ、地球と人類が生き残れるかどうかという挑戦課題なんだと、それぐらいのシビアな危機認識を持って市民も企業も、そして大学も全力を尽くして挑戦して行かなければ、我々21世紀、あるいは22世紀、次の世紀というふうに視野を広げてもいいかもしれませんが、未来は無いんだよ。」というふうに警鐘を鳴らしているというようなこともございます。
私たちの思い、志が問われている
少しここで話を変えましょう。これからの未来を考える為には、やはり一度頭をリセットして、これまでの先輩たちや自分たちがやって来た活動を踏まえながらも、未来志向で、つまり過去の延長線上で未来を考えるのではなくて、逆に未来に求められているものから現在何をするべきかということを考えるという、こういうリセットして未来から発想するというようなことも、新しい変革、新しい挑戦を進めていく上では重要だろうと思います。そういった意味で、私たちの思いや志が問われていると思います。この点ではビジョン、未来はこうあるべきだという自分たちなりの夢というものを一人一人の夢をみんなの夢にと共有して行って、その為に何をすべきか、何が問題なのか、何が障害なのかということをはっきりさせて、1歩1歩そのビジョンに近づいて行く。今、自動車を普通のように乗っていたり、携帯電話とかがあったりしますが、こういった私たちの今の生活を彩っているいろんなものが誰か最初に「こんなのがあったらいいのになぁ。」と夢を描いたから実現しているのですね。人類の進歩の原動力の1つは夢を見る力にあるのだと思います。そういう意味では今の生協の活動、今の生協の事業経営がそれなりに大変でそれなりに苦労していて、それを何とかやって行くだけでもいっぱいいっぱいということも他方あるでしょうけれども、同時にそれに留まるのではなくて、夢を見るといことを呼びかけさせていただきたいと思います。
ドラッカーの自己評価手法
それで、その夢を具体化するプロセスという意味では、このドラッカーという経営経済の非常にいろんな問題提起をした人がいます。ぜひ興味のある方は、結構NPOの役割についても問題提起をしている本もありますし、勿論マネージメント、経営についての本も出しています。これからの経済、社会がどう変わって行くかということについて洞察した本も出ています。ご興味が持たれるようでしたらぜひ見て頂けたら嬉しいなとも思います。このドラッカーの自己評価手法は大きく分けてこの4つの問いについてしっかりと分析して、しっかりと考えようと言っています。敢えて自己評価手法という名前が付いているのは、誰か偉い人に言われて修正するのではなくて、NPOが自ら変わって行くために、時代の変化に対応して新しい活動を始めるためにはNPOの役員、理事会が自らの活動を評価して見直すという形で変革を自ら行うというためのプログラムです。ですから自己評価なのですね。
まず、最初なのはミッション。「私たちは何をするのが目的なのか?」これを改めて考えよう。ミッションというのはころころと変わるものではありませんが、しかし時代の変化と共に見直さなければいけない面もありますよねというのが1つ目。2つ目はミッションを具体化する上で「これは誰を対象としているのか?」生協の場合であれば組合員ということになるのですが、組合員といっても、ご高齢の組合員をテーマにしているのか、それとも例えば子育て世代をテーマにしているのか、或いは大都市の組合員をテーマにしているのか、限界集落の組合員をテーマにしているのか、組合員といってもいろいろですよね。いろいろの組合員が、それぞれどういろいろなのかということを具体的に想定しないと、組合員を大事にするといっても抽象的、一般的で中身がないですよね。さらに、支援してくれる顧客、これは主に生協の職員とか取引先だと思います。さらに広げると地域社会との関わりでは地方自治体なんかも入って来るかもしれません。こういう生協と繋がりのある、生協の事業を担っている生協職員や生協の事業と関連する個人や組織、こういったものを支援してくれる顧客ということで広げて考える。そういった顧客が10年前20年前と今とで、或いはさらに10年後20年後、どういったふうに変化して行くのか?顧客の変化というものに対応出来ない組織は、せっかく使命はいいものであってもお役御免になってしまう。という意味で顧客について考えようというのが第2の問いです。第3が、その顧客は何を価値あるものと考えているのか、つまりニーズですね。やはり大都市部のニーズと限界集落のニーズは違うでしょう。或いは60歳代のニーズと70歳代のニーズは違うでしょう。もちろん子育て世代のニーズも違うでしょう。小学校に上がるぐらいのニーズと0歳1歳2歳を抱えてる人のニーズも違うと思います。そういうふうに細かく具体的にお客様は組合員は何を求めているのか、そして生協で働く職員は何で、極論を言うと安月給なのに頑張って生協の仕事をしてるのかと。彼らが何を望んでいるかということをちゃんと受け止めなければ生協の事業経営は回らないですよね。そういうふうに組合員、職員、その他の人たちが、やはり何を望んでるのかこれを大事にしないマネージメントはあり得ないというのが3つ目です。そして、マネージメントの基本はPlan・Do・Seeを回すことなんですが、Plan・Do・Seeで大事なのは実は最後のSeeです。成功したのかしなかったのか。成功したとすれば誰が頑張ったから成功したのか、成功しなかったとすれば誰が不真面目だったから成功しなかったのか、はっきりと黒白付けないと次の改善のきっかけにならないですよね。やっぱり事業が変わるということは、成果はなにか、成功してるのかしてないのかをはっきり言えないとだめなんです。ところが生協の活動や事業っていい事をやってるじゃあないですか。いい事をやってるんで、「今年も頑張った」という総括になるんですよ。これだと何にも変わらないんですよ。「頑張った」それでいいのかという話なんですよ。やっぱりちゃんと、何が成功で何が失敗なのかがはっきり黒白付けられるように、これは難しいんですよ。難しいけれど、そういう指標、そういう定義を自分たちでしっかり考えて、着実に事業が改善される。着実に生協がそのミッション・使命が具体化されて、地域社会の変化、組合員に対するお役立ちというレベルをアップして行く。そういうふうに繋げることが必要なんですね。ところが、多くの生協やNPOはいい事をやってるもんだから、「今年もよく頑張りました」という総括になってしまって、おいおいという感じの面がしばしばあるんだろうと思うんですね。こういった4つの問いについて考える事で抜本的に未来に向けて考えるきっかけになるだろうということで問題提起をさせていただきました。
現代社会
今日の現代社会と生協ということで、少し広げた話をしたいと思いますが、ここにも書かれていますように、現代社会はかなり大きな難問にぶち当たっています。とは言っても、世界史・日本史を丁寧に読めば、長い目で見れば人類あるいは私たち日本人の暮らしや社会というのは間違いなく良くなっている。昔は本当に悲惨な状況がいっぱいありましたから、そういう状況で見れば基本的には世の中は良くなっているという面があります。ありますが、一方でグローバリゼーション、市場原理主義、地球環境問題、貧困・格差・暴力、とにかく地域社会でも会社でも何となくギスギスして攻撃的でストレスが溜まって、メンタルヘルスですかね、鬱とかいろんな精神的な失調をしてしまう人が多いという、そういうちょっと暗い感じの世の中という面が強まっているのかなという状況があるように思います。そういう中で長い目で見たらそうでもないよねという意味では、まず歴史的に見て、基本的にはポジティブな面をしっかり見る必要があると思います。現在今起こっていることも、そういう歴史的な流れの中で考えてみて、マイナス面ばかりではない。例えばグローバル化、マイナス面ばかりではないです。市場主義、マイナス面ばかりではないです。プラスはあるんですね。もちろん反作用もあります。そういう状況の中で今私たちは何が出来るのか?生協は何が出来るか?ということを考えるという視点が必要だと思います。
ファブリーズによる新市場創造
