大阪府の第2期地域福祉支援計画
~セーフティネットの再構築に向けて~
[講師]
大阪府福祉部地域福祉推進室 地域福祉課 企画調整グループ 課長補佐
辻 輝 昭 氏
みなさん、おはようございます。私はただ今ご紹介にあずかりました大阪府福祉部地域福祉課の辻でございます。本日はこちらの表題にございます通り大阪府の「第2期地域福祉支援計画―セーフティネットの再構築に向けて」ということで30分少々お時間をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
<地域福祉の理念>
こちらの資料の2ページというところをご覧になっていただきたいと思います。パワーポイントの資料の2ページ分を1ページに落とし込んでいるのですが、2ページの下の段の「第1章地域福祉の理念」ということで、5月以降の流れをこちらの方に記載しております。実は私が地域福祉課に配属されましたのが、この4月でございまして、8年間福祉部から離れておりました。ちょうど平成12年7月というのが介護保険制度が導入されたということで、従前の福祉制度というのが措置から契約に移行した時に、私は当時の健康部健康福祉総務課というところに在籍しておりまして、平成14年3月まで福祉におりました。当時、大田府政ということで、民間企業との交流を積極的に進めようという動きがありまして、私はそのあと平成14年、15年と民間企業の方に派遣をされておりました。そのあと生活文化部の私学課というところで幼稚園行政に携わりまして、認定こども園制度の創設というものにも携わってまいりました。あと平成19年、20年、21年の3カ年は水道部というところに在籍しておりまして、大阪市水道局との統合協議というのを担当しておりましたが、残念ながら大阪市との統合は実現しませんでしたが、本日の朝日新聞にも載っておりますように、大阪市を除く42市町村で企業団を作るということが合意されたというようなことも手掛けておりました。実際にこの8年間福祉を離れている間に福祉の変革があったと、その中で特に今日お話しさせていただきます「地域福祉分野」におきましては、特に大きな時代の流れの中で変化があったのかなあというふうに感じております。
それでこの2ページのところなんですが、平成12年の5月に「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する法律」というのが出されました。下にありますように、新しい法律の名称は「社会福祉法」という形になりますが、この中で2つ大きな事項が載せられております。「地域福祉の推進」ということと「市町村地域福祉計画・都道府県地域福祉支援計画の策定」というものが位置づけられまして、都道府県は地域福祉支援計画というものを策定するということが義務づけられまして、大阪府の方でもこういった計画を作っています。今日お配りしているこの資料は、この計画を抜粋したものなんですが、大阪府のホームページから全部取り出せますので、また時間があればご覧になっていただきたいと思います。それでこの社会福祉法の新たな制定に伴いまして、大阪府としましてもこの地域福祉支援計画というものを作らないといけないということになりまして、こちらに記載の通り平成13年7月に大阪府社会福祉審議会に諮問をし、平成14年9月に大阪府社会福祉審議会の答申を得まして、平成15年の3月にこの現行計画の前の計画ですね。第1期の大阪府地域福祉支援計画というものが策定されました。それで今日説明させていただくこちらの計画ですが、第2期計画ということで、計画期間が平成21年度~25年度までの5カ年を対象としました第2期大阪府地域福祉支援計画というものを平成21年3月に策定したところでございます。
次に3ページの上の段をご覧になっていただきたいのですが、そこに「地域福祉推進に向けた3つの視点」というものが掲げられております。まず1つ「人権の尊重」というところなんですが、これは一人一人の人権を最大限に尊重するということです。それから2つ目ですが「ソーシャルインクルージョン」、これは地域で課題を抱えて困難な状況に陥っている人の存在を認識して、同じ社会の構成員として包み支え合うという考え方です。3つ目が「ノーマライゼーション」、これはすべての人が地域で自分の意思で当たり前の日常生活が送れる社会を実現するということを目指しております。この3つの視点を基に大阪府としてこの第2期大阪府地域福祉支援計画を策定いたしました。この3つの視点を実現していくために、どういった取り組みを誰が進めていくのかということなんですが、下に書いてありますが、市町村・民間団体・地域住民・大阪府ということで掲げております。まず市町村ですが、これは当たり前なのですが住民にもっとも近い基礎的自治体ということでございまして、利用者の立場に立った福祉サービス提供体制の整備でありますとか、住民福祉活動の推進というのをやっていいただくのが市町村の役割ということです。あと行政だけではなかなか地域福祉というのを推進していくのが難しい部分がございますので、民間団体さんでありますとか地域住民の方々にもいろんな形でこの地域の福祉活動に関わっていただくということをこちらの計画書の方に載せています。それで大阪府は広域的な自治体として、なかなか市町村単体では取り組むことが難しい事業でありますとか、広域的専門的な分野に特化して市町村を支援していくという役割分担をして本計画を進めていくということにしております。
