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[講演録]2008年度「生協大会~活動交流会~」

[講 師]技術者事務所 環境空間代表 飯田 哲也 氏

環境落語「環境配慮型暴走族」


みなさん、おはようございます。

本日は環境落語ということで、主題に私が噺家というふうなことが書いてありますが、本当は講師でございます。私はプロの噺家ではありませんので、なんとまあ私は環境講座の講師をしておりまして、2時間3時間の長い講座を皆さんに聞いていただくのはしんどいやろうということで、その講座の中でこういうしょうもない落語をやって、環境の難しいことばかり言わないで、お客さんにゆっくりして貰おうということなんです。ですから今、15分くらい時間を与えられているのでございますが、この2時間くらいの中で落語をすると、前後が難しい話ばっかりやから、なかなかおもしろいわけです。ところが、今日みたいに下手な落語だけをせえと言われると、なかなか辛いものがあるわけです。それでも、やらなしゃあないということで、やらせていただきます。今日は、お手元に資料が行ってると思いますが、二酸化炭素の話、エコドライブの話、そういう話をやるのですが、時間があまりないので講義部分をすっ飛ばしてやります。

まず、落語をする前の基礎知識ということでございます。二酸化炭素って何やというのは、皆さんもう知ってると思いますが、CO2と言いまして、別名を炭酸ガス、氷ったらドライアイスでございます。ほんで、これが今問題になっている二酸化炭素の量は重さで表すのですな。密度といいますが、1センチ角のサイコロにCO2を詰めますと、0.00198g。これが基準になっております。こんなん何や分らんので換算してみますと、だいたい505リットルでCO2が1kgになるんですな。そういうふうな感じで見てもらったらいいんですが、ほんだらCO2はどんだけ出んのん?ということで、これは日本全国で13億6千万トンCO2が出てるわけです。さっきの重さで言いますが、これを廃棄物と比べてみたら、産業廃棄物でも4億2千2百万トンしか出てへんわけです。そやなのにCO2は13億6千万トン出てるんです。そやから、そんなもん大気中がゴミだめになってるわけですな。そういう感じで見ていただいたらいいんです。それで、皆さんの家庭から出ているCO2は、1世帯当たり5.5トンです。5.5トンの内、ガソリンから出てるのが27%もあるわけですな。そういうふうなCO2は一般のゴミと比べても3倍か4倍くらいやっぱり多いんです。

そういうことで、しょうもない皮算用をするんですが、人間も呼吸しておりますので二酸化炭素を出します。日本国民全部で1年間に何トン出してるかといいますと、なんと三千万トンですわ。これは凄い量ですわ。そやから日本国民全部が息をするのを止めたら、もう京都議定書達成ですわ。そんなことは出来へんやろということで、ガソリン減らそと、アイドリングストップでどんだけ減るんやということをちょっと計算してみましたら、だいたいアイドリング10分間で0.3リットルのガソリンを使うそうです。ほんだら乗用車、日本に何台あるねんということで、だいたい5770万台あるそうです。それを運転してるやつは何人やというたら、6970万人おるそうです。そしたら、日本中でアイドリングストップしたらどないなるんや。そやけど、さっきの5770万台もいっぺんに動いてるわけやないから、だいたい3分の1ぐらい動いてるとして計算してみたら、対象台数が1900万台、1日10分間だけアイドリングをスットプしようや、それも1年で100日だけ乗ろうやということで、土日と休日だけ皆さんが車に乗ったとしましょうや。そしたらガソリンが5億7千万リットル節約出来るとこないなってるのです。これを二酸化炭素に直したら132万トン、こんなけの分がアイドリングストップだけで減るわけでございます。これをお金に計算したら、今ガソリン高いですけど、リッター160円としたら912億円、こんなけ浮くわけでございますね。その132万トンというのは、さっきの家庭部門のCO2の0.76%に当たる。台数が想定より多かったら1%に当たるということやから、「京都議定書のマイナス6%の内の1%がアイドリングストップだけで真面目にやったらいけるんちゃうんかい!」こういうふうなしょうもない計算になるわけです。