1つの例を挙げましょう。「ファブリーズ」というのがあります。これは新しい市場を創造するという例でご紹介したいと思います。これはどういう商品かというと、もともとは布の匂いを取る商品だったんです。ということで、例えばペットをお飼いになってる人が、お家の中で猫を飼っている。そのペットの匂いでペットを包んでいるタオルとかが臭くなってしまうのでシュシュッとやる。そういうのに対応していた商品だったのですね。ところがそんなマーケットは小さいわけですよ。そこでファブリーズの関係者、日本のP&Gグループは考えました。実は消費者は別に臭いを消すことが好きではなくて、臭いのない布が欲しいと思っている。では、なぜ臭いのない布が欲しいと思っているのかというと、部屋の中に臭いのある布製品を無くすということはどういうことかと言うと、臭いがない部屋が欲しいから消したいわけですよ。つまりここで逆転が起こりました。室内の臭いは室内の布、例えばカーテンとか、あるいはファブリィック製のソファとか、あるいは衣類、こういった布が臭いを吸着してまた吐き出すということをやるから部屋の中にいやな臭いがこもってしまう、それを消してくれるという製品なんだ。だから布の臭いを取る製品なんだけど、部屋の臭いを取るということになるんだと、すり替えたというか位置づけを変えたのですね。そういうキャンペーンをやったらファブリーズは10倍ぐらいのマーケットサイズに大きくなるし、しかもファブリーズ以前にはそんな商品は存在しないわけですよ。トイレ用の消臭剤とか玄関用の消臭剤とかはありますが、ファブリーズのような商品はなかったので、以前のトイレ用消臭剤その他の売り上げにはほとんど影響を与えずに、ファブリーズの一人勝ちのように勝ったのですね。今は花王さんが類似ライバル商品を出してたりするので競争をしていますが、そういうふうにこの商品は全くそれ以前にはない切り口で私たちの生活を改善する提案をすることで新しい市場を繰り広げたケースです。
Wiiによる新市場創造
同じように任天堂Wii。これはゲーム機ですが、従来のゲーム機はどんどんマニアックになって行ったわけですよ。いかにボタンを速く叩けるかという、そんなのはゲームマニアの大学生か反射神経が敏捷な小学生じゃあないと楽しめないというレベルになっていたわけですよね。任天堂もその後追いをしていたので、ずっと業績が低迷してたのですが、任天堂はもともとファミコンとかスーパーマリオとかを開発してきたオリジナルのゲームについての愛と哲学がある会社です。「ソニーの後追いをしていることが任天堂が世界中の人たちに提案したいゲームの楽しさ、ゲームが作る幸せなのか?違うのではないか」と考えて、例えばゲームのコントローラを変えたのですね。私はこれは素晴らしいアイデアだと思いますね。だって考えてごらんなさい。釣りゲームをやるのに今までこうやっていたんですよ。釣りをやるならこうでしょ?野球やるのもこうやっていたんですよ。でも野球ならこうでしょ?こういう当たり前のナチュラルな動きで楽しめるようになったんですよ、任天堂のWiiというのは。さらに、この中にもやっている人がいるかもしれませんが、私の義理のお兄さんが自分の父母に任天堂を送ったらしいです。「なんで?」と聞いたら「wiiフィットで毎日健康管理してもらってるねん」とか言って、やっぱりあれを親孝行というんですか?親孝行として任天堂のWiiをプレセントしている家庭もある。実際、40代50代60代であれで一生懸命ヨガをやったりジョギングをやったり、あれでジョギングをやると楽しいんですよね。ライバルがいて抜いたり抜かれたりしますから、思わずかーっとなってテンションが上がるのですよ。そういうふうに、今までだとゲームだと思えなかったような、その前にもともと任天堂のDSでそういうことに成功してたというのは大きいですが、その結果高齢者が楽しむ。孫とお爺ちゃんお婆ちゃんが一緒に楽しむ。あるいは女性が楽しむというような、海外でも新しい楽しみ方が広がっています。今までのゲームとは違うという事で大ヒットしました。残念ながら大ヒットしたと言うのも今年になって売り上げが伸び悩んでいます。ちょっと今期これからの業績は?なんて言われていますが、一応リーマンショック以降も任天堂はこういう一人勝ちな戦略を取ることに成功しましたので、非常に高業績を続けているというのが特徴です。
Tokyo Disney Resort 
どんどん紹介したいと思いますが、東京ディズニーリゾート。これもテーマパークの中では一人勝ちしていますが、やっぱり大きいのは東京ディズニーリゾートにしかない特別な経験が出来るからですよね。あそこに行けば非日常的な、今の実世界のいろんなしがらみがあってしんどいのを全部忘れて、頭を空っぽにして楽しめるようなファンタジックなワールドがある。ファンタジックなワールドがあることの是非についても、いろんな議論がありうると思いますが、でもそれを1度味わうとまた味わいたいということで、リピーターになってしまう。そのために、例えば弁当の持ち込みを許さないというのも、そういうファンタジーワールドの雰囲気が壊れるからですよね。あそこでおにぎりを食べられたらどないなるんかという話ですわ。そういうことは認めない。同時にあそこで買ってもらうということで、TDRの儲けにも繋がっているという一石二鳥なわけですが。
IBM ガースナー改革
IBMというのは、もともとメインフレーム、パソコンを売っている会社ですが、今は違います。ITソリューションを通じて世界を変える取り組みをやるという戦略に変わっています。今はハードを売るのがメインではなくサービスを提供するためのセットとしてハードも取り扱うことがあるというサービス企業になりました。IBMが最近言っているのは「Smart Planet」です。ITの力を借りてよりスマートに、このスマートというのは賢いという意味ですね。賢くプラネット、つまり地球です。地球で私たちが生きていくといういろんな問題をITの力を利用してスマートに行こうということで、「スマートな水管理システム・スマートな電力供給網・スマートな交通システム・インテリジェントな油田システム・スマートな食料サプライチェーン・スマートな都市」ということで、ITを使ってバージョンアップ、そのお手伝いをするのがIBMだというふうに提案をしているわけで、非常に大きなテーマを掲げてやっています。日本のコンピュータ産業の多くはパソコンを作ってなんぼなんて言うビジネスモデルからなかなか脱却できないのと比べれば、このIBMの志の高さ、スケールの大きさの違いは、やっぱり注目すべきだろうと思います。
Google グーグル
さらにグーグルです。グーグルが恐ろしいのは後からお金はついて来るという発想なんですよ。日本のITベンチャーが駄目なのは最初から儲けようとするんですね。ですから本当につまらないビジネスしかしない。ところがグーグルは取りあえず多くの人が便利なツールというものをWebを通じて提供しよう。世界中にある情報に誰もが簡単にアクセス出来るという環境を作ろうという高い志を立てました。もちろんトラブっていますよ。ストリートビューって知ってますかね?これはグーグルは日本中を車で撮影してるんです。 なのでグーグルのマップのストリートビューのところを見ると、下手をすると皆さんのお家の車とかが写っていたり、ひどい場合は誰かと誰かがキスをしているのが写っていたりとかするのです。そういうのはプライバシーの侵害なので訴えたりすると、ちゃんと削除してくれるとなっていますが、ほんとにプライバシー侵害の何者でもないような情報提供をやっています。でも便利ですよ。地図を見るよりも360度その周りがどうなってるかの写真画像のある方がどれだけ便利か。もし皆さんが引っ越ししようとした時に、その周りがどんな感じかというのが行かなくてもズバリ分かるのですから凄い便利なんです。そういう情報をやっています。同ことで今作家たちが怒っていますが。世界中にある本をグーグルで検索出来るようにしようというサービスをどんどん展開しようとしています。これも今アメリカでちょっと司法省と裁判ではないですが、調整のプロセスに入っていて、どうなるかなという話です。いずれにしてもグーグルはそういうことをやって、そういう所にみんなが寄れば、そこに広告を載せることでビジネスになるだろうということで、後から利益はついてくるということでやっているのです。高い志を持ってビジネスをする事で、誰もが真似出来ないような便利なサービスをして一人勝ちをしています。と言っても日本ではヤフーが頑張っているので一人勝ちとは言えませんが、頑張っているという特徴があります。
Cause related marketing
続いて「Cause related marketing」というのも紹介したいと思います。この場合のCauseというのは社会問題を解決する運動とか組織のことを指すのですが、1例を挙げましょう。
