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講演録 『健全な生協運営に果たす監事の役割』

Ⅰ 改正生協法の概要と対応課題の全体像  Ⅱ.組織・運営規定改正の基本的考え方とガバナンス見直しの視点
【講師】 日本生協連   法規対策室長(兼)改正生協法対策室長 宮 部 好 広 氏

Ⅰ.改正生協法の概要と対応課題の全体像


おはようございます。
今、ご紹介いただきました日生協で、今年の6月21日付で出来た「改正生協法対策室」というセクションの室長をしております宮部と申します。
私はもう10何年も生協法の担当というのをやって来ていて、今回の生協法の改正についても、津村会長にもご参加いただいた「日生協での要求案作りの小委員会」というのを事務局からずっと係わっておりまして、現在はこういう格好で会員生協さんの改正生協法対応のお手伝いをするということで仕事をさせていただいております。
今日は理事さん監事さんという方がたくさんお集まりですので、この生協法改正の内容を時間が限られていますが、出来る限りお伝えして、今後の取組みに役立てていただければと思っています。これから1時間15分位、固い話になるかと思いますが、ご辛抱いただいて、お付き合いいただければと思います。
お手元に資料が3つあるかと思います。一応確認したいのですが、1つは「改正生協法により求められる理事・監事の役割」という薄いもの。もう1つが「地連別・改正生協法説明会」というタイトルで、これは元々は日生協の地連ごとに説明会というのを9月に行った時に使った資料ですので、こういうタイトルになっております。それと、もう1つはこちらのカラーのパンフレットと、この3つを使って説明をして行きたいと思います。
まず「地連別・改正生協法説明会」の冊子を開けていただけますか。今回の生協法改正の背景については、先ほど松葉様のご挨拶の時に少し触れられていたと思います。1ページの一番上のところに、「食の安全への取組みをはじめとする事業を通じた社会的役割の発揮、福祉活動などコミュニティにおけるさまざまな活動から、生協の社会的貢献が高く評価されました。」というふうに書いてあります。その一方でご承知の通り生協法というのは1948年、今から59年前という事になるわけですが、その制定以来実質的な改正はほとんど無いという珍しい法律です。そうすると、いろんなところでのギャップが大きくなってきたというのが大きな背景となっています。
生協法ができた頃の生協の姿でいいますと、主には町内会単位ぐらいの地域生協がメインでありまして、当時の統計での1生協あたりの平均組合員数というのが約555名です。ですから、現行法では、組合員1000人以上の生協は総代会がおけますということですから、当時の感覚で行きますと組合員が1000人以上いるところは大きな生協ということなんですね。その下で行っていた事業は配給制度の末端のところでの分配という事ですから、事業的には極めてシンプルであります。そのような姿を想定して作られているのが現行の生協法でありますので、現在、組合員数100万、数10万というような規模のところもあり、いろんな事業をやっているという中で実態に合わなくなって来たということも大きな背景にあります。それに伴って、総合的な改正が行われているということなんですね。
1ページの下のほうから、「生協制度見直し検討会報告書より」ということで引用しています。この生協制度見直し検討会とは何かと言いますと、今回の生協法改正の内容を検討するために、厚生労働省の中に置かれました審議会のようなものでありまして、この報告書がベースになって今回の改訂内容が組み立てられている。それを一定の範囲で引用していますので、こちらはご参考までにご覧いただければと思います。それから、めくっていただいて2ページの下のほうには、国会審議の政府答弁の中で特に厚生労働大臣が答弁をしている部分を2箇所ぐらいあげています。1点目は今回の改正の背景を説明されている部分、2点目は生協の活動での評価をされている部分ということで、国としてはこんな風な受け止め方をしているんだということをお分かりいただけるかなと思います。
まず1番目の資料では、改正生協法全体についてざっと見て、それに伴ってどんな対応が必要になっているかということをご理解いただくということです。2番目の資料が11ページ以下にありますが、こちらの方で運営規定関連のほうのご説明をするという組み立てで進んで行きます。

1.県域規制
先ほどちょっと触れられていましたが、今までは職域生協と連合会は県域を越えて作れたわけですけれども、地域生協は例外なく都道府県域の中でしか作れないというふうにされて来ました。今回の生協法の改正では、購買事業の実施の為に必要な場合に、例外的に主たる事務所の隣接県の範囲まで県を越えて区域を設定できるようになったということです。これは、今まで全く例外がなかった県域規制ということから見ると、大きな前進と受け止めています。ここで隣接県というのは、例えば大阪府で見れば、兵庫・京都・奈良・和歌山という4つが隣接県になるわけですね。最大で2府3県に渡るエリアの設定まではこの生協法の改正により出来るようになっているということであります。ただこの区域の設定というのはもちろん定款事項でありますから、定款を変更してエリアを拡大しなければならないということですけれども、その拡大するにあたっては購買事業の実施のために本当に必要なのかというところですよね。これが問われるという関係になります。
「対応課題」ということで書いていますが、大きく分けて2つの角度から検討することになるかなと思っております。1つは県境問題。例えば県境のところにお店があって、他の県から来る人が見込まれるという場合、その人たちの加入を認めるために、隣の県全体ということではなくて、隣接している市町村とかの範囲で拡大するということは1つ考えられる角度であります。もう1つは、隣接の地域生協との合併で、合併をすると複数府県の全域にわたることもあるわけですけれども、こういう事が中長期的には検討課題になるかなというふうに思っています。ただこれは、いずれにせよ、まず組合員さんを含めた各生協の中での合意づくりが必要ですし、隣県の生協や県連との調整というようなことも色々有りますので、あんまり短期的にできるものではないのですが、こんなことが実践上には課題になってくるかということです。
下のほうに「地方厚生局のエリア」というふうにあります。生協の管轄は区域が都道府県内にある場合は都道府県、区域が都道府県を越えて設定されている場合は都道府県の管轄ではなくて地方厚生局の管轄となります。地方厚生局のエリアというのはこの表のように決まっています。近畿であれば、西は兵庫まででありますので、例えば兵庫と岡山にまたがって作るということになりますと、地方厚生局のエリアも越えます。こういう場合は、認可も含めて本省の管轄になるということです。