<計画策定の趣旨>
3ページの下の段を見ていただきたいのですが、「計画策定の趣旨」という欄がございます。これも全国的に同じことが言えるのですが、大阪府における65歳以上の人口の推移ということを載せているのですが、この線グラフが右肩上がりになっておりますように、大阪府に於きましては推計ですが平成27年度に65歳以上の高齢者の割合というのは27.6%に達すると見込まれておりまして、全国平均を上回ることが予想されています。他府県に比べて急速に高齢化が進展するということが予想されている状況でございます。急速な高齢化の状況と合わせて、要介護認定者数でありますとか、一人暮らしの高齢者、それから高齢者だけの夫婦世帯などの増加が見込まれているところでございます。
次に4ページをご覧になっていただきたいのですが、4ページの上の方に図が出ております。これが大阪府の地域福祉支援計画の概念図というふうに捉えていただければと思います。先ほど説明させていただきましたように、住民の身近な立場で活動する市町村と広域的専門的な立場で活動する大阪府というものがまず連携して行き、当然のことながら民間団体の皆さんであるとか地域住民の皆さんとも共同して行って地域福祉の推進というのを進めていくという概念図がこちらの方でございます。そして、4ページ上の表の下の2つ目の■のところに書いてありますように、この計画は平成21年度から25年度までの5年間なんですが、来年度の23年度が中間年にあたりますので見直し・点検等を計っていく予定にしております。
図1
<地域福祉施策の推進方策>
次に4ページの下をご覧になっていただきたいのですが、「地域福祉施策の推進方策」ということでございます。計画の目標というところで3点記載をしております。この計画の目標は、(1)誰もが困った時に身近なところで支援を受けられる地域社会。(2)誰もが地域と「つながり」を持ち、ともに支え、支えられる地域社会。(3)さまざまな団体の連携で地域福祉が展開されている地域社会。こういったものを目指して行くということで、この目的に到達するために、下に「地域福祉施策方向性」ということで4つの柱を立てまして、この柱立てを基に地域福祉施策を推進していくということで現在取り組んでいるところです。
5ページをご覧になっていただきたいのですが、点線で囲っていて黒くなっているところに、日常生活圏域という表記があると思いますが、これはイメージとしては小学校区を想定しております。小学校区の中で点線の四角の中を見ていただきますと、左の方に校区福祉委員(社協)とありますが、これはだいたい小学校区に設置されています。校区福祉委員さん、地域の見守りとかをされている方々、それから自治会、民生委員、児童委員、隣保館、右の方に行っていただきますと、地域住民の方とかボランティア、NPOや社会起業家等々の、地域に一番密着したところで行われる活動をだいたい日常生活圏域と位置付けています。その右上のところに黒く囲ってサービス圏域とありますが、だいたいこれは中学校区を想定しておりまして、このレベルなりますと、黒い点線で囲っているところのすぐ上ぐらいに「地域福祉のコーディネーターとしての役割が期待される機関」という表示があります。基本的には小学校区単位でいろんな地域の福祉課題等が顕在化してくるかと思うのですが、地域で解決できる問題はこの日常生活圏域で解決していただくということになるのですが、なかなか地域だけでは解決できないような課題というのをこの中学校区で開示されております地域包括支援センターとか、いきいきネット相談支援センター(CSW)、あと街かどデイハウス等々の専門員等がそういった相談に応じて必要な機関に繋いでいくという役割を担っているということです。もう1つ上の方になりますと、もう市町村域という形になります。その上になりますと大阪府域ということで、大阪府域までなりますと広域的・専門的な支援ということが中心になります。大阪府域のところで見ますと保健所でありますとか、子ども家庭センターでありますとか、大阪府社会福祉協議会等々がそういった役割を担っていくのかなということで、大阪府の地域福祉のセーフティネットのイメージ図というのがこちらの方になっております。
図2