そういうふうなことで、「環境配慮型暴走族」というのがおりまして、この暴走族の名前は……まあ暴走族というのは何でも漢字で書くんですな。落書きでも何でもね。漢字で書きますんで、これが「愛怒隣具巣 頂上」。ちょっと区切るところが違いまっせ。この漢字の意味は奥深いのでして、この漢字を見てもらいますと、隣の奴でも愛をもって怒る、そういうクラブ、チームがようさん集まったその中で、俺らはトップなんじゃとこういうふうになっております。何を怒るかと言いますと、環境に悪い事をしてる奴を怒るわけです。こういう変な暴走族がおります。それでは「環境配慮型暴走族」お聞き願います。

「環境配慮型暴走族」

原作 飯?田?哲?也

最近、エコドライブも定着してきたようですが、このお話は、ちょっと変わった暴走族の普及啓発を落語にしてみました。さて、こんな暴走族がおるのでしょうか?

隊員「総長、全員集合しましたで。」

総長「よっしゃ!! 今日も環境配慮して単車ころがすで~。 おれについてこ~い!!」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……パパラララ、パパラララ……

(その頃、サラリーマンドライバーは信号待ちをしています。)

サラリーマンドライバー「あぁ、今日は遅なったな。会社が環境配慮せえいうて、車のいろんなとこにステッカー貼ったある。アイドリングストップ、空ぶかし禁止、急発進・急停車禁止かぁ。最近こんなレッテル貼った車よう見るなあ、ほんまに。」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……パパラララ、パパラララ……

サラリーマンドライバー「なんや? 後ろからヤバイのんきよったで。信号待ちやからすぐ追いつかれるな。早よ信号かわれへんかな。……ようし、かわった。」

ブ~ン、ぶぁ~ン

サラリーマンドライバー「あかん、つぎの信号、赤や。」

キキキキー

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……パパラララ、パパラララ……

サラリーマンドライバー「えらいこっちゃ。追いつかれた。どないしょう。」

暴走族「こらぁ~、おっさん。ちょっと窓あけたらんかぁ~。」

サラリーマンドライバー「怖っ!知らんふりしとこ。」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……パパラララ、パパラララ……

暴走族「こらぁ~、おっさん。窓あけたらんかぁ~。あけへんかたっら、このバットで窓ぶち割るど~」

サラリーマンドライバー「あかん、あけなしゃぁない。あの~なんか用ですか?」

暴走族「なんか用ですかやあれへんやろ。おっさん、さっき、どんな運転しとんねん。えぇ? 急発進したやろ。そんで、ここの信号で急停車や。そんな運転してええと思とんのか? こら~!」

サラリーマンドライバー「そない言われましても、あんたらが怖いし……」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……

暴走族「怖いやあれへんやろ。アイドリングストップもしてないやないか。えぇ?」

サラリーマンドライバー「アイドリングストップて、あんたらもよういうな。」
暴走族「なんやと、おっさん。おれらみんなアイドリングストップしてるやないかい」

ぶぁ~ンブンブン、ブブブン、ブォーン……

サラリーマンドライバー「どこが、アイドリングストップしてるいうねん。こんなやかましいのに。」

暴走族「おっさん、ほんだら、アイドリングストップしてるかどうか、このタコメーターみてみぃ。」

サラリーマンドライバー「タコメーターて。あれ、タコメーター動いてないやないか。」

暴走族「そうやろ、おれらみんなエンジン止めて、アイドリングストップしとるやないか。」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……

サラリーマンドライバー「どこがアイドリングストップしてんねんな。ほんなら、この爆音はなんやねんな?」

暴走族「この音か?この音はこのスピーカーから録音した音、流しとんねやないか。」

サラリーマンドライバー「なんや、それ、トイレの節水に利用する音姫とかわりまへんな。」

暴走族「音姫と一緒にするな。おれら、この爆音はステータスや。この爆音さえあったら文句ないんや。そやけどな、この爆音出そ思たら空ぶかしせなあかんわ、それにガソリン食うわ、排気ガス出すわ、CO2出すわで、えらい地球環境に悪いんじゃ。せやから、スピーカーで流しとったら、ガソリン食わんし、アイドリングストップもできるんじゃい。」