2.員外利用規制
員外利用規制について、今まではどういうふうになっていたかと言いますと、組合員以外の者にはその利用をさせてはならないという原則禁止規定があります。例外があるのですが、主には行政庁の許可を得た場合ということで、つまり行政庁の許可を得たら員外利用が出来るということなんですね。ところが、生協法は結構古い法律なので、何の基準も示さずに行政庁に許可権限が与えられているわけですね。最近の法律ではそんな作り方をせず、法律上許可権限を与えたりする時は、こういうふうな場合にという形で例示をしたり、どういう角度なのかということを補充的に説明したりするのですけれども、この生協法の員外利用規制のところにはそうした規定は一切なくて、行政の自由裁量任せというのが今の仕組みだったわけです。改正生協法では、立場を大きく転換して、員外利用が認められるケースというのを法律あるいは省令で明らかにしようということになっています。したがって、その部分は行政の透明性で言いますとかなりの進歩と言えますし、今回員外利用を認める事由として法律で定められているものの中には、今まで正面から認められていなかったものも入っているということで、一定の緩和ないし前進であるというふうに我々としても受け止めているところであります。
では、員外利用を認めて良いケースというのはどんなものかということですけれども、4ページの上の角が丸い四角の中に表があります。表の一番左に許可が必要、不要という記載がされています。これはどういう意味かと言いますと、今まではすべからく行政庁の許可を得なければならず、例えば医療事業をやる場合、医療生協をつくるわけですが、その場合にも員外利用許可を得ていました。医療事業というのは患者さんが来た時に断ってはいけませんよという基本的なルールがありますから、法律上組合員でないので診療できませんとはならないのですが、そうした場合でも、設立の時にこういう理由ですので員外利用を許可して下さいと申請をして、許可を得て初めて員外利用OKになるので医療事業ができるという構造になっていた訳です。改正生協法では、下の不要と書いているグループはいちいち許可を取るということをしなくていいということになりました。例えば医療・福祉事業はいちいち員外利用許可を得なくとも、医療・福祉事業をするときは当然に員外利用が認められるという構造になっている。もう1つ例を挙げると、「特定物品」というのが4番目にありますけれども、この中の代表格がお酒であります。お酒を販売するには、販売免許を取る必要があるわけですけれども、その時にヘンテコな理屈がくっ付いていて、生協の場合には員外利用許可を貰わないとお酒の免許をあげませんよというふうになっていたわけですね。それで、以前はなかなかお酒の免許が取れなかったわけですけれども、今回お酒はおそらく特定物品の中に定められるので、そうしますとお酒の免許を申請する時に、いちいち員外利用の許可を取る必要がなくなり、免許の取得だけでいいということになるわけです。
一番上の必要と書いたのが1つだけありますが、山間僻地など不便な場所で生協ぐらいしか買い物をするところがないという場合に、そういう所は住民が大変だから員外利用許可を認めましょうというのが、この一番上の事由です。しかし、この事由については本当にそういう不便な場所であるかどうか、生協を利用しないと住民が本当に困るのか、という点が分からないので、個別にそうした点について審査する必要があります。そうした事情もあって、この事由については該当するので許可して下さいと許可申請を出して、許可を得てはじめて員外利用が認められることになります。許可必要グループとしては、これに省令で定める事由というのもあります。省令でどんな事由を定めるかは今検討中ですが、その下の●の3番目のところにありますが、「生協間取引、保育所、老人ホーム等への物資提供とか、職域・大学生協の来訪者による利用や関連団体による利用など」が現在検討されています。職域自体への提供というのは法律で直接定められているのですが、職域自体ではない、例えば職場の労働組合や互助会に商品を提供することが必要な場合もあるので、省令の中で認めて下さいということで要望を出して検討されています。
各事由の説明はここまでとしますが、もう1つ説明しておかなければならないのが員外利用分量の制限です。分量制限があるものと無いものがありまして、②から⑥までは分量制限がありません。許可不要でかつ分量制限がないということは、この部分については生協に任せますので主旨にそぐわないことをやらないようにちゃんとやって下さいね、という意味であります。それ以外の①⑦⑧あるいは省令で定める部分というのは分量制限が付きます。省令で定める部分というのはすべて許可必要・分量制限ありグループの中に入るわけですけれども、それを含め、基本的には員外利用の分量は組合員の利用分量の5分の1。これが原則で、医療・福祉事業については公共性が高いサービスなので、組合員利用の総額、つまり組合員の利用と員外利用とが1対1ということですね。総利用分量の半分までは組合員の利用でということです。半分まではというのは、農協法の規定をそのまま持ってきて横並びということなんですけれども、そうなっている理由としては、あくまで組合員向けの事業なんだということです。生協はもともと組合員の為に事業を行う組織なわけですから、大半が員外利用であるのはまずいのではないかというのが、1対1で定めた理由ではないかというふうに思っています。なお、ここでいう員外利用分量というのは金額を指します。
[対応課題]のところは、これは許可が必要なものについては許可を得る申請をしなければいけないので、その準備を考えるということです。
3番の組織・運営規定のところは後ほどやりますので、ここではちょっと省略をして、共済事業関係のところに行きます。