それから5ページの下ですが、上のところが大阪府の地域福祉のセーフティネットのイメージ図なんですが、それぞれに対してどういった取り組みをやっていくのかということなんですが、まず①にあります市町村における地域福祉のコーディネーター関係事業の取組み支援というところがございます。その中で下の◇2つですが、平成10年から実施しています小地域ネットワーク活動等の先進事例、先ほど申し上げました小学校区で活動されています事業等の先進事例というものを我々が集めまして、市町村に随時情報提供しているのですが、地域でいろいろ活動されていても、それが他のところになかなかフィードバックされないという事象が出て来ましたので、各市町村で取り組んでいる事例で特に非常に効果的なものを取りまとめて市町村の方に提供して行って活用していただくというような事業。あと下にあります、市町村が配置するCSW等の資質向上を図るための新任・現任研修の実施ということなんですが、先ほどこちらの図で見ていただいたサービス圏域で中学校域を想定しておりますが、その中に上の段の左から2つ目に「いきいきネット相談支援センター(CSW)」という記載があります。これは何かと言いますと、CSWというのは地域でいろんな課題を抱えておられる方を発見して必要な機関につないでいく、福祉支援をしていくという役割を担っていただくコミュニティーソーシャルワーカーというものなんですが、今府内の市町村には配置されているのですが、我々としては中学校区に一人は配置したいという形でこの事業を進めているところです。それで、そういった方々の資質向上を図るための研修等を実施しております。
次は6ページの方なんですが、この地域福祉施策の推進方策としては民生委員・児童委員さんはまさに地域の住民の方々との接点が非常に多いという職種でありますので、活動がしやすい環境づくりや、その下の③の地域の要援護者を把握し、支援するための取組みの促進といったものを進めています。
<市町村支援>
それで7ページの方をご覧になっていただきまして、大きな柱立てとしまして地域福祉を推進していくために大きな力を発揮していただく必要がある「市町村支援」というところなんですが、現在大阪府の市町村におきましては、この地域福祉計画というものを策定して地域福祉の向上というものに取組んでいるのですが、大阪府の方としましても計画策定をされる市町村といろいろ協議しながらサポートしていくというような取組みを進めております。7ページの下の欄を見ていただきたいのですが、今まで大阪府の市町村支援というのは大抵補助金というような形で執行するようなケースが一般的でありました。保持金の場合は、こういう事業をやればその事業に対して何割か大阪府が負担しますよというような形で、かなり使い道を限定したものになっておったのですが、平成21年度から「地域福祉・子育て支援交付金」と改めました。今までの補助金との違いというのは、地域福祉の分野でありましたら、市町村の地域福祉計画、子育ての分野でありましたら子育て関係の計画に掲載されている事業であれば、どの事業をやるのかというのはすべて市町村の判断に任されると、いくら使うのかということもすべて市町村に任せるということです。大阪府の方からは一定額を交付して、使い道については市町村で全部考えていただくというような制度に切り替えたところです。平成21年度はこちらに記載がありますように、20億7千3百万円。これは政令市・中核市を除いた地域に交付したところでございます。これは福祉の分野に限らず、補助金というのは使い道が限定されているとなかなかその自治体の創意工夫が活かせないというような部分がありますので、おそらく将来的には補助金から交付金への流れというのは加速するのではないかなというふうに考えております。
図3
<地域福祉・福祉サービスの担い手づくり>
続きまして8ページをご覧になっていただきたいのですが、8ページからは「地域福祉・福祉サービスの担い手づくり」というような項目で1つは地域福祉を支えるこれからの担い手の確保ということ、2つ目は社会起業家の育成・支援というこの2本が示されております。それで、この2番目の社会起業家いうのは何なのかということなんですが、基本的にはこれまで地域の福祉というのは行政が中心にやっていました。今は地域住民の方々やNPOの方々、民間団体の方々等と一緒になって地域福祉の課題解決にあたっているのですが、これをビジネス的な手法を用いて地域の福祉課題を解決する方法があるのではないかということで社会起業家というような方々が現に現れています。我々はそういった方々に対して、地域の福祉課題を解決しつつビジネス的手法を用いて地域の活性化につなげていただくというようなことを目的にしまして、この社会起業家の育成というのに取組んでいまして、事業を立ち上げる時に一定の助成を福祉基金の方から行っております。実は本日この社会起業家の申請をされている方々のプレゼンテーションが午後からあるということで、私も参加させていただくことになっております。