Volvicというのは水を売ってるブランドですよね。日本ではこのキャンペーンをやって今年で3年目ぐらいですかね。今世界中で徐々に広げてるみたいですが、これはVolvicを売ってそれを買ったら、Volvicの売り上げの一部を、Volvicというのはダノングループですが、ユニセフに寄付します。そしてユニセフがアフリカに井戸を作ります。アフリカにはまだ安全ではない水、危険な水を飲んで乳幼児やお年寄りがなど体の弱いものがバタバタと死んでいるということで、基本的に死亡率が未だにやたらアフリカで高かったりする理由の1つは水がだめなのですね。ですから、ユニセフを通じてアフリカに井戸を作って、安全で清潔な水が飲めるようにする。売上1・につき10・の安全で清潔な水が提供できるというブログラムをユニセフと協力して進めますよというキャンペーンなんですよ。皆さん、どう思います?Volvicで儲けているんだったら、利益の1部をがつ~んと寄付したらええやんと見るかもしれません。でも、もう社会の問題は広く亘っているんですよ。社会の問題が解決しない最大の理由は、私たちが無知・無関心であることなんです。やっぱり、私たちがその問題を知る、その問題に関心を持つ、そして私たちが出来るところから1歩踏み出す。こういうことが世界中の人が進めるだけで、世の中がどれだけ変わるかということですね。そういう意味でVolvicは消費者に無理やり買わせるということを通じて、消費者を巻き込んで一緒にこの問題を知ってもらう、協力してもらうという動きを取っているわけです。消費者も自分たちがこれを知り、そして自分たちなりにこれを買うということで、応援できるということになってOKですよね。ユニセフはもちろんVolvicから定期的にこういう支援を受けて、アフリカの貧困問題の解決に貢献出来てOKですよね。Volvic はVolvicという水のブランドが単なる儲けの水のブランドではなくて、安全で清潔な水だというだけではなくて、アフリカの水問題の解決に繋がる、そういう社会的な問題を大事にするブランドだということで、ブランドイメージも上がって、売上も上がるというVolvicの会社としてもOKという、そういう社会問題と商売が両立するマーケティング。これをCause related marketingと言うんですね。そんなようなマーケティング手法というのも21世紀の新しいやり方なんだと思っています。
ジオ・サーチ㈱
ジオ・サーチという会社があります。もともと大手の企業から独立した人がやっているのですが、これは何をやっているのかと言いますと、地面の地下、特に大都市というのはビルをいっぱい建てたりいろんなことをした結果、中にある地下水が枯渇してしまって、地下水が通っていた穴がポッカリと空洞になっている。空洞になっているということは、その上をトラックが走っていて、ある日ドカンと地面が陥没する事故というのは東京では毎年あちこちで起こっているのです。そういうことを事前に知るためには、掘らずに地下に穴があるかどうか調べたらいいのですね。結局これってレーダーなんですよ。レーダーで地下の状況を調べるという独自の探査サービスで公共空間の安全を守りますというのは、地下に穴が空いているかどうかを上にある黄色い専用車で空洞を見つけるということを専門にしている会社です。この会社に1992年に地雷除去の国連の活動をやってるブラグデンさんというのがこの技術を対人地雷の除去に役立てないかと、皆さんご存じですよね。ノーベル平和賞も取りましたが、対人地雷というのが物凄くカンボジアで主に1970年代世界的に使われてしまったのですね。非常に憎むべき残忍性のあるもので、決して人は殺さないのですね。大体片足1本無くなるとかですね。それぐらいのダメージしか与えないものを、普通の民家と民家があるような間の道路に敷き詰めたりするのですよ。子どもたちが小学校に行くという途中で被害にあったりするので、まだ全然除去出来てないのですね。それで、それを除去するということで、また事故する人もいるのです。相手は地雷、爆弾ですから。そこを何とか安全に地雷除去するために、この路面下の空洞探査を本業としているジオ・サーチ㈱に協力を求めたのです。当然、国連ですからタダでやってねと頼まれたので、大変だと思ったのですが、社長が重要なことだと始めたので、周りの民間企業の社長だとか顧問に相談したら「これはいいことだから我々も応援するからやりなさい。」ということでやって行く。それで、社長もそうやって頑張っていたら、このジオ・サーチの従業員たちも「俺たちもボランティアで協力しようぜ。」ということになって、ジオ・サーチのまるで副業かのような形で、この地雷除去のための機械を作って、それを派遣するという事業を始めるのです。そして、それを本格的に進めるために「JAHDS(ジャッズ)」というNPOが作られたのです。つまり、ある会社の活動を通じでNPOが生まれてしまったというケースですね。だから、表で金を稼ぐのはジオ・サーチであって、社会活動をNPOでやっているみたいな両面作戦のような事例も出て来ているわけです。これも本業を通じて社会貢献に活かすというものが広がってしまってこうなったという例だと思います。
生協の戦略
続いて、今申し上げたように生協は利益を実現するという意味では経済性も重要ですが、21世紀の生協の有り様は、そのことと同時に先ほどの「ジオ・サーチ」と「ジャッズ」の例のように、いかに社会的に意味があるかということで価値を生みださなければ存在価値がない。そういうイノベーションを進めて行くことが課題であって、これは例えば1例を挙げているだけですが、やはり未来志向で新しい生協の事業や活動をいうことを広げなければいけないのだろうと思います。これは本当に1つの例ですので、やれと別に言っているわけではありませんから、そこは誤解されないようにして欲しいのですが、ある生協、これは「コープあいづ」ですから福島県の生協ですが、以前にそこの生協のトップの皆さんと話をした時に、「これだけ地方経済が深刻化している状況の下で、もっと安い商品を提供しなければ組合員に対するお役立ちにはならないのではないか。生協でも何とかディスカウント店が成立しないかどうか挑戦をしたいと思っているんだ。」というお話を伺ったことがあります。それを受けて始まったのがこれです。
(テレビニュース報道より)初年度は11億円の黒字を見込んでいます。…今年3月、会津若松市に生協としては全国で初めてになる「低価格専門店」がオープンしました。生協の他の店に比べて、平均で2割ほど値段が安いこの店ではオープン以来順調に売り上げを伸ばしています。その安さと人気の秘密を取材しました…集中的に単品を揃えることによってメーカーや問屋に価格をかなり安くしてもらえる。また、扱う商品の種類を通常の店舗より2割ほど減らしています。たまにしか売れない商品の取り扱いを止めてしまったことにより、商品を細かく補充する手間が省け、仕入れにかかるコストや時間を削減することが出来ます。売れ筋の順位で、ABCDEまでのランク分けをして、極端に言うとEやDはカットしてしまう。良く売れるものを大量に仕入れる、この方法で魚や肉、野菜などの生鮮食料品も安く販売しています。・・・低価格専門店を作ったコープあいづは、会津地域に8つの店舗を展開しています。しかし長引く不況を受けて、お店での1人あたりの購入金額は年々減っていました。少しでも生活費を抑えたいというのが消費者の本音。そんな声に答えるため、中でも売り上げが落ち込んでいた「にいでら店」をいい品を安く買える「低価格専門店」に作り変えたのです。「『暮らしを応援するというだけでなく、暮らしを守る』というようなお店を作れないかということで、毎日実際に生活で買い物をした場合に、今まで3万円かかったのが2万5千円ぐらいで家計を守れるというようなお店にしたい。」
これをお見せしたのは、これをやれと言っているわけではなくて、いずれにしても「コープあいづ」でも、これをやることのメリット・デメリットがあるわけです。今、ちょっと見ただけでも分かるように、品揃えをかなり絞っていますので、「これが欲しいんだ」という組合員のご期待には「申し訳ない!」と言って断っています。さらに、今まで夜の10時までやっていたのですが、そうするとパートを2回用意しなければいけないということで人件費が増えてしまうので、「夜の7時で閉めますよ。ごめんなさい!」というようなわけですよ。そういう無茶苦茶なことをやって、何とか経営も成り立つし、値段もかなり下げられるというやり方をしているわけで、これが組合員のニーズに応えられるベストな事かというのは別です。でも、こういうふうに新しい挑戦を始めなければ、時代が変わる中で組合員の本当に期待に応える生協にならないということです。そういう挑戦が、これまでの延長線上にない新しい発想での挑戦が始まっているという例として受け止めていただければと思います。
時間も来ているようでございますので、私の問題提起とさせていただきます。どうも、ご静聴ありがとうございました。
2009年12月3日(木)
ドーンセンター・ホール(大阪府立男女共同参画・青少年センター)
大阪府生協連「2009年度生協大会~活動交流会~」
[講 師] 京都大学大学院経営管理研究部・京都大学大学院経済学研究科 教授 若林 靖永 氏 

今ご紹介いただきました、京都大学経営管理大学院でマーケティングを教えております若林と申します。今日は今から1時間ぐらいお時間をいただきまして「新しい時代における生協の役割について」ということで、私なりの問題提起ですので、最初にお断りしておきますが、生協の未来を決めるのは私のような学者ではなくて、組合員である皆様自身がどのような未来を選択するか、どのような未来を創造するかという視点で考えた時に、生協は私たちの生活を応援してくれる重要な手がかりであり、私たちの生活を充実させてくれる重要な一つの場だと思うのですね。皆様自身の意志で選択することが、あるいは挑戦することが求められている。そういったことをお話できればと思っております。