4.共済事業関係
今回生協法の改正が実現した最も大きな要因は、ある意味で共済事業なんです。今回の改正はほぼ全面的な改正で、第1章の総則から第9章の罰則まで生協法のすべての章にわたって改正が行われています。本当に全面的な改正なんですけれども、これが実現した大きなきっかけは、共済事業関係の改正をどうしてもやらなければいけない状況に追い込まれたということです。
本当は厚生労働省の方は生協の改正をしたくはなかったのです。したくなかったというのは、まず実務も大変であるというのもありますけれども、もう20年以上前に生協規制が凄かった時期というのがあったわけです。その頃、自民党の中で生協法の「改正案」というのが作られました。これは当時、大店法という法律がありまして、出店調整の手続きなどを定めていた法律なんですけれども、これに類似した出店調整の手続きを生協法の中に義務づけたり、員外利用規制のところの罰則といいますか、それにかかる行政措置のところを強化したり、というような規定強化策の改正案みたいなものが出されて、自民党としての党議決定の寸前まで行ったということがありました。
そんな経過の中で、生協法改正の話を持ち出したら大変なことになると、そういう記憶がトラウマのようにずっと残っているわけですよね。生協側では状況が変わってきていると思っていましたが,絶対大丈夫だというほどの材料もなく、厚生労働省としては及び腰だったわけですけれども、共済事業のところについては法改正をしないとしょうがないという状況に追い込まれたのです。何故かということですが、保険と共済のところの問題がかなり先鋭化してきたことが背景になっています。以前、何かの雑誌の表紙にグラフが載っていたのですけれども、生命保険会社の個人向けの商品の加入者数が減っているわけですね。一方、生協の共済の全労済・全国生協連・日生協のコープ共済という、この3つが凄い勢いで伸びているので、保険業界としてはかなり危機感を持ってきました。もともと保険業法というのはかなり規制が厳しいのですが、協同組合の共済というのは、保険業法の規制から比べれば規制は緩やかですし、生協法に至っては法律上の規制は殆んどないというような状況で、全部通達とかでやっていたわけです。さらに、共済について言いますと、生協が行う場合は当然認可を受けて行わなければいけないのですが、任意団体が無認可で共済をするということは、実は禁止されていなかったのです。そうした事情の中で、保険と共済との扱いが制度上不公平ではないかということで、保険業界なり外資の保険会社などから、同じような規制を求める声が強く出され、どんどん外堀が埋まっていったわけです。2004年に農協法が改正されて、農協共済に関する制度が保険業法をかなり意識した形に整備され、2005年に保険業法が改正されて、無認可共済が原則的に出来なくなった。本当に職場の互助会の共済というのは別ですけれども、そうでないものは小規模短期保険業者ということで、参入規制がかかって、いろんなルールが定められました。2006年には、中小企業等協同組合法が改正されて、中小企業共済についても規制がかかってくる。そうなった時に、中小企業共済よりも生協共済のほうが、加入者数も多くて社会的影響は物凄く大きいわけですよね。個人向け商品の加入者数で言いますと、先ほどいった3つの生協の共済が、3つともトップテンに入っているのです。そういうところが、制度の整備をやらないで済むというわけには絶対いかないのです。そうした中で、共済事業に関する部分を法改正するとなると、ずっと手がついてなかった運営規定部分の所もやらなければいけないだろうという事になります。それだけでも法改正としては大変なボリュームになるわけなので、それだったら日生協がその前にまとめている要求案というのがあるわけだから、それらについても検討しましょうということになって、今回の総合的改正につながったという経過があるのです。
それで共済事業関係のところでは、主に元請け生協のところでの規制がかなりかかるという構造になっています。一番大きいのは、リスク遮断のための兼業規制と子会社規制ということであります。どういうことかと言いますと、共済事業というのは銀行とかとは形は違いますが、お金を預かる事業なんですね。普通、購買事業の場合は、例えばこういう物を買う時、お店に行ってこれと引き換えにお金を渡しますね。無店舗事業の場合は、注文した商品が届いた時にお金を払わないで後で払います。お金を払うのは、物を受け取ったのと同じ時か、あるいは後でということになるわけですけれども、共済事業の場合は、予め掛金を貰うわけですね。例えば亡くなったら、あるいは入院したら、これだけの給付をしますよと約束をした上で、先に掛金を貰うわけです。ですから、掛金を集めておいて実は共済金は払えませんという話になると、これはまったく詐欺と同じなわけですよね。例えば、共済事業と購買事業を一緒にやっているというケースで、購買事業のほうが実は物凄い大赤字で共済事業のほうのお金でその赤字を補てんするような状態だったとします。そういう状態のもとで、1つ大災害が起こって、給付の申請が集中したりすると払えないということになりかねないわけです。だから、一定規模以上のところに関しては共済事業と他の事業とのリスクを遮断するべきだ、というのが基本ルールになります。兼業禁止の基準は、受入掛金総額10億円以上と現在のところ想定されています。実際には政令で定めることになっていますので、確定をしているわけではありませんが、恐らくこの数字になると思います。単位生協では、この基準に該当する場合に共済事業以外の事業を行えないということになりました。また、連合会は規模にかかわらず、元受共済事業を行う場合、他の事業は行えません。
言い換えると、単位生協の場合、受入掛金総額が10億円以内なら、共済事業と他の事業を兼業できるわけですが、子会社を使って兼業規制を免れるということも考えられるわけですよね。子会社に保険会社を持って、一定部分は共済としてやり、一定部分は子会社の保険事業としてやるとなると、生協自体の規模は上がらなくても、実質的には子会社でやっているのだから、そこは同じではないかという話になってしまう。あるいは兼業規制がかかって共済事業しかやってはいけませんということになっている生協が子会社を作って購買事業をやるということが出来ると、これもあんまり意味がないわけですよね。ということなので、そういう意味で子会社規制というのもここに入ってくるということです。
それから、経営の健全性確保のためのルールが、いろいろ整備をされています。最低出資金制度が導入されまして、単協でしたら1億円以上、連合会でしたら10億円以上というような数字が入って来ます。それから諸準備金は責任準備金だとか支払準備金だとか、いろいろあるのですが、積立ての充実をする。法定準備金も積立義務が、元受共済業務を行う場合は重くなります。皆さんは役員になった時に、毎年の決算のところで、剰余金の10分の1以上を法定準備金として積まなければいけませんよというのをお聞きになったことがあるかと思いますが、元受共済事業を行っている場合は、この10分の1が倍の5分の1になります。そうした資本基盤の整備とか、それから特に大規模な場合には外部監査として公認会計士とか監査法人による監査制度が導入されるということです。
それから、契約者保護のためのルールの整備ということもあります。結局は共済事業というのは目に見えない商品ですよね。入院保障金が1日いくらですよとか、死亡保障はいくらですよといった約束事が束になったような商品です。だから形がないし目にも見えない。そういうものなので、本当に理解して入ってもらわないと、こんなはずじゃなかったということになりかねないわけですので、嘘をついて勧誘してはいけないなどの形で禁止行為が明確化されました。ごく当たり前のルールなのですが、それが今までの生協法の中にはまるで無かったので、法律上ちゃんと決めましょうということが1つです。逆に、入っていただく時には、悪い勧誘はしないというだけでは理解はいただけないわけですので、ちゃんと説明して分かってもらうということもしなくてはいけない。それの為のルールも省令できっちりと定めましょうということであります。この部分は元受共済生協に限らず、受託共済として行う場合でも、契約者の方と直接やりとりをするというのは同じですから、この部分は両方に適用されるということであります。
対応課題としてはいろんなものがありますが、共済事業のところでしゃべり過ぎたので、少し飛ばします。

5.医療・福祉事業関連
今日、医療生協の方もかなりご参加いただいております。医療・福祉事業のところで言いますと、1つは「医療事業」「福祉事業」という言葉が生協法の中に初めて登場したのです。今まで生協法の中にはそういう言葉はありませんでした。実は、生協は法律に定めた事業しか出来ないよということになっています。生協法の10条という規定がありまして、「組合は、次の事業の全部、または一部を行うことができる」と書いてあります。この出来るというのが曲者で、逆から読むと「全部、または一部の事業以外は行なえない」と読むのですね。その書かれている事業とは5つプラス1でした。供給事業・利用事業・生活文化事業・共済事業・教育事業が5つの事業で、後はそれぞれに付帯する事業がプラス1になるわけです。これのどれかに入っていない事業は行えないというのが基本的な枠組みだったわけです。ここに医療も福祉も全然出てきませんよね。では、医療や福祉は何を根拠にやっていたかと言いますと、この利用事業というのが、実は非常に広いのですね。ほとんどのサービス事業は利用事業に入ってしまうということで、利用事業の中の1つとして、医療とか福祉とかも有りますよという格好で扱われてきたというのが、今までの経過なんです。最近はそうは言われないと思いますが、医療生協の昔から取り組んでおられた方の文章を読んだ時に「何で生協が医療事業なんかをやるんだ。医療事業というのは公共の為にやるものではないか。生協は組合員組織だから、医療事業をやるのはおかしいのではないか」といった言われ方をしたこともあったようです。今回の生協法改正で、医療事業や福祉事業とかが生協の法の中にちゃんと書かれるということになりましたので、そういう意味で言いますと、医療事業・福祉事業を主体とした生協がかなり法的に認知をされて来たということの反映だというふうに言えるかとも思います。
次に、医療福祉等事業については区分経理をしなさいというふうになりました。区分経理をしなさいというのは、医療福祉事業というのはいろんな事業がありますけれども、コアになっているのは、公的保険によって収入を得るという事業ですね。お医者さんにかかりに行った時に、今は3割負担ですが、3割負担ということは言い換えれば7割は社会保険の方からお金が出るという構造になっているわけです。介護保険についても、介護保険からの給付というのがあるわけで、それが収入の基盤になっているものである以上、例えば、その部分で儲けたお金を割戻しするというふうになったらおかしいのではないか、という議論があるわけですね。その医療福祉等事業のところについては、そういう意味から、公的保険によるような事業を中心に、他の事業と区分して経理をしなさい。そこで生じた剰余金というのは積立金にして、その積立金は医療・福祉事業でしか使えない。言い換えると、他の事業に使ったり、割戻しをしたりということができないということです。
購買生協の場合は、もともと購買事業というのが大きくあって、それと一緒に福祉事業とかをやっていますので、絶対区分経理をしなくてはいけないのですが、医療生協の場合は、ほとんど医療・福祉に関する事業しかやっていません。でも、厳密に言うと一部入るかどうか分らない事業があります。例えば、病院の中の売店で物を売ったり、あるいは駐車場で患者さんからお金を取るということが仮にあった場合、その部分だけ分けるのか、という議論になるわけです。そういう細かい付随的な部分を逆に別管理していかなければいけないということになると、これはあまりに煩雑なので、そういう付随的事業は一括にしてしまってかまわないよというような方向で、今整理をしようということになっています。具体的には省令で定めるということになっておりまので、省令が出て来ないと分りませんが、方向としてはそういう形になっています。