それで9ページの右上の方を見ていただけたらと思うのですが、ビジネス的手法を用いて地域の福祉課題を解決するということがスムーズに行けばいいのですが、社会起業家として事業をやっていこうという方々もノウハウがあればいいのですが、なかなかしんどい部分にぶち当たるということもよくあります。この左上のところに「中間支援組織プラットホーム」というのがあるのですが、この社会起業家を支える民間団体さんというものと大阪府も関与しているのですが、あとコネクター機関というのがここにありますが、これは市町村社協さんの協力も得ながら社会起業家を支援していくというような事業で、今取組んでいるところです。どんな事業があるかと言いますと、例えば病児保育というのがなかなか行政の分野でも進んでないようなところがありますし、あとは最近よく話題になります、ゴミ屋敷とまではいかないですが高齢になってきて物の整理がなかなか難しいというような方が見受けられ、放っておくと将来的にゴミ屋敷になる可能性があるということがありまして、それを事前に防ぐために、例えばそういった方々の不用品を販売して、当然その利益は社会起業家の方にも行きますし、その方の利益にもなるというような、制度の隙間をビジネス的な手法でなんとかカバーして行くというような方々を支援していくような取組みをしているところでございます。
<地域での自立生活を支える福祉基盤づくり>
それではページをめくっていただいて11ページなんですが「大阪後見支援センター(あいあいねっと)の再構築」というふうに書かれています。この大阪後見支援センターと言いうのは何をやっているところかということなんですが、これは日常の福祉サービスなんかを受けられて、いろんな困り事であるとか、いろんなトラブルでありますとか、そういったことの相談を受け付けるようなところなんですが、下に相談体制のイメージ図というのが書いてあります。
図4
大阪後見支援センターは、いろんな福祉の苦情解決に頑張っていただいている機関なんですが、次の12ページをご覧になっていただきたいのですが、この大阪後見支援センターで今大阪府とともに取組んでいますのが、この成年後見についてです。この成年後見制度ですが、2000年に民法の改正が行われまして創設された制度ですが、判断能力を失った方の財産管理でありますとか、診療看護を担う方々を後見人と言いますが、こちらの表にありまように、その後見人は親族の方がだいたい7割で、第三者が3割という形になっています。今非常に大きな課題になっておりますのは、親族の方がおられても遠方に住んでおられるとか、ほとんど疎遠な状態になっている方々が実際に増えていまして、その場合は第三者、弁護士さんとか司法書士さんとか社会福祉士さんとか専門の方に就いていただくというパターンが多いのですが、専門職の方々に就いていただくということになりますと、当然報酬の問題というのが発生します。なかなか所得の問題等から報酬を支払えないというような方については国の方で助成制度はあるのですが、現在この成年後見の利用者というのはかなり増えていまして、なかなか弁護士さん司法書士さん等の専門職では追いつかないという現状でございます。それで現在、大阪府と大阪後見支援センターの方と協力して、一般の市民の方々に後見人になってもらうことは出来ないかという検討を始めています。これは、大阪市はもうすでに平成19年から「市民後見人の養成」というのを始めていまして、約120名の方を養成されまして、現在30数名がもう受任されているというような状況です。これについては全国的な統一の制度ということを国は検討しているようなのですが、まだ全国的な統一の制度というのはございません。大阪府の方としましては大阪後見支援センターと協力して行って、あと大阪市さんの力もお借りしまして、この市民後見人の養成というのに取組みたいというふうに考えております。
途中少し走りましたが、大阪府のこの地域福祉支援計画の方は、あくまで市町村でありますとか、住民の方々でありますとか、民間団体さん等を支援していく大くくりの計画になります。それぞれの地域福祉の実働部隊である市町村の方でも、これに類した計画を作りまして具体的な施策を進めて行っているところです。それで、大阪府の方も財政状況も非常に厳しいということで、これは福祉だけではなくてどの分野もそうなんですが、なかなか財政状況が厳しい中で効率的になんとか事業推進して行かなくてはならないというのが、今我々に課せられている大きな課題でありまして、新規事業の立ち上げというのも非常に厳しいというところがあるのですが、最後に申し上げました「市民後見人の養成」というのは、是非とも取組んでいきたいものというふうに考えております。
時間が押しているようですので、私からの説明は以上で終わらせていただきます。どうも、有難うございました。