やはり大阪の皆さんが「うちらのことは、うちらで決める。」ということで、大阪の皆さんの心意気を示すような、これは生協の分野でもそうだと思うのですね。そういった生協作りというものを進めてもらえると嬉しいかなというふうに思っております。というぐらいで、実はこれだけが言いたかったのです。あとは、私が研究者として生協についてずっといろいろウオッチしてまいりましたから、その内容をご紹介したいと思います。でも、結論は今で終わりですからね。あとは付録ですので、ごゆるりと見ていただけたら結構です。
「生協とは何か」というところから一応始めとこうと思ったわけですが、ICA(国際協同組合同盟)というのがあります。これは生協の組織ではないのですね。協同組合の組織ですので、協同組合であるということで、ですから生産者の協同組合もあれば農業者の協同組合もあれば、例えば建設業者、日本ではゼネコンとか建設業者というとそういう株式会社のイメージがありますが、イタリアなんかですと南部の開発とかのために建設業をやっている協同組合とか、あるいは若い人たちがデザインとかコンピュターのITプログラミングなんかをやる協同組合を作ったりとかいうことで、実は様々な分野で協同組合という形で頑張っている人たちがいるのですね。もちろん、典型的にそういったものでありとあらゆる生活領域、産業領域を協同組合形式でやっている例というと、スペインのモントラゴンのケースが有名ですね。あれは銀行や学校や全部協同組合でやってしまうという、協同組合が一つの地域社会を形成してしまっているというような広がりを持った多角的な協同組合をやっています。
協同組合のアイデンティティに関するICA声明
そういった、世界には様々な協同組合がございまして、その協同組合が集まって作られているのが、この国際協同組合同盟(ICA)と呼ばれているのですね。ICAがこの間、世界の変化の中で協同組合も発展した面もありますが、やはりいろんな事情がありまして解散したりとか、倒産したりとか、衰退したりだとかということで、協同組合が世界的に見てどこでも成功している、頑張っているというふうには言えないような大きな変化を遂げています。そういう状況を踏まえて、そもそも協同組合というのは何を大事にする組織なのか、自分たちで自分たちの在り方というものについてしっかりと再確認しなければ、自分たちで自分たちの未来を考えて行く事は出来ないというふうに考えてこんな整理をしてるのですね。
私は今日はこれをメインにやろうとは思っていないのでお見せしているだけですが、 ここに書かれている1つ1つにそういった世界中の人々の協同組合への取り組みの経験、そして未来に向けて協同組合はどういう役割を果たすべきかということの自覚みたいなことがここには明らかになっていますので、ぜひ機会があればこの内容を受験勉強のように丸覚えしても意味がありません。これを自分たちの活動、自分たちの生協に照らして見る一つの物差しとして考えてみて、ああでもないこうでもないというふうに自分たちのこれからの行動、或いは考え方を問う際の一つの参考にして行くということでいいのではないかと思っています。例えばこの協同組合のアイデンティティに関するICA声明の価値のところですね。まん中のところには「協同組合は自助、自己責任、民主主義、平等、公正、そして連帯の価値を基礎とする」と書いていますし、さらにそれぞれの創設者の伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、組合ではなく組合員ですよ。組合員は正直であること、オープンであること、社会的責任を自覚すること、そして他人への配慮をするということを大事にした活動を進めるということを言っているのですね。ですから協同組合が何か社会的役割をするということだけではなくて、協同組合の組合員がこういうことを大事にするということを基礎に、例えば正直であることとか、隠しだてはしないとか、そういうことを基礎にしてより良き社会づくりに関わって行くんだということが、こういうところにも表れているのだろうと思います。
生協と株式会社
株式会社と生協を比較した図ですが、最大の違いはやはり株式会社は株主に利益を還元するということが義務なんですね。つまり株主はそこの会社の株を購入したら株価が上がるとか配当が頂けるという経済的な利益を求めて株を買ったり、場合によっては売ったりする。ところが生協の組合員になるということは売ったり売らなかったりというのは出来ないのですね。自分は組合員でこれを誰かに譲ろうなんてことは出来ません。生協の場合はお金を出してるのではなくて、人が生協の構成員になるのですね。そして出資金を払っているだけなので、出資金を増やしたり減らしたりすることは出来ますが、売買が出来るわけではないのですね。しかも、私たちが出資金を払うのはその出資金が増えるというような意味での経済的利益を求めてるわけではありません。生協が提供する商品、生協が提供するサービス、生協の事業の利用を通じて私たちの生活がプラスになるように、そういうことを目的に私たちは組合員になるわけですね。この辺りの根本的な株主と株式会社の関係と、生協と組合員の関係は違うということを見ておく必要があると思います。でも、一方で私のようなマーケティングとかマネジメントの研究者からすると、根本的に違うけれども株式会社も株主の利益だけを考えていたら21世紀の現代に於いてやっていけない。やっぱり地球環境問題にせよ、地域社会の問題にせよ、或いは従業員のワークライフバランスの問題にせよ、ちゃんと配慮がないような株式会社はやっていけませんよね。逆に生協も生協というのは一番上に書いてあるように「協同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、自発的に手を結んだ人々の自治的な組織です」と書いてあります。ですから一方では自治的な組織なんですね。でも、他方で管理する事業体というふうに書かれています。事業体であるということは、当然ある程度の利益が出てその利益が、例えば地震とか災害があった時に手元に利益が内部蓄積で蓄積されているから多少大損害を受けてもカバー出来るわけではないですか。或いは新しいお店を作ろうという場合でも、その為の投資の資金が獲得できる。つまりある程度の利益が出る事業体でなければ生協の職員にお金を払ったり、商品の取引先にお金を払ったりということも出来ないし、さらに未来に向けて投資をしたり、様々な災害に対する保険として使ったりということが出来なくなります。やっぱり事業体であるということは株式会社と同じような意味において、ちゃんと会計的に見れば利益が何%か出ていなければならない。もちろん利益を出すことが目的ではありませんので、株主であればアメリカの企業だったら10%の利益率なのに日本は3%、4%しかない、低いよという圧力がありますが、生協に対してはそんな圧力が世界比較で起こるわけではありません。国際比較でおこるわけがないという違いはありますが、生協もまた利益を出すことが求められるという点は共通点であると思います。
生協は不況に強い!…生協事業の特性
私はリーマン不況以降、地域生協も大学生協もなかなか経営が大変になってるということはよく存じ上げておりますが、敢えて皆さんに問題提起をしたいと思います。生協は本当は不況に強いはずなんです。もし弱いとしたら、それは生協の以下説明する強みが充分に発揮出来てない。生協がもっと生協だったら、こんな不況は吹っ飛ぶのではないですかというような話です。例えば、そのポイントは5つです。皆さんにお配りしたのは最後の組合員参加が無いと思います。この間いろいろ考えて、最初の会員制の説明だけでは組合員参加の意味が入らないので、新たに1つ追加していますからそれだけ見て下さい。会員制というのはどんなことかと言いますと、不特定多数に販売する場合であれば不況になったら知らない間に売り上げが落ちるわけですが、生協は違いますよね。協同購入・個配でも、毎週毎週同じ人に販売しているわけですよ。店舗に来る組合員も組合員で毎週毎週、毎日毎日利用してくれるわけですよ。特定の人に商品やサービスを供給しているわけですから、そういう特定の組合員との結びつきを深めていくことが出来れば不況には非常に強い、揺らがない事業になるはずです。組合員とのコミュニケーション、組合員の声に応えるということを通じで、組合員が何を望んでいるのかという、これは顧客知識と言いますが、そういった組合員についての知識、組合員についての情報をしっかり蓄積して、一人一人の組合員が「さすが生協、私のことよう分かってるなぁ」と思ってくれるような事業を展開したら、当然喜んだ組合員は他の組合員に「さすが生協やで。こんなええことあったんや」というふうに言ってくれると。そういうのが続けば当然不況に負けない生協事業になるはずなんですね。