6.その他
それから、その他ということで、総代会の設置基準が今までは組合員1000人以上でないと総代会を置けないというふうになっていたのですが、今回は500人以上に引下げられました。言い換えると、今まで800人とか900人とかの組合員の生協は、毎年総会を開かないといけなかったわけですが、今後は総代会を設置して、総代会で決算を承認したり事業計画を決めることができるようになるという意味です。
職域生協・大学生協の組合員資格のところにも変更がありました。職域生協のところでは、組合員資格が今まで2つだったのですね。1つは職域に勤務している人、もう1つはその職域の付近に住んでいる人。この2つしか組合員資格が無かったのですけれども、新たに1つ加わりました。それは、その職域に勤務していた人、退職者ということですね。退職者は、今までは付近に住んでいる人として入ることは出来たのですが、遠くに引っ越してしまったら、残っていられないということがあったわけですけれども、それに関係なく退職者は組合員として残れるようになったということです。それと、大学生協は職域タイプの生協として作られて来ていますが、大学生協の学生の組合員資格というのは、実は表から定めたものが無くて、勤務している者も言えないので、付近に住んでいる人として入っていたわけですね。それは、あまりにも変てこだということで、大学生協の場合は学生も組合員になれると明記しましょうということになりました。
貸付事業のルールとかも定められたんですけれども、一番下のところにある、従来「教育事業繰越金」と呼んでいたものがあります。毎年の総代会の議案書で決算の剰余金処分のところに、必ず教育事業繰越金が5%以上なければいけないということで、それを翌年の教育事業に使いましょうということになっています。その使い道として、教育事業だけではなくて、組合員の福祉活動の助成に充ててもかまわないというふうになりました。しかし、もともと教育事業繰越金だけでは、翌年の教育関係の経費を賄いきれず、だいぶ持ち出ししてやっていますので、実践的な影響というのはほとんどありません。むしろ大きいのは、組合員の福祉活動というものをある意味奨励するという趣旨が法に盛り込まれたことです。今まで、組合員の活動は自主的にやっていただけで、法律上それを評価するものは何も無かったわけですけれども、非常に重要な活動だということがはっきりすることになったわけです。

[別紙:共同引受の受託移行と新共済連設立に関わる留意事項]
これは日生協のCO・OP共済をやられているところが関係して来るんですけれども、日生協自身が共済事業と購買事業といろいろやっています。日生協は連合会で、連合会が元受共済事業をやる場合は、他の事業が出来ないので、日生協自身を分割しなければいけないことになります。どういう形で分割するかということなんですが、いろいろ検討してきた結果、新しい連合会を作って、そこに日生協の共済事業部分を全部持って行くという形になりました。そうしますと、CO・OP共済をやっている生協はそれぞれが新しく出来る共済生協連に加入しなければいけない。加入しないと、そこの業務を受託してやるということが出来ませんので、そっちにも加入していただく。その加入の議決というのは、連合会への加入なので、総代会議決事項ですから、総代会に提案をして加入の議決をしてもらわないといけないということになっています。
それと、後はさっきの兼業規制の対象になる生協というのがあります。そういう生協については、単位生協を分割することは事実上無理なので、元受共済であることをやめて、受託共済にするということです。元受共済というのは共済金の支払い責任を持って行う共済事業です。元受生協と組合員との間には共済契約が結ばれるわけですが、この共済契約が結ばれている元受生協と組合員との間では、組合員からは契約に基づいて掛金を支払う、掛金支払義務があります。元受生協の方は、共済金の給付義務があります。この共済金給付義務を負うというのは、言い換えれば、共済契約の当事者として契約を結ぶ立場にあるということです。これに対して、受託生協は共済契約の当事者になりません。自分は契約の当事者にならないのですが、間に立って契約の成立のために尽力する。CO・OP共済でいうと日生協が元受になるのですが、その元受である日生協と組合員との間で、契約成立のために勧誘したり契約書を受取って来たり、いろいろなことをするというのが受託生協の事業ということです。
受託生協は共済金の支払義務が無いのですから、兼業の問題とかが無いわけです。会員生協のところでは、元受生協からこちらに移行するというのが必要になるところもありますので、そういうところは、その議決も総代会でしなくてはならないということです。

[参考:会計ルールについて]
10ページに会計ルールというのがあります。その会計ルールは、今までは「生協会計基準」、日生協が作っております自主基準なんですが、これが事実上のスタンダードになって今まで行われて来たのですね。これが初めて作られたのが1985年ですから、もう20年ちょっと前になります。先ほど松葉さんの御挨拶の中で指導検査の結果を受けたご指摘がありましたけれども、会計に関しては行政庁からも「生協会計基準」に則ってやりなさいと指導される場合があるというくらいスタンダードになってきています。今まではそれで良かったのですが、今度の法改正でそれではだめだということになって来たのです。何故かと言いますと、これは先ほど共済事業のところで説明した外部監査の制度が入ったということが大きく影響しています。外部監査の制度というのは、一部の生協しか対象にはならないのですが、しかし対象になった場合は、公認会計士や監査法人が法律の規定に基づいて監査をして、監査意見書を出さないといけない。そういうふうになった時に、元々の会計ルール自体がはっきりしていないと、適正な処理かどうかということをちゃんと言えないわけですよね。なので、会計ルールを法令上のものとして明確にしていくことが必要になって来たということです。会計ルールの検討については、「生協会計基準をベースにしてやって下さいね」ということになっていて、そこは生協サイドの実績もありますから、「そうでしょうね」という話になっています。ですが、公認会計士がうんと言わないとだめなので、公認会計士協会から出てきた代表を含めた研究会などをやって、そこでの合意作りを含めた検討が現在進行中ということです。実際にはこの会計ルールは、財務諸表を作る時の記載の仕方についてのルールがほとんどですが、実際にこのルールに則って財務諸表を作らなければいけないのは2008年度の決算からですね。2008年度決算ということは、2009年通常総代会に出す時からということです。生協会計基準自体も省令のルールに沿って一定の見直しが必要になって来るということがありますから、それも含めて年度が替わってからご案内をするということになると思います。
Ⅰ 改正生協法の概要と対応課題の全体像  Ⅱ.組織・運営規定改正の基本的考え方とガバナンス見直しの視点
【講師】 日本生協連   法規対策室長(兼)改正生協法対策室長 宮 部 好 広 氏