サラリーマンドライバー「地球環境~? 暴走族やのにえらいこと言いますな。」

暴走族「そうじゃい。それにな、おっさんここでアイドリングストップしてへんかったらな、グローバルなこと考えたら、どないなるか分かってるか?」

サラリーマンドライバー「そんなもん暴走族のいう言葉かいな。」

暴走族「暴走族いうてもな、環境に配慮せなあかんねん。えっ!おっさんがここでアイドリングストップせえへんかったら、北極のシロクマが死ぬっていうねん。」

サラリーマンドライバー「そんな遠いとこまで考えますか?」

暴走族「そらそうじゃい。」

サラリーマンドライバー「せやけど、この音、環境に悪いことしてませんか?」

暴走族「なんやと、こら!環境に悪い?騒音?ちっちゃいこと言うな。騒音みたいなもんはちっちゃいことや。おいらがここで爆音出してたかて、北極のクマが死ぬか~?死ねへんやろ?そんなちっちゃいこと言うな、ちっちゃいこと。」

サラリーマンドライバー「えらい、壮大な考えの暴走族やな。」

暴走族「それからな、おれらは総長から言われとんねん。地球環境に悪いことしてるやつおったら、このバットでボコボコにいってもうたれ言うてな。おっさん、今地球環境に悪いことしとったな?」

サラリーマンドライバー「地球環境に悪いことて、そら、あんたらが怖いから……」

暴走族「何言うてんねん、じゃかましいわ、こら~。そんなぐだぐだ言うてたら、このバットでボコボコにいてもうたろか~」

サラリーマンドライバー「もう、分かりましたから。アイドリングストップしますがな。急停車・急発進もやりませから、今日のところは堪忍しとくれなはれや。ほんまに頼んますわ。明日も営業行かなあかんのに、ボコボコにされたらかないまへんわ。」

暴走族「ほんまやな。よっしゃ、今日のところは許しといたろ。そやけどな、今度こんな運転してんの見つけたら、すぐにこのバットでボコボコにいてもうたるからな。覚えとけよ、おっさん!」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……
サラリーマンドライバー「あ~行ってまいよった。一時はどうなることかと思たな、ほんまに。せやけど、あの暴走族おもろいな。口も悪いし、やり方も荒っぽいけど、なんやエコドライブを推進する環境を考える暴走族やないか。あっ、パトカーや。パトカー行きよるで。かわいそうに、あいつら捕まりよんな~」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……パパラララ、パパラララ……

ウ~、ウ~、ウ~、(パトカーサイレン)

隊員「総長、総長、後ろからパトカー来まっせ。逃げんとあきませんで。」

総長「なんやと?パトカー?そんなもんほっとけ。おれらはな、何にも悪いことしとらへんのじゃ。逃げんでもかめへん。」

隊員「総長、せやけどすぐ追いつかれまっせ。」

ウ~、ウ~、ウ~、(パトカーサイレン)

パトカー「前のバイク集団!前のバイク集団! 左へ寄せて止まりなさい!! すぐに左へ寄せて止まりなさい!!」

ウゥ~ン(サイレンが止まる音)

パトカー「あらっ、えらい素直に止まりよったな。もっと逃げ回るかと思とったのにな。」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……

隊員「おまわりさん。おれら、なんか、悪いことしましたか?」

パトカー「なんか、悪いことしましたかやあれへんがな。こんな爆音たてて、ジグザグ運転して、こんな走り方してええと思とるんか、おまえら。えぇ?!悪いことしてない言うんやったら、ちょっと説明聞かせてもらおか?」

隊員「なっ、おまわりさん。説明はなんぼでもさせてもらいますけど、まずこのパトカーのエンジン止めて、アイドリングストップやってくださいよ。」
[講 師]技術者事務所 環境空間代表 飯田 哲也 氏