大阪府の第2期地域福祉支援計画
~セーフティネットの再構築に向けて~
[講師]
大阪府福祉部地域福祉推進室 地域福祉課 企画調整グループ 課長補佐
辻 輝 昭 氏
みなさん、おはようございます。私はただ今ご紹介にあずかりました大阪府福祉部地域福祉課の辻でございます。本日はこちらの表題にございます通り大阪府の「第2期地域福祉支援計画―セーフティネットの再構築に向けて」ということで30分少々お時間をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
<地域福祉の理念>
こちらの資料の2ページというところをご覧になっていただきたいと思います。パワーポイントの資料の2ページ分を1ページに落とし込んでいるのですが、2ページの下の段の「第1章地域福祉の理念」ということで、5月以降の流れをこちらの方に記載しております。実は私が地域福祉課に配属されましたのが、この4月でございまして、8年間福祉部から離れておりました。ちょうど平成12年7月というのが介護保険制度が導入されたということで、従前の福祉制度というのが措置から契約に移行した時に、私は当時の健康部健康福祉総務課というところに在籍しておりまして、平成14年3月まで福祉におりました。当時、大田府政ということで、民間企業との交流を積極的に進めようという動きがありまして、私はそのあと平成14年、15年と民間企業の方に派遣をされておりました。そのあと生活文化部の私学課というところで幼稚園行政に携わりまして、認定こども園制度の創設というものにも携わってまいりました。あと平成19年、20年、21年の3カ年は水道部というところに在籍しておりまして、大阪市水道局との統合協議というのを担当しておりましたが、残念ながら大阪市との統合は実現しませんでしたが、本日の朝日新聞にも載っておりますように、大阪市を除く42市町村で企業団を作るということが合意されたというようなことも手掛けておりました。実際にこの8年間福祉を離れている間に福祉の変革があったと、その中で特に今日お話しさせていただきます「地域福祉分野」におきましては、特に大きな時代の流れの中で変化があったのかなあというふうに感じております。
それでこの2ページのところなんですが、平成12年の5月に「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する法律」というのが出されました。下にありますように、新しい法律の名称は「社会福祉法」という形になりますが、この中で2つ大きな事項が載せられております。「地域福祉の推進」ということと「市町村地域福祉計画・都道府県地域福祉支援計画の策定」というものが位置づけられまして、都道府県は地域福祉支援計画というものを策定するということが義務づけられまして、大阪府の方でもこういった計画を作っています。今日お配りしているこの資料は、この計画を抜粋したものなんですが、大阪府のホームページから全部取り出せますので、また時間があればご覧になっていただきたいと思います。それでこの社会福祉法の新たな制定に伴いまして、大阪府としましてもこの地域福祉支援計画というものを作らないといけないということになりまして、こちらに記載の通り平成13年7月に大阪府社会福祉審議会に諮問をし、平成14年9月に大阪府社会福祉審議会の答申を得まして、平成15年の3月にこの現行計画の前の計画ですね。第1期の大阪府地域福祉支援計画というものが策定されました。それで今日説明させていただくこちらの計画ですが、第2期計画ということで、計画期間が平成21年度~25年度までの5カ年を対象としました第2期大阪府地域福祉支援計画というものを平成21年3月に策定したところでございます。
次に3ページの上の段をご覧になっていただきたいのですが、そこに「地域福祉推進に向けた3つの視点」というものが掲げられております。まず1つ「人権の尊重」というところなんですが、これは一人一人の人権を最大限に尊重するということです。それから2つ目ですが「ソーシャルインクルージョン」、これは地域で課題を抱えて困難な状況に陥っている人の存在を認識して、同じ社会の構成員として包み支え合うという考え方です。3つ目が「ノーマライゼーション」、これはすべての人が地域で自分の意思で当たり前の日常生活が送れる社会を実現するということを目指しております。この3つの視点を基に大阪府としてこの第2期大阪府地域福祉支援計画を策定いたしました。この3つの視点を実現していくために、どういった取り組みを誰が進めていくのかということなんですが、下に書いてありますが、市町村・民間団体・地域住民・大阪府ということで掲げております。まず市町村ですが、これは当たり前なのですが住民にもっとも近い基礎的自治体ということでございまして、利用者の立場に立った福祉サービス提供体制の整備でありますとか、住民福祉活動の推進というのをやっていいただくのが市町村の役割ということです。あと行政だけではなかなか地域福祉というのを推進していくのが難しい部分がございますので、民間団体さんでありますとか地域住民の方々にもいろんな形でこの地域の福祉活動に関わっていただくということをこちらの計画書の方に載せています。それで大阪府は広域的な自治体として、なかなか市町村単体では取り組むことが難しい事業でありますとか、広域的専門的な分野に特化して市町村を支援していくという役割分担をして本計画を進めていくということにしております。