Ⅰ.改正生協法の概要と対応課題の全体像


おはようございます。
今、ご紹介いただきました日生協で、今年の6月21日付で出来た「改正生協法対策室」というセクションの室長をしております宮部と申します。
私はもう10何年も生協法の担当というのをやって来ていて、今回の生協法の改正についても、津村会長にもご参加いただいた「日生協での要求案作りの小委員会」というのを事務局からずっと係わっておりまして、現在はこういう格好で会員生協さんの改正生協法対応のお手伝いをするということで仕事をさせていただいております。
今日は理事さん監事さんという方がたくさんお集まりですので、この生協法改正の内容を時間が限られていますが、出来る限りお伝えして、今後の取組みに役立てていただければと思っています。これから1時間15分位、固い話になるかと思いますが、ご辛抱いただいて、お付き合いいただければと思います。
お手元に資料が3つあるかと思います。一応確認したいのですが、1つは「改正生協法により求められる理事・監事の役割」という薄いもの。もう1つが「地連別・改正生協法説明会」というタイトルで、これは元々は日生協の地連ごとに説明会というのを9月に行った時に使った資料ですので、こういうタイトルになっております。それと、もう1つはこちらのカラーのパンフレットと、この3つを使って説明をして行きたいと思います。
まず「地連別・改正生協法説明会」の冊子を開けていただけますか。今回の生協法改正の背景については、先ほど松葉様のご挨拶の時に少し触れられていたと思います。1ページの一番上のところに、「食の安全への取組みをはじめとする事業を通じた社会的役割の発揮、福祉活動などコミュニティにおけるさまざまな活動から、生協の社会的貢献が高く評価されました。」というふうに書いてあります。その一方でご承知の通り生協法というのは1948年、今から59年前という事になるわけですが、その制定以来実質的な改正はほとんど無いという珍しい法律です。そうすると、いろんなところでのギャップが大きくなってきたというのが大きな背景となっています。
生協法ができた頃の生協の姿でいいますと、主には町内会単位ぐらいの地域生協がメインでありまして、当時の統計での1生協あたりの平均組合員数というのが約555名です。ですから、現行法では、組合員1000人以上の生協は総代会がおけますということですから、当時の感覚で行きますと組合員が1000人以上いるところは大きな生協ということなんですね。その下で行っていた事業は配給制度の末端のところでの分配という事ですから、事業的には極めてシンプルであります。そのような姿を想定して作られているのが現行の生協法でありますので、現在、組合員数100万、数10万というような規模のところもあり、いろんな事業をやっているという中で実態に合わなくなって来たということも大きな背景にあります。それに伴って、総合的な改正が行われているということなんですね。
1ページの下のほうから、「生協制度見直し検討会報告書より」ということで引用しています。この生協制度見直し検討会とは何かと言いますと、今回の生協法改正の内容を検討するために、厚生労働省の中に置かれました審議会のようなものでありまして、この報告書がベースになって今回の改訂内容が組み立てられている。それを一定の範囲で引用していますので、こちらはご参考までにご覧いただければと思います。それから、めくっていただいて2ページの下のほうには、国会審議の政府答弁の中で特に厚生労働大臣が答弁をしている部分を2箇所ぐらいあげています。1点目は今回の改正の背景を説明されている部分、2点目は生協の活動での評価をされている部分ということで、国としてはこんな風な受け止め方をしているんだということをお分かりいただけるかなと思います。
まず1番目の資料では、改正生協法全体についてざっと見て、それに伴ってどんな対応が必要になっているかということをご理解いただくということです。2番目の資料が11ページ以下にありますが、こちらの方で運営規定関連のほうのご説明をするという組み立てで進んで行きます。

1.県域規制
先ほどちょっと触れられていましたが、今までは職域生協と連合会は県域を越えて作れたわけですけれども、地域生協は例外なく都道府県域の中でしか作れないというふうにされて来ました。今回の生協法の改正では、購買事業の実施の為に必要な場合に、例外的に主たる事務所の隣接県の範囲まで県を越えて区域を設定できるようになったということです。これは、今まで全く例外がなかった県域規制ということから見ると、大きな前進と受け止めています。ここで隣接県というのは、例えば大阪府で見れば、兵庫・京都・奈良・和歌山という4つが隣接県になるわけですね。最大で2府3県に渡るエリアの設定まではこの生協法の改正により出来るようになっているということであります。ただこの区域の設定というのはもちろん定款事項でありますから、定款を変更してエリアを拡大しなければならないということですけれども、その拡大するにあたっては購買事業の実施のために本当に必要なのかというところですよね。これが問われるという関係になります。
「対応課題」ということで書いていますが、大きく分けて2つの角度から検討することになるかなと思っております。1つは県境問題。例えば県境のところにお店があって、他の県から来る人が見込まれるという場合、その人たちの加入を認めるために、隣の県全体ということではなくて、隣接している市町村とかの範囲で拡大するということは1つ考えられる角度であります。もう1つは、隣接の地域生協との合併で、合併をすると複数府県の全域にわたることもあるわけですけれども、こういう事が中長期的には検討課題になるかなというふうに思っています。ただこれは、いずれにせよ、まず組合員さんを含めた各生協の中での合意づくりが必要ですし、隣県の生協や県連との調整というようなことも色々有りますので、あんまり短期的にできるものではないのですが、こんなことが実践上には課題になってくるかということです。
下のほうに「地方厚生局のエリア」というふうにあります。生協の管轄は区域が都道府県内にある場合は都道府県、区域が都道府県を越えて設定されている場合は都道府県の管轄ではなくて地方厚生局の管轄となります。地方厚生局のエリアというのはこの表のように決まっています。近畿であれば、西は兵庫まででありますので、例えば兵庫と岡山にまたがって作るということになりますと、地方厚生局のエリアも越えます。こういう場合は、認可も含めて本省の管轄になるということです。