環境落語「環境配慮型暴走族」


みなさん、おはようございます。

本日は環境落語ということで、主題に私が噺家というふうなことが書いてありますが、本当は講師でございます。私はプロの噺家ではありませんので、なんとまあ私は環境講座の講師をしておりまして、2時間3時間の長い講座を皆さんに聞いていただくのはしんどいやろうということで、その講座の中でこういうしょうもない落語をやって、環境の難しいことばかり言わないで、お客さんにゆっくりして貰おうということなんです。ですから今、15分くらい時間を与えられているのでございますが、この2時間くらいの中で落語をすると、前後が難しい話ばっかりやから、なかなかおもしろいわけです。ところが、今日みたいに下手な落語だけをせえと言われると、なかなか辛いものがあるわけです。それでも、やらなしゃあないということで、やらせていただきます。今日は、お手元に資料が行ってると思いますが、二酸化炭素の話、エコドライブの話、そういう話をやるのですが、時間があまりないので講義部分をすっ飛ばしてやります。

まず、落語をする前の基礎知識ということでございます。二酸化炭素って何やというのは、皆さんもう知ってると思いますが、CO2と言いまして、別名を炭酸ガス、氷ったらドライアイスでございます。ほんで、これが今問題になっている二酸化炭素の量は重さで表すのですな。密度といいますが、1センチ角のサイコロにCO2を詰めますと、0.00198g。これが基準になっております。こんなん何や分らんので換算してみますと、だいたい505リットルでCO2が1kgになるんですな。そういうふうな感じで見てもらったらいいんですが、ほんだらCO2はどんだけ出んのん?ということで、これは日本全国で13億6千万トンCO2が出てるわけです。さっきの重さで言いますが、これを廃棄物と比べてみたら、産業廃棄物でも4億2千2百万トンしか出てへんわけです。そやなのにCO2は13億6千万トン出てるんです。そやから、そんなもん大気中がゴミだめになってるわけですな。そういう感じで見ていただいたらいいんです。それで、皆さんの家庭から出ているCO2は、1世帯当たり5.5トンです。5.5トンの内、ガソリンから出てるのが27%もあるわけですな。そういうふうなCO2は一般のゴミと比べても3倍か4倍くらいやっぱり多いんです。

そういうことで、しょうもない皮算用をするんですが、人間も呼吸しておりますので二酸化炭素を出します。日本国民全部で1年間に何トン出してるかといいますと、なんと三千万トンですわ。これは凄い量ですわ。そやから日本国民全部が息をするのを止めたら、もう京都議定書達成ですわ。そんなことは出来へんやろということで、ガソリン減らそと、アイドリングストップでどんだけ減るんやということをちょっと計算してみましたら、だいたいアイドリング10分間で0.3リットルのガソリンを使うそうです。ほんだら乗用車、日本に何台あるねんということで、だいたい5770万台あるそうです。それを運転してるやつは何人やというたら、6970万人おるそうです。そしたら、日本中でアイドリングストップしたらどないなるんや。そやけど、さっきの5770万台もいっぺんに動いてるわけやないから、だいたい3分の1ぐらい動いてるとして計算してみたら、対象台数が1900万台、1日10分間だけアイドリングをスットプしようや、それも1年で100日だけ乗ろうやということで、土日と休日だけ皆さんが車に乗ったとしましょうや。そしたらガソリンが5億7千万リットル節約出来るとこないなってるのです。これを二酸化炭素に直したら132万トン、こんなけの分がアイドリングストップだけで減るわけでございます。これをお金に計算したら、今ガソリン高いですけど、リッター160円としたら912億円、こんなけ浮くわけでございますね。その132万トンというのは、さっきの家庭部門のCO2の0.76%に当たる。台数が想定より多かったら1%に当たるということやから、「京都議定書のマイナス6%の内の1%がアイドリングストップだけで真面目にやったらいけるんちゃうんかい!」こういうふうなしょうもない計算になるわけです。