<計画策定の趣旨>
3ページの下の段を見ていただきたいのですが、「計画策定の趣旨」という欄がございます。これも全国的に同じことが言えるのですが、大阪府における65歳以上の人口の推移ということを載せているのですが、この線グラフが右肩上がりになっておりますように、大阪府に於きましては推計ですが平成27年度に65歳以上の高齢者の割合というのは27.6%に達すると見込まれておりまして、全国平均を上回ることが予想されています。他府県に比べて急速に高齢化が進展するということが予想されている状況でございます。急速な高齢化の状況と合わせて、要介護認定者数でありますとか、一人暮らしの高齢者、それから高齢者だけの夫婦世帯などの増加が見込まれているところでございます。
次に4ページをご覧になっていただきたいのですが、4ページの上の方に図が出ております。これが大阪府の地域福祉支援計画の概念図というふうに捉えていただければと思います。先ほど説明させていただきましたように、住民の身近な立場で活動する市町村と広域的専門的な立場で活動する大阪府というものがまず連携して行き、当然のことながら民間団体の皆さんであるとか地域住民の皆さんとも共同して行って地域福祉の推進というのを進めていくという概念図がこちらの方でございます。そして、4ページ上の表の下の2つ目の■のところに書いてありますように、この計画は平成21年度から25年度までの5年間なんですが、来年度の23年度が中間年にあたりますので見直し・点検等を計っていく予定にしております。
図1
<地域福祉施策の推進方策>
次に4ページの下をご覧になっていただきたいのですが、「地域福祉施策の推進方策」ということでございます。計画の目標というところで3点記載をしております。この計画の目標は、(1)誰もが困った時に身近なところで支援を受けられる地域社会。(2)誰もが地域と「つながり」を持ち、ともに支え、支えられる地域社会。(3)さまざまな団体の連携で地域福祉が展開されている地域社会。こういったものを目指して行くということで、この目的に到達するために、下に「地域福祉施策方向性」ということで4つの柱を立てまして、この柱立てを基に地域福祉施策を推進していくということで現在取り組んでいるところです。
5ページをご覧になっていただきたいのですが、点線で囲っていて黒くなっているところに、日常生活圏域という表記があると思いますが、これはイメージとしては小学校区を想定しております。小学校区の中で点線の四角の中を見ていただきますと、左の方に校区福祉委員(社協)とありますが、これはだいたい小学校区に設置されています。校区福祉委員さん、地域の見守りとかをされている方々、それから自治会、民生委員、児童委員、隣保館、右の方に行っていただきますと、地域住民の方とかボランティア、NPOや社会起業家等々の、地域に一番密着したところで行われる活動をだいたい日常生活圏域と位置付けています。その右上のところに黒く囲ってサービス圏域とありますが、だいたいこれは中学校区を想定しておりまして、このレベルなりますと、黒い点線で囲っているところのすぐ上ぐらいに「地域福祉のコーディネーターとしての役割が期待される機関」という表示があります。基本的には小学校区単位でいろんな地域の福祉課題等が顕在化してくるかと思うのですが、地域で解決できる問題はこの日常生活圏域で解決していただくということになるのですが、なかなか地域だけでは解決できないような課題というのをこの中学校区で開示されております地域包括支援センターとか、いきいきネット相談支援センター(CSW)、あと街かどデイハウス等々の専門員等がそういった相談に応じて必要な機関に繋いでいくという役割を担っているということです。もう1つ上の方になりますと、もう市町村域という形になります。その上になりますと大阪府域ということで、大阪府域までなりますと広域的・専門的な支援ということが中心になります。大阪府域のところで見ますと保健所でありますとか、子ども家庭センターでありますとか、大阪府社会福祉協議会等々がそういった役割を担っていくのかなということで、大阪府の地域福祉のセーフティネットのイメージ図というのがこちらの方になっております。
図2