次に2つ目に、組合員組織であることですよね。これは後でも出てきますので、ちょっと飛ばしましょうか。そういうふうに組合員が対話をする。組合員自身が生協を通じて工夫したりしたことを、さらに他の組合員に伝える。さらに、それを生協が学ぶ。生協と組合員、組合員と組合員、場合によっては生協を通じて組合員と取引先、そういったキャッチボールが、コミュニケーションが輪のように広がって行くということで生協の中ではテレビで広告をやっているから商品が売れるというような企業のメーカーのマーケティングの結果で物が売れるという売れ方ではなくて、組合員同士の組織だからこそ、生協でこれが評判になって売れるという売れ方です。これがここにいう対話による市場創造です。
2つ目の不況に強いポイントは日常の食を中心にしているということです。もし、宝石だとか高級ブランドだとかを相手にしてるところは、こんな不況期になって株価がダーンと下がったら、いわゆる富裕層、たくさんの株を持っているような人たちが物凄い割合で自らの金融資産を失っているのですね。もう2割とか3割という割合で失っていたりする。大損をしてしまっている人がいっぱいいるわけですよ。実際ミラノのブランドでアルマーニと3つぐらいありますが、その内の2つが確か銀座から撤退しましたよね。ですから、いよいよ日本でもブランド品が売れないという変化が起こってきて、そういうブランドのショップが日本から撤退するなんてことも起こってるというぐらい、この手の贅沢商品というのは、こういった不況気には大きなダメージを受けます。自動車もリーマンショック以降、売り上げが25%失うような状況で、大変な状況になりながら再建をしているところですよね。でも、日常の食ですよ。人間食べないわけにはいかないわけですよ。だから、食を中心としたビジネスをやってるということは凄く不況に強いはずなんですよね。
続いて組合員出資であること。先ほども申し上げましたが、株式会社であれば株主が鋭くチェックをします。その企業が儲かれへんとなったら株価が下がります。株価が下がれば資金調達が困難になると同時に他の企業や投資家ファンドから買収させられてしまうという、そういう懸念も出てきます。株式会社が上場するということは、そういうリスクを負うということも意味していて、ですから経営者は利益を上げることに、従業員の首切りをしてまでも利益を上げないと会社を守れない、そういうシビアな不況に立たされているのです。一般の市民、労働者の立場から見れば民間企業の多くが、この間派遣その他首切りをしていると、あの三越百貨店もついに早期退職優遇制度を始めたら、なんと4分の1位の人が募集に応じているという大変な首切りがどんどん展開されようとしているのですが、ナンセンスだというのも大事です。大事ですが、会社の経営者側からすればそこで首を切らなくて、利益が出なかったらその会社はだめになるのですね。株価が下がって資金繰りが出来なくなって投資が出来なくなって、結局どっかで吸収合併して救済してもらうということになるしかないという状況になりかねない。株式会社はそれぐらいダイナミックです。ところが生協は組合員が出資をしています。だれも生協を買い占めることは出来ませんし、誰も生協を売ることが出来ません。そして組合員は決して生協の利益率が低いからという理由で出資金を下げるということはないはずです。基本的には生協は組合員がお金を出してくれているということで安定しているのですね。不況だからと言って、銀行からの借り入れとかは大変かもしれませんが、資金調達面で特別な困難さが生まれるわけではない。そして生協ブランドというのがあります。皆さま方がこの大阪の地で生協の取り組みを進めてきた結果、やっぱり生協って安心安全だなと、先ほど大阪府の人も言っていましたが、そういったブランドがすでに出来ています。そういうブランドがあるから、信頼があるから、民間企業で商品開発をするから手伝ってくれと言われたら、じゃあいくら手当てをくれるんですかという話に当然なります。生協も最近はちょっとくらい出した方がいいかなということで出してくれる生協がないわけではないようですが、基本的には自分たちの生協ですから、もし面白い商品を作ろうという機会があるならいつでも応援するわよという感じではあります。組合員が主体的に参加して生協の場を自分の成長、自分の生きがいを感じる1つの重要な場、サードプレイスという言葉がありますね。  働く場と家庭、そして人間は家と会社の往復だけではだめなんですね、サードプレイス。つまり第3の領域、これは趣味でもいいし、地域活動でもいいし、そして生協活動でもいいと思いますが、この3つのバランスが取れてるということが、人間がバランスを取っていろんな繋がりの中で成長したり、あるいは自分の存在感を社会的に確認したりということに繋がるのだろうと思いますが、そういう場になっている。ですから不況で困った時に組合員が助けてくれる。組合員の知恵と行動力で打開するということも可能です。こういう意味で生協というのは非常に不況に強い特徴を持っているはずなんだろうというふうに思っています。
利益志向と社会志向
続いて「生協とは何か」という話をもう少し進めたいと思います。生協も先ほど申し上げたように事業体ですので、利益追求の組織ではないけれども利益追求を進める必要があり、そして、ややもすると利益追求の組織ではないのに経営者が利益追求ばかりを優先するようになる怖れというのはあります。従ってそこはしっかりと組合員が利益は大事だけれども、利益優先になっていないか?その区別は難しい点ですが、そこをしっかりと見極めて関わって行く必要があると思います。また、生協はそもそも私たちの暮らしを良くしようというところから始まっているので、一人一人の願いに答えるということをみんなの力で実現する。そして一人一人の生活を良くするということは、実は地域社会を変えて行く、大事にして行くということを抜きにはそうはならないという意味においては、一人一人の要求から出発していますが、同時にそれは社会的な問題解決の広がりを持っているというのが生協の特徴だろうと思います。純粋に言えば生協はNPOではありません。NPOというのは2つの要件が必要なんですね。1つは不特定多数を対象にしないといけないのです。生協は組合員という特定ですよね。不特定ではないという意味でNPOではないというふうに定義されますし、もう1つのNPOの定義は事業の結果得られた利益を関係者に還元してはならないというルールがありますが、生協は利用高割戻しとか出資配当という形で組合員に何らかのリターンバックがありますよね。あれをやると厳密な意味でのNPOの定義からは外れてしまいます。そういう意味ではNPO法人で言うところのNPO法人の定義に生協は値しないのですが、でも実質的には組合員の利益を大事にすると言っても、地域の多くの組合員の願いに答えるということは、地域の共通の暮らしの問題を解決しようとするという意味において、生協というのは極めて公益性が高い事業を進めようとしているというふうにも見ることが出来るだろうと思います。ということで、そもそもは組合員の利益を共同で実現しようということですが、それが同時に単に組合員だけの利益ではなくて、地域社会あるいは安全安心な社会システムというのを日本国内でも、そして国際的にも作って行こうという社会的な広がりを持っているというふうに見るべきなんだろうと思います。
生協の社会的活動
そのようなことで、皆さん自身が様々な分野でここにも挙げられているように、地域の事業者・団体と連携する、「食の安全」を追求する、消費者組織としての役割を発揮する、男女共同参画を推進する、子育てを支援する、家計活動やくらしの見直し活動、そして最近はお年寄りの介護だけではなくて、様々なご家庭のいろんなお悩みにお答えするようなそういった助け合いの活動ということが全国に広がっていますよね。さらに、今日から神戸でルミナリエがスタートするらしいのですが、私の記憶に間違いがなければ阪神大震災から15年くらいになるんですかね。やはり、あれを大きなきっかけにして日本でもボランティアというものの大事さが問われるようになりましたが、同時にあれをきっかけに生活協同組合が地域で何か大変な事が起こった時にどのようにその地域の危機に生協が貢献できるかということで、緊急物資協定を結んで生協の店舗や倉庫にある商品を供給したりするなどなどの取り決めがなされたり、あるいはユニセフとかピースアクションなどの平和の取り組みなどが広がるという形で、様々な社会的活動が広がっているということだと思います。
環境の取り組み