2.員外利用規制
員外利用規制について、今まではどういうふうになっていたかと言いますと、組合員以外の者にはその利用をさせてはならないという原則禁止規定があります。例外があるのですが、主には行政庁の許可を得た場合ということで、つまり行政庁の許可を得たら員外利用が出来るということなんですね。ところが、生協法は結構古い法律なので、何の基準も示さずに行政庁に許可権限が与えられているわけですね。最近の法律ではそんな作り方をせず、法律上許可権限を与えたりする時は、こういうふうな場合にという形で例示をしたり、どういう角度なのかということを補充的に説明したりするのですけれども、この生協法の員外利用規制のところにはそうした規定は一切なくて、行政の自由裁量任せというのが今の仕組みだったわけです。改正生協法では、立場を大きく転換して、員外利用が認められるケースというのを法律あるいは省令で明らかにしようということになっています。したがって、その部分は行政の透明性で言いますとかなりの進歩と言えますし、今回員外利用を認める事由として法律で定められているものの中には、今まで正面から認められていなかったものも入っているということで、一定の緩和ないし前進であるというふうに我々としても受け止めているところであります。
では、員外利用を認めて良いケースというのはどんなものかということですけれども、4ページの上の角が丸い四角の中に表があります。表の一番左に許可が必要、不要という記載がされています。これはどういう意味かと言いますと、今まではすべからく行政庁の許可を得なければならず、例えば医療事業をやる場合、医療生協をつくるわけですが、その場合にも員外利用許可を得ていました。医療事業というのは患者さんが来た時に断ってはいけませんよという基本的なルールがありますから、法律上組合員でないので診療できませんとはならないのですが、そうした場合でも、設立の時にこういう理由ですので員外利用を許可して下さいと申請をして、許可を得て初めて員外利用OKになるので医療事業ができるという構造になっていた訳です。改正生協法では、下の不要と書いているグループはいちいち許可を取るということをしなくていいということになりました。例えば医療・福祉事業はいちいち員外利用許可を得なくとも、医療・福祉事業をするときは当然に員外利用が認められるという構造になっている。もう1つ例を挙げると、「特定物品」というのが4番目にありますけれども、この中の代表格がお酒であります。お酒を販売するには、販売免許を取る必要があるわけですけれども、その時にヘンテコな理屈がくっ付いていて、生協の場合には員外利用許可を貰わないとお酒の免許をあげませんよというふうになっていたわけですね。それで、以前はなかなかお酒の免許が取れなかったわけですけれども、今回お酒はおそらく特定物品の中に定められるので、そうしますとお酒の免許を申請する時に、いちいち員外利用の許可を取る必要がなくなり、免許の取得だけでいいということになるわけです。
一番上の必要と書いたのが1つだけありますが、山間僻地など不便な場所で生協ぐらいしか買い物をするところがないという場合に、そういう所は住民が大変だから員外利用許可を認めましょうというのが、この一番上の事由です。しかし、この事由については本当にそういう不便な場所であるかどうか、生協を利用しないと住民が本当に困るのか、という点が分からないので、個別にそうした点について審査する必要があります。そうした事情もあって、この事由については該当するので許可して下さいと許可申請を出して、許可を得てはじめて員外利用が認められることになります。許可必要グループとしては、これに省令で定める事由というのもあります。省令でどんな事由を定めるかは今検討中ですが、その下の●の3番目のところにありますが、「生協間取引、保育所、老人ホーム等への物資提供とか、職域・大学生協の来訪者による利用や関連団体による利用など」が現在検討されています。職域自体への提供というのは法律で直接定められているのですが、職域自体ではない、例えば職場の労働組合や互助会に商品を提供することが必要な場合もあるので、省令の中で認めて下さいということで要望を出して検討されています。
各事由の説明はここまでとしますが、もう1つ説明しておかなければならないのが員外利用分量の制限です。分量制限があるものと無いものがありまして、②から⑥までは分量制限がありません。許可不要でかつ分量制限がないということは、この部分については生協に任せますので主旨にそぐわないことをやらないようにちゃんとやって下さいね、という意味であります。それ以外の①⑦⑧あるいは省令で定める部分というのは分量制限が付きます。省令で定める部分というのはすべて許可必要・分量制限ありグループの中に入るわけですけれども、それを含め、基本的には員外利用の分量は組合員の利用分量の5分の1。これが原則で、医療・福祉事業については公共性が高いサービスなので、組合員利用の総額、つまり組合員の利用と員外利用とが1対1ということですね。総利用分量の半分までは組合員の利用でということです。半分まではというのは、農協法の規定をそのまま持ってきて横並びということなんですけれども、そうなっている理由としては、あくまで組合員向けの事業なんだということです。生協はもともと組合員の為に事業を行う組織なわけですから、大半が員外利用であるのはまずいのではないかというのが、1対1で定めた理由ではないかというふうに思っています。なお、ここでいう員外利用分量というのは金額を指します。
[対応課題]のところは、これは許可が必要なものについては許可を得る申請をしなければいけないので、その準備を考えるということです。
3番の組織・運営規定のところは後ほどやりますので、ここではちょっと省略をして、共済事業関係のところに行きます。