それから5ページの下ですが、上のところが大阪府の地域福祉のセーフティネットのイメージ図なんですが、それぞれに対してどういった取り組みをやっていくのかということなんですが、まず①にあります市町村における地域福祉のコーディネーター関係事業の取組み支援というところがございます。その中で下の◇2つですが、平成10年から実施しています小地域ネットワーク活動等の先進事例、先ほど申し上げました小学校区で活動されています事業等の先進事例というものを我々が集めまして、市町村に随時情報提供しているのですが、地域でいろいろ活動されていても、それが他のところになかなかフィードバックされないという事象が出て来ましたので、各市町村で取り組んでいる事例で特に非常に効果的なものを取りまとめて市町村の方に提供して行って活用していただくというような事業。あと下にあります、市町村が配置するCSW等の資質向上を図るための新任・現任研修の実施ということなんですが、先ほどこちらの図で見ていただいたサービス圏域で中学校域を想定しておりますが、その中に上の段の左から2つ目に「いきいきネット相談支援センター(CSW)」という記載があります。これは何かと言いますと、CSWというのは地域でいろんな課題を抱えておられる方を発見して必要な機関につないでいく、福祉支援をしていくという役割を担っていただくコミュニティーソーシャルワーカーというものなんですが、今府内の市町村には配置されているのですが、我々としては中学校区に一人は配置したいという形でこの事業を進めているところです。それで、そういった方々の資質向上を図るための研修等を実施しております。
次は6ページの方なんですが、この地域福祉施策の推進方策としては民生委員・児童委員さんはまさに地域の住民の方々との接点が非常に多いという職種でありますので、活動がしやすい環境づくりや、その下の③の地域の要援護者を把握し、支援するための取組みの促進といったものを進めています。
<市町村支援>
それで7ページの方をご覧になっていただきまして、大きな柱立てとしまして地域福祉を推進していくために大きな力を発揮していただく必要がある「市町村支援」というところなんですが、現在大阪府の市町村におきましては、この地域福祉計画というものを策定して地域福祉の向上というものに取組んでいるのですが、大阪府の方としましても計画策定をされる市町村といろいろ協議しながらサポートしていくというような取組みを進めております。7ページの下の欄を見ていただきたいのですが、今まで大阪府の市町村支援というのは大抵補助金というような形で執行するようなケースが一般的でありました。保持金の場合は、こういう事業をやればその事業に対して何割か大阪府が負担しますよというような形で、かなり使い道を限定したものになっておったのですが、平成21年度から「地域福祉・子育て支援交付金」と改めました。今までの補助金との違いというのは、地域福祉の分野でありましたら、市町村の地域福祉計画、子育ての分野でありましたら子育て関係の計画に掲載されている事業であれば、どの事業をやるのかというのはすべて市町村の判断に任されると、いくら使うのかということもすべて市町村に任せるということです。大阪府の方からは一定額を交付して、使い道については市町村で全部考えていただくというような制度に切り替えたところです。平成21年度はこちらに記載がありますように、20億7千3百万円。これは政令市・中核市を除いた地域に交付したところでございます。これは福祉の分野に限らず、補助金というのは使い道が限定されているとなかなかその自治体の創意工夫が活かせないというような部分がありますので、おそらく将来的には補助金から交付金への流れというのは加速するのではないかなというふうに考えております。
図3
<地域福祉・福祉サービスの担い手づくり>
続きまして8ページをご覧になっていただきたいのですが、8ページからは「地域福祉・福祉サービスの担い手づくり」というような項目で1つは地域福祉を支えるこれからの担い手の確保ということ、2つ目は社会起業家の育成・支援というこの2本が示されております。それで、この2番目の社会起業家いうのは何なのかということなんですが、基本的にはこれまで地域の福祉というのは行政が中心にやっていました。今は地域住民の方々やNPOの方々、民間団体の方々等と一緒になって地域福祉の課題解決にあたっているのですが、これをビジネス的な手法を用いて地域の福祉課題を解決する方法があるのではないかということで社会起業家というような方々が現に現れています。我々はそういった方々に対して、地域の福祉課題を解決しつつビジネス的手法を用いて地域の活性化につなげていただくというようなことを目的にしまして、この社会起業家の育成というのに取組んでいまして、事業を立ち上げる時に一定の助成を福祉基金の方から行っております。実は本日この社会起業家の申請をされている方々のプレゼンテーションが午後からあるということで、私も参加させていただくことになっております。