さらに地球温暖化の問題を中心に様々な環境の取り組みも進められている。進められていますが、もっともっと今後どうなるか、ほんとに25%という鳩山政権の公約、これがどうなって行くのかということは予断を許しません。コペンハーゲンで開かれるCOP15ですかね。この取り組みに関しては残念ながら国際合意には至らないのではないかという 話にはなっていますが、とにかく人類全体としては新しい大きな問題を掲げて、いろんな対立や利害はありますが、それを実現するためにはやって行かなくてはいけない。京都大学の総長は最近、「もうサステナビリティ、持続可能性なんていう認識は甘い。これはサバイバビリティ、地球と人類が生き残れるかどうかという挑戦課題なんだと、それぐらいのシビアな危機認識を持って市民も企業も、そして大学も全力を尽くして挑戦して行かなければ、我々21世紀、あるいは22世紀、次の世紀というふうに視野を広げてもいいかもしれませんが、未来は無いんだよ。」というふうに警鐘を鳴らしているというようなこともございます。
私たちの思い、志が問われている
少しここで話を変えましょう。これからの未来を考える為には、やはり一度頭をリセットして、これまでの先輩たちや自分たちがやって来た活動を踏まえながらも、未来志向で、つまり過去の延長線上で未来を考えるのではなくて、逆に未来に求められているものから現在何をするべきかということを考えるという、こういうリセットして未来から発想するというようなことも、新しい変革、新しい挑戦を進めていく上では重要だろうと思います。そういった意味で、私たちの思いや志が問われていると思います。この点ではビジョン、未来はこうあるべきだという自分たちなりの夢というものを一人一人の夢をみんなの夢にと共有して行って、その為に何をすべきか、何が問題なのか、何が障害なのかということをはっきりさせて、1歩1歩そのビジョンに近づいて行く。今、自動車を普通のように乗っていたり、携帯電話とかがあったりしますが、こういった私たちの今の生活を彩っているいろんなものが誰か最初に「こんなのがあったらいいのになぁ。」と夢を描いたから実現しているのですね。人類の進歩の原動力の1つは夢を見る力にあるのだと思います。そういう意味では今の生協の活動、今の生協の事業経営がそれなりに大変でそれなりに苦労していて、それを何とかやって行くだけでもいっぱいいっぱいということも他方あるでしょうけれども、同時にそれに留まるのではなくて、夢を見るといことを呼びかけさせていただきたいと思います。
ドラッカーの自己評価手法
それで、その夢を具体化するプロセスという意味では、このドラッカーという経営経済の非常にいろんな問題提起をした人がいます。ぜひ興味のある方は、結構NPOの役割についても問題提起をしている本もありますし、勿論マネージメント、経営についての本も出しています。これからの経済、社会がどう変わって行くかということについて洞察した本も出ています。ご興味が持たれるようでしたらぜひ見て頂けたら嬉しいなとも思います。このドラッカーの自己評価手法は大きく分けてこの4つの問いについてしっかりと分析して、しっかりと考えようと言っています。敢えて自己評価手法という名前が付いているのは、誰か偉い人に言われて修正するのではなくて、NPOが自ら変わって行くために、時代の変化に対応して新しい活動を始めるためにはNPOの役員、理事会が自らの活動を評価して見直すという形で変革を自ら行うというためのプログラムです。ですから自己評価なのですね。
まず、最初なのはミッション。「私たちは何をするのが目的なのか?」これを改めて考えよう。ミッションというのはころころと変わるものではありませんが、しかし時代の変化と共に見直さなければいけない面もありますよねというのが1つ目。2つ目はミッションを具体化する上で「これは誰を対象としているのか?」生協の場合であれば組合員ということになるのですが、組合員といっても、ご高齢の組合員をテーマにしているのか、それとも例えば子育て世代をテーマにしているのか、或いは大都市の組合員をテーマにしているのか、限界集落の組合員をテーマにしているのか、組合員といってもいろいろですよね。いろいろの組合員が、それぞれどういろいろなのかということを具体的に想定しないと、組合員を大事にするといっても抽象的、一般的で中身がないですよね。さらに、支援してくれる顧客、これは主に生協の職員とか取引先だと思います。さらに広げると地域社会との関わりでは地方自治体なんかも入って来るかもしれません。こういう生協と繋がりのある、生協の事業を担っている生協職員や生協の事業と関連する個人や組織、こういったものを支援してくれる顧客ということで広げて考える。そういった顧客が10年前20年前と今とで、或いはさらに10年後20年後、どういったふうに変化して行くのか?顧客の変化というものに対応出来ない組織は、せっかく使命はいいものであってもお役御免になってしまう。という意味で顧客について考えようというのが第2の問いです。第3が、その顧客は何を価値あるものと考えているのか、つまりニーズですね。やはり大都市部のニーズと限界集落のニーズは違うでしょう。或いは60歳代のニーズと70歳代のニーズは違うでしょう。もちろん子育て世代のニーズも違うでしょう。小学校に上がるぐらいのニーズと0歳1歳2歳を抱えてる人のニーズも違うと思います。そういうふうに細かく具体的にお客様は組合員は何を求めているのか、そして生協で働く職員は何で、極論を言うと安月給なのに頑張って生協の仕事をしてるのかと。彼らが何を望んでいるかということをちゃんと受け止めなければ生協の事業経営は回らないですよね。そういうふうに組合員、職員、その他の人たちが、やはり何を望んでるのかこれを大事にしないマネージメントはあり得ないというのが3つ目です。そして、マネージメントの基本はPlan・Do・Seeを回すことなんですが、Plan・Do・Seeで大事なのは実は最後のSeeです。成功したのかしなかったのか。成功したとすれば誰が頑張ったから成功したのか、成功しなかったとすれば誰が不真面目だったから成功しなかったのか、はっきりと黒白付けないと次の改善のきっかけにならないですよね。やっぱり事業が変わるということは、成果はなにか、成功してるのかしてないのかをはっきり言えないとだめなんです。ところが生協の活動や事業っていい事をやってるじゃあないですか。いい事をやってるんで、「今年も頑張った」という総括になるんですよ。これだと何にも変わらないんですよ。「頑張った」それでいいのかという話なんですよ。やっぱりちゃんと、何が成功で何が失敗なのかがはっきり黒白付けられるように、これは難しいんですよ。難しいけれど、そういう指標、そういう定義を自分たちでしっかり考えて、着実に事業が改善される。着実に生協がそのミッション・使命が具体化されて、地域社会の変化、組合員に対するお役立ちというレベルをアップして行く。そういうふうに繋げることが必要なんですね。ところが、多くの生協やNPOはいい事をやってるもんだから、「今年もよく頑張りました」という総括になってしまって、おいおいという感じの面がしばしばあるんだろうと思うんですね。こういった4つの問いについて考える事で抜本的に未来に向けて考えるきっかけになるだろうということで問題提起をさせていただきました。
現代社会
今日の現代社会と生協ということで、少し広げた話をしたいと思いますが、ここにも書かれていますように、現代社会はかなり大きな難問にぶち当たっています。とは言っても、世界史・日本史を丁寧に読めば、長い目で見れば人類あるいは私たち日本人の暮らしや社会というのは間違いなく良くなっている。昔は本当に悲惨な状況がいっぱいありましたから、そういう状況で見れば基本的には世の中は良くなっているという面があります。ありますが、一方でグローバリゼーション、市場原理主義、地球環境問題、貧困・格差・暴力、とにかく地域社会でも会社でも何となくギスギスして攻撃的でストレスが溜まって、メンタルヘルスですかね、鬱とかいろんな精神的な失調をしてしまう人が多いという、そういうちょっと暗い感じの世の中という面が強まっているのかなという状況があるように思います。そういう中で長い目で見たらそうでもないよねという意味では、まず歴史的に見て、基本的にはポジティブな面をしっかり見る必要があると思います。現在今起こっていることも、そういう歴史的な流れの中で考えてみて、マイナス面ばかりではない。例えばグローバル化、マイナス面ばかりではないです。市場主義、マイナス面ばかりではないです。プラスはあるんですね。もちろん反作用もあります。そういう状況の中で今私たちは何が出来るのか?生協は何が出来るか?ということを考えるという視点が必要だと思います。
ファブリーズによる新市場創造