4.共済事業関係
今回生協法の改正が実現した最も大きな要因は、ある意味で共済事業なんです。今回の改正はほぼ全面的な改正で、第1章の総則から第9章の罰則まで生協法のすべての章にわたって改正が行われています。本当に全面的な改正なんですけれども、これが実現した大きなきっかけは、共済事業関係の改正をどうしてもやらなければいけない状況に追い込まれたということです。
本当は厚生労働省の方は生協の改正をしたくはなかったのです。したくなかったというのは、まず実務も大変であるというのもありますけれども、もう20年以上前に生協規制が凄かった時期というのがあったわけです。その頃、自民党の中で生協法の「改正案」というのが作られました。これは当時、大店法という法律がありまして、出店調整の手続きなどを定めていた法律なんですけれども、これに類似した出店調整の手続きを生協法の中に義務づけたり、員外利用規制のところの罰則といいますか、それにかかる行政措置のところを強化したり、というような規定強化策の改正案みたいなものが出されて、自民党としての党議決定の寸前まで行ったということがありました。
そんな経過の中で、生協法改正の話を持ち出したら大変なことになると、そういう記憶がトラウマのようにずっと残っているわけですよね。生協側では状況が変わってきていると思っていましたが,絶対大丈夫だというほどの材料もなく、厚生労働省としては及び腰だったわけですけれども、共済事業のところについては法改正をしないとしょうがないという状況に追い込まれたのです。何故かということですが、保険と共済のところの問題がかなり先鋭化してきたことが背景になっています。以前、何かの雑誌の表紙にグラフが載っていたのですけれども、生命保険会社の個人向けの商品の加入者数が減っているわけですね。一方、生協の共済の全労済・全国生協連・日生協のコープ共済という、この3つが凄い勢いで伸びているので、保険業界としてはかなり危機感を持ってきました。もともと保険業法というのはかなり規制が厳しいのですが、協同組合の共済というのは、保険業法の規制から比べれば規制は緩やかですし、生協法に至っては法律上の規制は殆んどないというような状況で、全部通達とかでやっていたわけです。さらに、共済について言いますと、生協が行う場合は当然認可を受けて行わなければいけないのですが、任意団体が無認可で共済をするということは、実は禁止されていなかったのです。そうした事情の中で、保険と共済との扱いが制度上不公平ではないかということで、保険業界なり外資の保険会社などから、同じような規制を求める声が強く出され、どんどん外堀が埋まっていったわけです。2004年に農協法が改正されて、農協共済に関する制度が保険業法をかなり意識した形に整備され、2005年に保険業法が改正されて、無認可共済が原則的に出来なくなった。本当に職場の互助会の共済というのは別ですけれども、そうでないものは小規模短期保険業者ということで、参入規制がかかって、いろんなルールが定められました。2006年には、中小企業等協同組合法が改正されて、中小企業共済についても規制がかかってくる。そうなった時に、中小企業共済よりも生協共済のほうが、加入者数も多くて社会的影響は物凄く大きいわけですよね。個人向け商品の加入者数で言いますと、先ほどいった3つの生協の共済が、3つともトップテンに入っているのです。そういうところが、制度の整備をやらないで済むというわけには絶対いかないのです。そうした中で、共済事業に関する部分を法改正するとなると、ずっと手がついてなかった運営規定部分の所もやらなければいけないだろうという事になります。それだけでも法改正としては大変なボリュームになるわけなので、それだったら日生協がその前にまとめている要求案というのがあるわけだから、それらについても検討しましょうということになって、今回の総合的改正につながったという経過があるのです。
それで共済事業関係のところでは、主に元請け生協のところでの規制がかなりかかるという構造になっています。一番大きいのは、リスク遮断のための兼業規制と子会社規制ということであります。どういうことかと言いますと、共済事業というのは銀行とかとは形は違いますが、お金を預かる事業なんですね。普通、購買事業の場合は、例えばこういう物を買う時、お店に行ってこれと引き換えにお金を渡しますね。無店舗事業の場合は、注文した商品が届いた時にお金を払わないで後で払います。お金を払うのは、物を受け取ったのと同じ時か、あるいは後でということになるわけですけれども、共済事業の場合は、予め掛金を貰うわけですね。例えば亡くなったら、あるいは入院したら、これだけの給付をしますよと約束をした上で、先に掛金を貰うわけです。ですから、掛金を集めておいて実は共済金は払えませんという話になると、これはまったく詐欺と同じなわけですよね。例えば、共済事業と購買事業を一緒にやっているというケースで、購買事業のほうが実は物凄い大赤字で共済事業のほうのお金でその赤字を補てんするような状態だったとします。そういう状態のもとで、1つ大災害が起こって、給付の申請が集中したりすると払えないということになりかねないわけです。だから、一定規模以上のところに関しては共済事業と他の事業とのリスクを遮断するべきだ、というのが基本ルールになります。兼業禁止の基準は、受入掛金総額10億円以上と現在のところ想定されています。実際には政令で定めることになっていますので、確定をしているわけではありませんが、恐らくこの数字になると思います。単位生協では、この基準に該当する場合に共済事業以外の事業を行えないということになりました。また、連合会は規模にかかわらず、元受共済事業を行う場合、他の事業は行えません。
言い換えると、単位生協の場合、受入掛金総額が10億円以内なら、共済事業と他の事業を兼業できるわけですが、子会社を使って兼業規制を免れるということも考えられるわけですよね。子会社に保険会社を持って、一定部分は共済としてやり、一定部分は子会社の保険事業としてやるとなると、生協自体の規模は上がらなくても、実質的には子会社でやっているのだから、そこは同じではないかという話になってしまう。あるいは兼業規制がかかって共済事業しかやってはいけませんということになっている生協が子会社を作って購買事業をやるということが出来ると、これもあんまり意味がないわけですよね。ということなので、そういう意味で子会社規制というのもここに入ってくるということです。
それから、経営の健全性確保のためのルールが、いろいろ整備をされています。最低出資金制度が導入されまして、単協でしたら1億円以上、連合会でしたら10億円以上というような数字が入って来ます。それから諸準備金は責任準備金だとか支払準備金だとか、いろいろあるのですが、積立ての充実をする。法定準備金も積立義務が、元受共済業務を行う場合は重くなります。皆さんは役員になった時に、毎年の決算のところで、剰余金の10分の1以上を法定準備金として積まなければいけませんよというのをお聞きになったことがあるかと思いますが、元受共済事業を行っている場合は、この10分の1が倍の5分の1になります。そうした資本基盤の整備とか、それから特に大規模な場合には外部監査として公認会計士とか監査法人による監査制度が導入されるということです。
それから、契約者保護のためのルールの整備ということもあります。結局は共済事業というのは目に見えない商品ですよね。入院保障金が1日いくらですよとか、死亡保障はいくらですよといった約束事が束になったような商品です。だから形がないし目にも見えない。そういうものなので、本当に理解して入ってもらわないと、こんなはずじゃなかったということになりかねないわけですので、嘘をついて勧誘してはいけないなどの形で禁止行為が明確化されました。ごく当たり前のルールなのですが、それが今までの生協法の中にはまるで無かったので、法律上ちゃんと決めましょうということが1つです。逆に、入っていただく時には、悪い勧誘はしないというだけでは理解はいただけないわけですので、ちゃんと説明して分かってもらうということもしなくてはいけない。それの為のルールも省令できっちりと定めましょうということであります。この部分は元受共済生協に限らず、受託共済として行う場合でも、契約者の方と直接やりとりをするというのは同じですから、この部分は両方に適用されるということであります。
対応課題としてはいろんなものがありますが、共済事業のところでしゃべり過ぎたので、少し飛ばします。

5.医療・福祉事業関連
今日、医療生協の方もかなりご参加いただいております。医療・福祉事業のところで言いますと、1つは「医療事業」「福祉事業」という言葉が生協法の中に初めて登場したのです。今まで生協法の中にはそういう言葉はありませんでした。実は、生協は法律に定めた事業しか出来ないよということになっています。生協法の10条という規定がありまして、「組合は、次の事業の全部、または一部を行うことができる」と書いてあります。この出来るというのが曲者で、逆から読むと「全部、または一部の事業以外は行なえない」と読むのですね。その書かれている事業とは5つプラス1でした。供給事業・利用事業・生活文化事業・共済事業・教育事業が5つの事業で、後はそれぞれに付帯する事業がプラス1になるわけです。これのどれかに入っていない事業は行えないというのが基本的な枠組みだったわけです。ここに医療も福祉も全然出てきませんよね。では、医療や福祉は何を根拠にやっていたかと言いますと、この利用事業というのが、実は非常に広いのですね。ほとんどのサービス事業は利用事業に入ってしまうということで、利用事業の中の1つとして、医療とか福祉とかも有りますよという格好で扱われてきたというのが、今までの経過なんです。最近はそうは言われないと思いますが、医療生協の昔から取り組んでおられた方の文章を読んだ時に「何で生協が医療事業なんかをやるんだ。医療事業というのは公共の為にやるものではないか。生協は組合員組織だから、医療事業をやるのはおかしいのではないか」といった言われ方をしたこともあったようです。今回の生協法改正で、医療事業や福祉事業とかが生協の法の中にちゃんと書かれるということになりましたので、そういう意味で言いますと、医療事業・福祉事業を主体とした生協がかなり法的に認知をされて来たということの反映だというふうに言えるかとも思います。
次に、医療福祉等事業については区分経理をしなさいというふうになりました。区分経理をしなさいというのは、医療福祉事業というのはいろんな事業がありますけれども、コアになっているのは、公的保険によって収入を得るという事業ですね。お医者さんにかかりに行った時に、今は3割負担ですが、3割負担ということは言い換えれば7割は社会保険の方からお金が出るという構造になっているわけです。介護保険についても、介護保険からの給付というのがあるわけで、それが収入の基盤になっているものである以上、例えば、その部分で儲けたお金を割戻しするというふうになったらおかしいのではないか、という議論があるわけですね。その医療福祉等事業のところについては、そういう意味から、公的保険によるような事業を中心に、他の事業と区分して経理をしなさい。そこで生じた剰余金というのは積立金にして、その積立金は医療・福祉事業でしか使えない。言い換えると、他の事業に使ったり、割戻しをしたりということができないということです。
購買生協の場合は、もともと購買事業というのが大きくあって、それと一緒に福祉事業とかをやっていますので、絶対区分経理をしなくてはいけないのですが、医療生協の場合は、ほとんど医療・福祉に関する事業しかやっていません。でも、厳密に言うと一部入るかどうか分らない事業があります。例えば、病院の中の売店で物を売ったり、あるいは駐車場で患者さんからお金を取るということが仮にあった場合、その部分だけ分けるのか、という議論になるわけです。そういう細かい付随的な部分を逆に別管理していかなければいけないということになると、これはあまりに煩雑なので、そういう付随的事業は一括にしてしまってかまわないよというような方向で、今整理をしようということになっています。具体的には省令で定めるということになっておりまので、省令が出て来ないと分りませんが、方向としてはそういう形になっています。