そういうふうなことで、「環境配慮型暴走族」というのがおりまして、この暴走族の名前は……まあ暴走族というのは何でも漢字で書くんですな。落書きでも何でもね。漢字で書きますんで、これが「愛怒隣具巣 頂上」。ちょっと区切るところが違いまっせ。この漢字の意味は奥深いのでして、この漢字を見てもらいますと、隣の奴でも愛をもって怒る、そういうクラブ、チームがようさん集まったその中で、俺らはトップなんじゃとこういうふうになっております。何を怒るかと言いますと、環境に悪い事をしてる奴を怒るわけです。こういう変な暴走族がおります。それでは「環境配慮型暴走族」お聞き願います。

「環境配慮型暴走族」

原作 飯?田?哲?也

最近、エコドライブも定着してきたようですが、このお話は、ちょっと変わった暴走族の普及啓発を落語にしてみました。さて、こんな暴走族がおるのでしょうか?

隊員「総長、全員集合しましたで。」

総長「よっしゃ!! 今日も環境配慮して単車ころがすで~。 おれについてこ~い!!」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……パパラララ、パパラララ……

(その頃、サラリーマンドライバーは信号待ちをしています。)

サラリーマンドライバー「あぁ、今日は遅なったな。会社が環境配慮せえいうて、車のいろんなとこにステッカー貼ったある。アイドリングストップ、空ぶかし禁止、急発進・急停車禁止かぁ。最近こんなレッテル貼った車よう見るなあ、ほんまに。」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……パパラララ、パパラララ……

サラリーマンドライバー「なんや? 後ろからヤバイのんきよったで。信号待ちやからすぐ追いつかれるな。早よ信号かわれへんかな。……ようし、かわった。」

ブ~ン、ぶぁ~ン

サラリーマンドライバー「あかん、つぎの信号、赤や。」

キキキキー

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……パパラララ、パパラララ……

サラリーマンドライバー「えらいこっちゃ。追いつかれた。どないしょう。」

暴走族「こらぁ~、おっさん。ちょっと窓あけたらんかぁ~。」

サラリーマンドライバー「怖っ!知らんふりしとこ。」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……パパラララ、パパラララ……

暴走族「こらぁ~、おっさん。窓あけたらんかぁ~。あけへんかたっら、このバットで窓ぶち割るど~」

サラリーマンドライバー「あかん、あけなしゃぁない。あの~なんか用ですか?」

暴走族「なんか用ですかやあれへんやろ。おっさん、さっき、どんな運転しとんねん。えぇ? 急発進したやろ。そんで、ここの信号で急停車や。そんな運転してええと思とんのか? こら~!」

サラリーマンドライバー「そない言われましても、あんたらが怖いし……」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……

暴走族「怖いやあれへんやろ。アイドリングストップもしてないやないか。えぇ?」

サラリーマンドライバー「アイドリングストップて、あんたらもよういうな。」
暴走族「なんやと、おっさん。おれらみんなアイドリングストップしてるやないかい」

ぶぁ~ンブンブン、ブブブン、ブォーン……

サラリーマンドライバー「どこが、アイドリングストップしてるいうねん。こんなやかましいのに。」

暴走族「おっさん、ほんだら、アイドリングストップしてるかどうか、このタコメーターみてみぃ。」

サラリーマンドライバー「タコメーターて。あれ、タコメーター動いてないやないか。」

暴走族「そうやろ、おれらみんなエンジン止めて、アイドリングストップしとるやないか。」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……

サラリーマンドライバー「どこがアイドリングストップしてんねんな。ほんなら、この爆音はなんやねんな?」

暴走族「この音か?この音はこのスピーカーから録音した音、流しとんねやないか。」

サラリーマンドライバー「なんや、それ、トイレの節水に利用する音姫とかわりまへんな。」

暴走族「音姫と一緒にするな。おれら、この爆音はステータスや。この爆音さえあったら文句ないんや。そやけどな、この爆音出そ思たら空ぶかしせなあかんわ、それにガソリン食うわ、排気ガス出すわ、CO2出すわで、えらい地球環境に悪いんじゃ。せやから、スピーカーで流しとったら、ガソリン食わんし、アイドリングストップもできるんじゃい。」