1つの例を挙げましょう。「ファブリーズ」というのがあります。これは新しい市場を創造するという例でご紹介したいと思います。これはどういう商品かというと、もともとは布の匂いを取る商品だったんです。ということで、例えばペットをお飼いになってる人が、お家の中で猫を飼っている。そのペットの匂いでペットを包んでいるタオルとかが臭くなってしまうのでシュシュッとやる。そういうのに対応していた商品だったのですね。ところがそんなマーケットは小さいわけですよ。そこでファブリーズの関係者、日本のP&Gグループは考えました。実は消費者は別に臭いを消すことが好きではなくて、臭いのない布が欲しいと思っている。では、なぜ臭いのない布が欲しいと思っているのかというと、部屋の中に臭いのある布製品を無くすということはどういうことかと言うと、臭いがない部屋が欲しいから消したいわけですよ。つまりここで逆転が起こりました。室内の臭いは室内の布、例えばカーテンとか、あるいはファブリィック製のソファとか、あるいは衣類、こういった布が臭いを吸着してまた吐き出すということをやるから部屋の中にいやな臭いがこもってしまう、それを消してくれるという製品なんだ。だから布の臭いを取る製品なんだけど、部屋の臭いを取るということになるんだと、すり替えたというか位置づけを変えたのですね。そういうキャンペーンをやったらファブリーズは10倍ぐらいのマーケットサイズに大きくなるし、しかもファブリーズ以前にはそんな商品は存在しないわけですよ。トイレ用の消臭剤とか玄関用の消臭剤とかはありますが、ファブリーズのような商品はなかったので、以前のトイレ用消臭剤その他の売り上げにはほとんど影響を与えずに、ファブリーズの一人勝ちのように勝ったのですね。今は花王さんが類似ライバル商品を出してたりするので競争をしていますが、そういうふうにこの商品は全くそれ以前にはない切り口で私たちの生活を改善する提案をすることで新しい市場を繰り広げたケースです。
Wiiによる新市場創造
同じように任天堂Wii。これはゲーム機ですが、従来のゲーム機はどんどんマニアックになって行ったわけですよ。いかにボタンを速く叩けるかという、そんなのはゲームマニアの大学生か反射神経が敏捷な小学生じゃあないと楽しめないというレベルになっていたわけですよね。任天堂もその後追いをしていたので、ずっと業績が低迷してたのですが、任天堂はもともとファミコンとかスーパーマリオとかを開発してきたオリジナルのゲームについての愛と哲学がある会社です。「ソニーの後追いをしていることが任天堂が世界中の人たちに提案したいゲームの楽しさ、ゲームが作る幸せなのか?違うのではないか」と考えて、例えばゲームのコントローラを変えたのですね。私はこれは素晴らしいアイデアだと思いますね。だって考えてごらんなさい。釣りゲームをやるのに今までこうやっていたんですよ。釣りをやるならこうでしょ?野球やるのもこうやっていたんですよ。でも野球ならこうでしょ?こういう当たり前のナチュラルな動きで楽しめるようになったんですよ、任天堂のWiiというのは。さらに、この中にもやっている人がいるかもしれませんが、私の義理のお兄さんが自分の父母に任天堂を送ったらしいです。「なんで?」と聞いたら「wiiフィットで毎日健康管理してもらってるねん」とか言って、やっぱりあれを親孝行というんですか?親孝行として任天堂のWiiをプレセントしている家庭もある。実際、40代50代60代であれで一生懸命ヨガをやったりジョギングをやったり、あれでジョギングをやると楽しいんですよね。ライバルがいて抜いたり抜かれたりしますから、思わずかーっとなってテンションが上がるのですよ。そういうふうに、今までだとゲームだと思えなかったような、その前にもともと任天堂のDSでそういうことに成功してたというのは大きいですが、その結果高齢者が楽しむ。孫とお爺ちゃんお婆ちゃんが一緒に楽しむ。あるいは女性が楽しむというような、海外でも新しい楽しみ方が広がっています。今までのゲームとは違うという事で大ヒットしました。残念ながら大ヒットしたと言うのも今年になって売り上げが伸び悩んでいます。ちょっと今期これからの業績は?なんて言われていますが、一応リーマンショック以降も任天堂はこういう一人勝ちな戦略を取ることに成功しましたので、非常に高業績を続けているというのが特徴です。
Tokyo Disney Resort 
どんどん紹介したいと思いますが、東京ディズニーリゾート。これもテーマパークの中では一人勝ちしていますが、やっぱり大きいのは東京ディズニーリゾートにしかない特別な経験が出来るからですよね。あそこに行けば非日常的な、今の実世界のいろんなしがらみがあってしんどいのを全部忘れて、頭を空っぽにして楽しめるようなファンタジックなワールドがある。ファンタジックなワールドがあることの是非についても、いろんな議論がありうると思いますが、でもそれを1度味わうとまた味わいたいということで、リピーターになってしまう。そのために、例えば弁当の持ち込みを許さないというのも、そういうファンタジーワールドの雰囲気が壊れるからですよね。あそこでおにぎりを食べられたらどないなるんかという話ですわ。そういうことは認めない。同時にあそこで買ってもらうということで、TDRの儲けにも繋がっているという一石二鳥なわけですが。
IBM ガースナー改革
IBMというのは、もともとメインフレーム、パソコンを売っている会社ですが、今は違います。ITソリューションを通じて世界を変える取り組みをやるという戦略に変わっています。今はハードを売るのがメインではなくサービスを提供するためのセットとしてハードも取り扱うことがあるというサービス企業になりました。IBMが最近言っているのは「Smart Planet」です。ITの力を借りてよりスマートに、このスマートというのは賢いという意味ですね。賢くプラネット、つまり地球です。地球で私たちが生きていくといういろんな問題をITの力を利用してスマートに行こうということで、「スマートな水管理システム・スマートな電力供給網・スマートな交通システム・インテリジェントな油田システム・スマートな食料サプライチェーン・スマートな都市」ということで、ITを使ってバージョンアップ、そのお手伝いをするのがIBMだというふうに提案をしているわけで、非常に大きなテーマを掲げてやっています。日本のコンピュータ産業の多くはパソコンを作ってなんぼなんて言うビジネスモデルからなかなか脱却できないのと比べれば、このIBMの志の高さ、スケールの大きさの違いは、やっぱり注目すべきだろうと思います。
Google グーグル
さらにグーグルです。グーグルが恐ろしいのは後からお金はついて来るという発想なんですよ。日本のITベンチャーが駄目なのは最初から儲けようとするんですね。ですから本当につまらないビジネスしかしない。ところがグーグルは取りあえず多くの人が便利なツールというものをWebを通じて提供しよう。世界中にある情報に誰もが簡単にアクセス出来るという環境を作ろうという高い志を立てました。もちろんトラブっていますよ。ストリートビューって知ってますかね?これはグーグルは日本中を車で撮影してるんです。 なのでグーグルのマップのストリートビューのところを見ると、下手をすると皆さんのお家の車とかが写っていたり、ひどい場合は誰かと誰かがキスをしているのが写っていたりとかするのです。そういうのはプライバシーの侵害なので訴えたりすると、ちゃんと削除してくれるとなっていますが、ほんとにプライバシー侵害の何者でもないような情報提供をやっています。でも便利ですよ。地図を見るよりも360度その周りがどうなってるかの写真画像のある方がどれだけ便利か。もし皆さんが引っ越ししようとした時に、その周りがどんな感じかというのが行かなくてもズバリ分かるのですから凄い便利なんです。そういう情報をやっています。同ことで今作家たちが怒っていますが。世界中にある本をグーグルで検索出来るようにしようというサービスをどんどん展開しようとしています。これも今アメリカでちょっと司法省と裁判ではないですが、調整のプロセスに入っていて、どうなるかなという話です。いずれにしてもグーグルはそういうことをやって、そういう所にみんなが寄れば、そこに広告を載せることでビジネスになるだろうということで、後から利益はついてくるということでやっているのです。高い志を持ってビジネスをする事で、誰もが真似出来ないような便利なサービスをして一人勝ちをしています。と言っても日本ではヤフーが頑張っているので一人勝ちとは言えませんが、頑張っているという特徴があります。
Cause related marketing
続いて「Cause related marketing」というのも紹介したいと思います。この場合のCauseというのは社会問題を解決する運動とか組織のことを指すのですが、1例を挙げましょう。