6.その他
それから、その他ということで、総代会の設置基準が今までは組合員1000人以上でないと総代会を置けないというふうになっていたのですが、今回は500人以上に引下げられました。言い換えると、今まで800人とか900人とかの組合員の生協は、毎年総会を開かないといけなかったわけですが、今後は総代会を設置して、総代会で決算を承認したり事業計画を決めることができるようになるという意味です。
職域生協・大学生協の組合員資格のところにも変更がありました。職域生協のところでは、組合員資格が今まで2つだったのですね。1つは職域に勤務している人、もう1つはその職域の付近に住んでいる人。この2つしか組合員資格が無かったのですけれども、新たに1つ加わりました。それは、その職域に勤務していた人、退職者ということですね。退職者は、今までは付近に住んでいる人として入ることは出来たのですが、遠くに引っ越してしまったら、残っていられないということがあったわけですけれども、それに関係なく退職者は組合員として残れるようになったということです。それと、大学生協は職域タイプの生協として作られて来ていますが、大学生協の学生の組合員資格というのは、実は表から定めたものが無くて、勤務している者も言えないので、付近に住んでいる人として入っていたわけですね。それは、あまりにも変てこだということで、大学生協の場合は学生も組合員になれると明記しましょうということになりました。
貸付事業のルールとかも定められたんですけれども、一番下のところにある、従来「教育事業繰越金」と呼んでいたものがあります。毎年の総代会の議案書で決算の剰余金処分のところに、必ず教育事業繰越金が5%以上なければいけないということで、それを翌年の教育事業に使いましょうということになっています。その使い道として、教育事業だけではなくて、組合員の福祉活動の助成に充ててもかまわないというふうになりました。しかし、もともと教育事業繰越金だけでは、翌年の教育関係の経費を賄いきれず、だいぶ持ち出ししてやっていますので、実践的な影響というのはほとんどありません。むしろ大きいのは、組合員の福祉活動というものをある意味奨励するという趣旨が法に盛り込まれたことです。今まで、組合員の活動は自主的にやっていただけで、法律上それを評価するものは何も無かったわけですけれども、非常に重要な活動だということがはっきりすることになったわけです。

[別紙:共同引受の受託移行と新共済連設立に関わる留意事項]
これは日生協のCO・OP共済をやられているところが関係して来るんですけれども、日生協自身が共済事業と購買事業といろいろやっています。日生協は連合会で、連合会が元受共済事業をやる場合は、他の事業が出来ないので、日生協自身を分割しなければいけないことになります。どういう形で分割するかということなんですが、いろいろ検討してきた結果、新しい連合会を作って、そこに日生協の共済事業部分を全部持って行くという形になりました。そうしますと、CO・OP共済をやっている生協はそれぞれが新しく出来る共済生協連に加入しなければいけない。加入しないと、そこの業務を受託してやるということが出来ませんので、そっちにも加入していただく。その加入の議決というのは、連合会への加入なので、総代会議決事項ですから、総代会に提案をして加入の議決をしてもらわないといけないということになっています。
それと、後はさっきの兼業規制の対象になる生協というのがあります。そういう生協については、単位生協を分割することは事実上無理なので、元受共済であることをやめて、受託共済にするということです。元受共済というのは共済金の支払い責任を持って行う共済事業です。元受生協と組合員との間には共済契約が結ばれるわけですが、この共済契約が結ばれている元受生協と組合員との間では、組合員からは契約に基づいて掛金を支払う、掛金支払義務があります。元受生協の方は、共済金の給付義務があります。この共済金給付義務を負うというのは、言い換えれば、共済契約の当事者として契約を結ぶ立場にあるということです。これに対して、受託生協は共済契約の当事者になりません。自分は契約の当事者にならないのですが、間に立って契約の成立のために尽力する。CO・OP共済でいうと日生協が元受になるのですが、その元受である日生協と組合員との間で、契約成立のために勧誘したり契約書を受取って来たり、いろいろなことをするというのが受託生協の事業ということです。
受託生協は共済金の支払義務が無いのですから、兼業の問題とかが無いわけです。会員生協のところでは、元受生協からこちらに移行するというのが必要になるところもありますので、そういうところは、その議決も総代会でしなくてはならないということです。

[参考:会計ルールについて]
10ページに会計ルールというのがあります。その会計ルールは、今までは「生協会計基準」、日生協が作っております自主基準なんですが、これが事実上のスタンダードになって今まで行われて来たのですね。これが初めて作られたのが1985年ですから、もう20年ちょっと前になります。先ほど松葉さんの御挨拶の中で指導検査の結果を受けたご指摘がありましたけれども、会計に関しては行政庁からも「生協会計基準」に則ってやりなさいと指導される場合があるというくらいスタンダードになってきています。今まではそれで良かったのですが、今度の法改正でそれではだめだということになって来たのです。何故かと言いますと、これは先ほど共済事業のところで説明した外部監査の制度が入ったということが大きく影響しています。外部監査の制度というのは、一部の生協しか対象にはならないのですが、しかし対象になった場合は、公認会計士や監査法人が法律の規定に基づいて監査をして、監査意見書を出さないといけない。そういうふうになった時に、元々の会計ルール自体がはっきりしていないと、適正な処理かどうかということをちゃんと言えないわけですよね。なので、会計ルールを法令上のものとして明確にしていくことが必要になって来たということです。会計ルールの検討については、「生協会計基準をベースにしてやって下さいね」ということになっていて、そこは生協サイドの実績もありますから、「そうでしょうね」という話になっています。ですが、公認会計士がうんと言わないとだめなので、公認会計士協会から出てきた代表を含めた研究会などをやって、そこでの合意作りを含めた検討が現在進行中ということです。実際にはこの会計ルールは、財務諸表を作る時の記載の仕方についてのルールがほとんどですが、実際にこのルールに則って財務諸表を作らなければいけないのは2008年度の決算からですね。2008年度決算ということは、2009年通常総代会に出す時からということです。生協会計基準自体も省令のルールに沿って一定の見直しが必要になって来るということがありますから、それも含めて年度が替わってからご案内をするということになると思います。