それで9ページの右上の方を見ていただけたらと思うのですが、ビジネス的手法を用いて地域の福祉課題を解決するということがスムーズに行けばいいのですが、社会起業家として事業をやっていこうという方々もノウハウがあればいいのですが、なかなかしんどい部分にぶち当たるということもよくあります。この左上のところに「中間支援組織プラットホーム」というのがあるのですが、この社会起業家を支える民間団体さんというものと大阪府も関与しているのですが、あとコネクター機関というのがここにありますが、これは市町村社協さんの協力も得ながら社会起業家を支援していくというような事業で、今取組んでいるところです。どんな事業があるかと言いますと、例えば病児保育というのがなかなか行政の分野でも進んでないようなところがありますし、あとは最近よく話題になります、ゴミ屋敷とまではいかないですが高齢になってきて物の整理がなかなか難しいというような方が見受けられ、放っておくと将来的にゴミ屋敷になる可能性があるということがありまして、それを事前に防ぐために、例えばそういった方々の不用品を販売して、当然その利益は社会起業家の方にも行きますし、その方の利益にもなるというような、制度の隙間をビジネス的な手法でなんとかカバーして行くというような方々を支援していくような取組みをしているところでございます。
<地域での自立生活を支える福祉基盤づくり>
それではページをめくっていただいて11ページなんですが「大阪後見支援センター(あいあいねっと)の再構築」というふうに書かれています。この大阪後見支援センターと言いうのは何をやっているところかということなんですが、これは日常の福祉サービスなんかを受けられて、いろんな困り事であるとか、いろんなトラブルでありますとか、そういったことの相談を受け付けるようなところなんですが、下に相談体制のイメージ図というのが書いてあります。
図4
大阪後見支援センターは、いろんな福祉の苦情解決に頑張っていただいている機関なんですが、次の12ページをご覧になっていただきたいのですが、この大阪後見支援センターで今大阪府とともに取組んでいますのが、この成年後見についてです。この成年後見制度ですが、2000年に民法の改正が行われまして創設された制度ですが、判断能力を失った方の財産管理でありますとか、診療看護を担う方々を後見人と言いますが、こちらの表にありまように、その後見人は親族の方がだいたい7割で、第三者が3割という形になっています。今非常に大きな課題になっておりますのは、親族の方がおられても遠方に住んでおられるとか、ほとんど疎遠な状態になっている方々が実際に増えていまして、その場合は第三者、弁護士さんとか司法書士さんとか社会福祉士さんとか専門の方に就いていただくというパターンが多いのですが、専門職の方々に就いていただくということになりますと、当然報酬の問題というのが発生します。なかなか所得の問題等から報酬を支払えないというような方については国の方で助成制度はあるのですが、現在この成年後見の利用者というのはかなり増えていまして、なかなか弁護士さん司法書士さん等の専門職では追いつかないという現状でございます。それで現在、大阪府と大阪後見支援センターの方と協力して、一般の市民の方々に後見人になってもらうことは出来ないかという検討を始めています。これは、大阪市はもうすでに平成19年から「市民後見人の養成」というのを始めていまして、約120名の方を養成されまして、現在30数名がもう受任されているというような状況です。これについては全国的な統一の制度ということを国は検討しているようなのですが、まだ全国的な統一の制度というのはございません。大阪府の方としましては大阪後見支援センターと協力して行って、あと大阪市さんの力もお借りしまして、この市民後見人の養成というのに取組みたいというふうに考えております。
途中少し走りましたが、大阪府のこの地域福祉支援計画の方は、あくまで市町村でありますとか、住民の方々でありますとか、民間団体さん等を支援していく大くくりの計画になります。それぞれの地域福祉の実働部隊である市町村の方でも、これに類した計画を作りまして具体的な施策を進めて行っているところです。それで、大阪府の方も財政状況も非常に厳しいということで、これは福祉だけではなくてどの分野もそうなんですが、なかなか財政状況が厳しい中で効率的になんとか事業推進して行かなくてはならないというのが、今我々に課せられている大きな課題でありまして、新規事業の立ち上げというのも非常に厳しいというところがあるのですが、最後に申し上げました「市民後見人の養成」というのは、是非とも取組んでいきたいものというふうに考えております。
時間が押しているようですので、私からの説明は以上で終わらせていただきます。どうも、有難うございました。