Volvicというのは水を売ってるブランドですよね。日本ではこのキャンペーンをやって今年で3年目ぐらいですかね。今世界中で徐々に広げてるみたいですが、これはVolvicを売ってそれを買ったら、Volvicの売り上げの一部を、Volvicというのはダノングループですが、ユニセフに寄付します。そしてユニセフがアフリカに井戸を作ります。アフリカにはまだ安全ではない水、危険な水を飲んで乳幼児やお年寄りがなど体の弱いものがバタバタと死んでいるということで、基本的に死亡率が未だにやたらアフリカで高かったりする理由の1つは水がだめなのですね。ですから、ユニセフを通じてアフリカに井戸を作って、安全で清潔な水が飲めるようにする。売上1・につき10・の安全で清潔な水が提供できるというブログラムをユニセフと協力して進めますよというキャンペーンなんですよ。皆さん、どう思います?Volvicで儲けているんだったら、利益の1部をがつ~んと寄付したらええやんと見るかもしれません。でも、もう社会の問題は広く亘っているんですよ。社会の問題が解決しない最大の理由は、私たちが無知・無関心であることなんです。やっぱり、私たちがその問題を知る、その問題に関心を持つ、そして私たちが出来るところから1歩踏み出す。こういうことが世界中の人が進めるだけで、世の中がどれだけ変わるかということですね。そういう意味でVolvicは消費者に無理やり買わせるということを通じて、消費者を巻き込んで一緒にこの問題を知ってもらう、協力してもらうという動きを取っているわけです。消費者も自分たちがこれを知り、そして自分たちなりにこれを買うということで、応援できるということになってOKですよね。ユニセフはもちろんVolvicから定期的にこういう支援を受けて、アフリカの貧困問題の解決に貢献出来てOKですよね。Volvic はVolvicという水のブランドが単なる儲けの水のブランドではなくて、安全で清潔な水だというだけではなくて、アフリカの水問題の解決に繋がる、そういう社会的な問題を大事にするブランドだということで、ブランドイメージも上がって、売上も上がるというVolvicの会社としてもOKという、そういう社会問題と商売が両立するマーケティング。これをCause related marketingと言うんですね。そんなようなマーケティング手法というのも21世紀の新しいやり方なんだと思っています。
ジオ・サーチ㈱
ジオ・サーチという会社があります。もともと大手の企業から独立した人がやっているのですが、これは何をやっているのかと言いますと、地面の地下、特に大都市というのはビルをいっぱい建てたりいろんなことをした結果、中にある地下水が枯渇してしまって、地下水が通っていた穴がポッカリと空洞になっている。空洞になっているということは、その上をトラックが走っていて、ある日ドカンと地面が陥没する事故というのは東京では毎年あちこちで起こっているのです。そういうことを事前に知るためには、掘らずに地下に穴があるかどうか調べたらいいのですね。結局これってレーダーなんですよ。レーダーで地下の状況を調べるという独自の探査サービスで公共空間の安全を守りますというのは、地下に穴が空いているかどうかを上にある黄色い専用車で空洞を見つけるということを専門にしている会社です。この会社に1992年に地雷除去の国連の活動をやってるブラグデンさんというのがこの技術を対人地雷の除去に役立てないかと、皆さんご存じですよね。ノーベル平和賞も取りましたが、対人地雷というのが物凄くカンボジアで主に1970年代世界的に使われてしまったのですね。非常に憎むべき残忍性のあるもので、決して人は殺さないのですね。大体片足1本無くなるとかですね。それぐらいのダメージしか与えないものを、普通の民家と民家があるような間の道路に敷き詰めたりするのですよ。子どもたちが小学校に行くという途中で被害にあったりするので、まだ全然除去出来てないのですね。それで、それを除去するということで、また事故する人もいるのです。相手は地雷、爆弾ですから。そこを何とか安全に地雷除去するために、この路面下の空洞探査を本業としているジオ・サーチ㈱に協力を求めたのです。当然、国連ですからタダでやってねと頼まれたので、大変だと思ったのですが、社長が重要なことだと始めたので、周りの民間企業の社長だとか顧問に相談したら「これはいいことだから我々も応援するからやりなさい。」ということでやって行く。それで、社長もそうやって頑張っていたら、このジオ・サーチの従業員たちも「俺たちもボランティアで協力しようぜ。」ということになって、ジオ・サーチのまるで副業かのような形で、この地雷除去のための機械を作って、それを派遣するという事業を始めるのです。そして、それを本格的に進めるために「JAHDS(ジャッズ)」というNPOが作られたのです。つまり、ある会社の活動を通じでNPOが生まれてしまったというケースですね。だから、表で金を稼ぐのはジオ・サーチであって、社会活動をNPOでやっているみたいな両面作戦のような事例も出て来ているわけです。これも本業を通じて社会貢献に活かすというものが広がってしまってこうなったという例だと思います。
生協の戦略
続いて、今申し上げたように生協は利益を実現するという意味では経済性も重要ですが、21世紀の生協の有り様は、そのことと同時に先ほどの「ジオ・サーチ」と「ジャッズ」の例のように、いかに社会的に意味があるかということで価値を生みださなければ存在価値がない。そういうイノベーションを進めて行くことが課題であって、これは例えば1例を挙げているだけですが、やはり未来志向で新しい生協の事業や活動をいうことを広げなければいけないのだろうと思います。これは本当に1つの例ですので、やれと別に言っているわけではありませんから、そこは誤解されないようにして欲しいのですが、ある生協、これは「コープあいづ」ですから福島県の生協ですが、以前にそこの生協のトップの皆さんと話をした時に、「これだけ地方経済が深刻化している状況の下で、もっと安い商品を提供しなければ組合員に対するお役立ちにはならないのではないか。生協でも何とかディスカウント店が成立しないかどうか挑戦をしたいと思っているんだ。」というお話を伺ったことがあります。それを受けて始まったのがこれです。
(テレビニュース報道より)初年度は11億円の黒字を見込んでいます。…今年3月、会津若松市に生協としては全国で初めてになる「低価格専門店」がオープンしました。生協の他の店に比べて、平均で2割ほど値段が安いこの店ではオープン以来順調に売り上げを伸ばしています。その安さと人気の秘密を取材しました…集中的に単品を揃えることによってメーカーや問屋に価格をかなり安くしてもらえる。また、扱う商品の種類を通常の店舗より2割ほど減らしています。たまにしか売れない商品の取り扱いを止めてしまったことにより、商品を細かく補充する手間が省け、仕入れにかかるコストや時間を削減することが出来ます。売れ筋の順位で、ABCDEまでのランク分けをして、極端に言うとEやDはカットしてしまう。良く売れるものを大量に仕入れる、この方法で魚や肉、野菜などの生鮮食料品も安く販売しています。・・・低価格専門店を作ったコープあいづは、会津地域に8つの店舗を展開しています。しかし長引く不況を受けて、お店での1人あたりの購入金額は年々減っていました。少しでも生活費を抑えたいというのが消費者の本音。そんな声に答えるため、中でも売り上げが落ち込んでいた「にいでら店」をいい品を安く買える「低価格専門店」に作り変えたのです。「『暮らしを応援するというだけでなく、暮らしを守る』というようなお店を作れないかということで、毎日実際に生活で買い物をした場合に、今まで3万円かかったのが2万5千円ぐらいで家計を守れるというようなお店にしたい。」
これをお見せしたのは、これをやれと言っているわけではなくて、いずれにしても「コープあいづ」でも、これをやることのメリット・デメリットがあるわけです。今、ちょっと見ただけでも分かるように、品揃えをかなり絞っていますので、「これが欲しいんだ」という組合員のご期待には「申し訳ない!」と言って断っています。さらに、今まで夜の10時までやっていたのですが、そうするとパートを2回用意しなければいけないということで人件費が増えてしまうので、「夜の7時で閉めますよ。ごめんなさい!」というようなわけですよ。そういう無茶苦茶なことをやって、何とか経営も成り立つし、値段もかなり下げられるというやり方をしているわけで、これが組合員のニーズに応えられるベストな事かというのは別です。でも、こういうふうに新しい挑戦を始めなければ、時代が変わる中で組合員の本当に期待に応える生協にならないということです。そういう挑戦が、これまでの延長線上にない新しい発想での挑戦が始まっているという例として受け止めていただければと思います。
時間も来ているようでございますので、私の問題提起とさせていただきます。どうも、ご静聴ありがとうございました。