サラリーマンドライバー「地球環境~? 暴走族やのにえらいこと言いますな。」

暴走族「そうじゃい。それにな、おっさんここでアイドリングストップしてへんかったらな、グローバルなこと考えたら、どないなるか分かってるか?」

サラリーマンドライバー「そんなもん暴走族のいう言葉かいな。」

暴走族「暴走族いうてもな、環境に配慮せなあかんねん。えっ!おっさんがここでアイドリングストップせえへんかったら、北極のシロクマが死ぬっていうねん。」

サラリーマンドライバー「そんな遠いとこまで考えますか?」

暴走族「そらそうじゃい。」

サラリーマンドライバー「せやけど、この音、環境に悪いことしてませんか?」

暴走族「なんやと、こら!環境に悪い?騒音?ちっちゃいこと言うな。騒音みたいなもんはちっちゃいことや。おいらがここで爆音出してたかて、北極のクマが死ぬか~?死ねへんやろ?そんなちっちゃいこと言うな、ちっちゃいこと。」

サラリーマンドライバー「えらい、壮大な考えの暴走族やな。」

暴走族「それからな、おれらは総長から言われとんねん。地球環境に悪いことしてるやつおったら、このバットでボコボコにいってもうたれ言うてな。おっさん、今地球環境に悪いことしとったな?」

サラリーマンドライバー「地球環境に悪いことて、そら、あんたらが怖いから……」

暴走族「何言うてんねん、じゃかましいわ、こら~。そんなぐだぐだ言うてたら、このバットでボコボコにいてもうたろか~」

サラリーマンドライバー「もう、分かりましたから。アイドリングストップしますがな。急停車・急発進もやりませから、今日のところは堪忍しとくれなはれや。ほんまに頼んますわ。明日も営業行かなあかんのに、ボコボコにされたらかないまへんわ。」

暴走族「ほんまやな。よっしゃ、今日のところは許しといたろ。そやけどな、今度こんな運転してんの見つけたら、すぐにこのバットでボコボコにいてもうたるからな。覚えとけよ、おっさん!」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……
サラリーマンドライバー「あ~行ってまいよった。一時はどうなることかと思たな、ほんまに。せやけど、あの暴走族おもろいな。口も悪いし、やり方も荒っぽいけど、なんやエコドライブを推進する環境を考える暴走族やないか。あっ、パトカーや。パトカー行きよるで。かわいそうに、あいつら捕まりよんな~」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……パパラララ、パパラララ……

ウ~、ウ~、ウ~、(パトカーサイレン)

隊員「総長、総長、後ろからパトカー来まっせ。逃げんとあきませんで。」

総長「なんやと?パトカー?そんなもんほっとけ。おれらはな、何にも悪いことしとらへんのじゃ。逃げんでもかめへん。」

隊員「総長、せやけどすぐ追いつかれまっせ。」

ウ~、ウ~、ウ~、(パトカーサイレン)

パトカー「前のバイク集団!前のバイク集団! 左へ寄せて止まりなさい!! すぐに左へ寄せて止まりなさい!!」

ウゥ~ン(サイレンが止まる音)

パトカー「あらっ、えらい素直に止まりよったな。もっと逃げ回るかと思とったのにな。」

ぶぁ~ン ブンブン、ブブブン、ブォーン……

隊員「おまわりさん。おれら、なんか、悪いことしましたか?」

パトカー「なんか、悪いことしましたかやあれへんがな。こんな爆音たてて、ジグザグ運転して、こんな走り方してええと思とるんか、おまえら。えぇ?!悪いことしてない言うんやったら、ちょっと説明聞かせてもらおか?」

隊員「なっ、おまわりさん。説明はなんぼでもさせてもらいますけど、まずこのパトカーのエンジン止めて、アイドリングストップやってくださいよ。」