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2007年度大阪府生協連「社会福祉問題研修会」を開催『ワーキングプアの増大と今後の社会保障制度を考える』

Ⅰ.貧困を考えることの意味  Ⅱ 現代の貧困の特徴  Ⅲ 現代の貧困化の構造
Ⅳ 突き当たった「最低生活の岩盤」 Ⅴ ナショナル・ミニマムの体系  
Ⅵ ナショナル・ミニマムの機軸としても「最低生計費」

講師: 佛教大学 社会学部 教授 金澤 誠一 氏
■日時:2007年7月9日(月)  ■場所:大阪府社会福祉会館3階第3会議室
『現代の貧困と「最低生活の岩盤」』

Ⅳ 突き当たった「最低生活の岩盤」


さて、貧困の特徴とその貧困を生み出す構造についてお話したわけですけれども、「貧困を語る」ということは、ただ単に貧困の実態を語るだけではなく、「貧困の解決を求めて止まぬ」そういう運動・政策、あるいは主体的あり方ということが問題になってくると考えられるわけです。
現代の貧困が進化・拡大しているとは言え、それは何の矛盾もなく貫いて行っているとは考えられないのでありまして、おそらく国民の抵抗というものが現れて来るだろうと考えているわけであります。それが、突き当たった「最低生活の岩盤」ということであります。
各団体はそれぞれの貧困化に至る道筋というものがあると思うのですが、その道筋に沿ってこの岩盤に突き当たるのではないかというふうに考えております。
「人間に値する生活」とはどの程度の消費水準なのかをいち早く問いかけたのが、京都総評の「最低生計費試算」というものであります。全労連や連合では、時給1,000円以上、年間200万円保障を掲げて最低賃金闘争が進められています。これは、生活保護基準をベースにしてそこから割り出したものであります。
あるいは、「生存権裁判」というのが今闘われていまして、老齢加算廃止や母子加算廃止に対する「生存権裁判」というのが行われているわけで、「人間に値する生活」とは何かをめぐって、京都から始まり秋田、新潟、広島、北九州、東京、青森、神戸というふうに、現在8地域に広がっていまして、原告が合わせて100人を超えているというような状況であります。5月19日には「生存権裁判を支える全国連絡会」が小川政亮先生を代表として結成されたということであります。朝日訴訟から50年経過していまして、2つに渡って小川先生は係わっていることになるかと思うのであります。
さらには、「北九州餓死事件」というのが闘われていまして、北九州の生活保護の申請を断られ餓死に追い込まれたという事件ですが、申請を受け付けないという、生活保護の原理には無差別平等の原理というのがあり、他方では補足性の原理というのがありまして、申請の段階で厳しくチェックしているわけで、それが悲劇をもたらしたということであります。それで、無き寝入りをしている人たちもたくさんいるだろうということで、中央社会保障推進協議会や全国生活保護裁判連絡会などによる「北九州生活保護問題調査会」が組織され、相談・聞き取り、110番活動、同席申請などの活動が行われていました。
さらに、国保をめぐる闘いというのが各地でおこっているわけで、国保の資格証明書や短期保険証の発行が国民の生命を奪っている深刻な事態、要するに健康保険証が無い、資格証明書だと一時10割を自己負担しなければいけない。領収書を持って市町村の窓口へ行けば保険診療分は戻ってくると言っても、一時負担が出来るかという問題なのです。そういうふうな人々の問題というのが起こってくるわけであります。
あるいは、障害者自立支援法をめぐる闘いというのも各地域で展開されているということでありまして、それで最低限度の生活が出来るのかという問題がおこってきているわけです。あるいは年金者組合による最低保証年金を求める運動であるとか、また最近注目されるのは、フリーターなどの非正規雇用の青年労働者たちが組織して「首都圏青年ユニオン」というのを作っているということです。さらに「反貧困キャンペーン」を展開している反貧困ネットワークの運動など、それぞれの団体による多様な運動が展開されるようになってきているわけです。
非正規雇用=低所得層が増加すればするほど正規職員の賃金も上がって行かない。むしろ低所得層が増えてくれば、「あの賃金は高い」とか「生活保護水準も高い」と足を引っ張り出して来るわけです。ですから非正規雇用労働者、あるいはワーキングプアの人たちの生活を保障しなければ、正規職員=基幹労働者・サラリーマンの生活も危ぶまれる。自分たちの生活の水準も下がって行く。それぞれの「貧困化への道筋」にそった運動が、それ以下の生活は許せない・受け入れがたい「最低生活の岩盤」に突き当たったのではないかと考えられます。
「最低生活の岩盤」が一枚岩となって横に連なり、それらの運動を相互に結びつけるものと考えられる。それがナショナル・ミニマムの体系であります。
Ⅰ.貧困を考えることの意味  Ⅱ 現代の貧困の特徴  Ⅲ 現代の貧困化の構造
Ⅳ 突き当たった「最低生活の岩盤」 Ⅴ ナショナル・ミニマムの体系  
Ⅵ ナショナル・ミニマムの機軸としても「最低生計費」

講師: 佛教大学 社会学部 教授 金澤 誠一 氏
■日時:2007年7月9日(月)  ■場所:大阪府社会福祉会館3階第3会議室
『現代の貧困と「最低生活の岩盤」』

Ⅳ 突き当たった「最低生活の岩盤」


さて、貧困の特徴とその貧困を生み出す構造についてお話したわけですけれども、「貧困を語る」ということは、ただ単に貧困の実態を語るだけではなく、「貧困の解決を求めて止まぬ」そういう運動・政策、あるいは主体的あり方ということが問題になってくると考えられるわけです。
現代の貧困が進化・拡大しているとは言え、それは何の矛盾もなく貫いて行っているとは考えられないのでありまして、おそらく国民の抵抗というものが現れて来るだろうと考えているわけであります。それが、突き当たった「最低生活の岩盤」ということであります。
各団体はそれぞれの貧困化に至る道筋というものがあると思うのですが、その道筋に沿ってこの岩盤に突き当たるのではないかというふうに考えております。
「人間に値する生活」とはどの程度の消費水準なのかをいち早く問いかけたのが、京都総評の「最低生計費試算」というものであります。全労連や連合では、時給1,000円以上、年間200万円保障を掲げて最低賃金闘争が進められています。これは、生活保護基準をベースにしてそこから割り出したものであります。
あるいは、「生存権裁判」というのが今闘われていまして、老齢加算廃止や母子加算廃止に対する「生存権裁判」というのが行われているわけで、「人間に値する生活」とは何かをめぐって、京都から始まり秋田、新潟、広島、北九州、東京、青森、神戸というふうに、現在8地域に広がっていまして、原告が合わせて100人を超えているというような状況であります。5月19日には「生存権裁判を支える全国連絡会」が小川政亮先生を代表として結成されたということであります。朝日訴訟から50年経過していまして、2つに渡って小川先生は係わっていることになるかと思うのであります。
さらには、「北九州餓死事件」というのが闘われていまして、北九州の生活保護の申請を断られ餓死に追い込まれたという事件ですが、申請を受け付けないという、生活保護の原理には無差別平等の原理というのがあり、他方では補足性の原理というのがありまして、申請の段階で厳しくチェックしているわけで、それが悲劇をもたらしたということであります。それで、無き寝入りをしている人たちもたくさんいるだろうということで、中央社会保障推進協議会や全国生活保護裁判連絡会などによる「北九州生活保護問題調査会」が組織され、相談・聞き取り、110番活動、同席申請などの活動が行われていました。
さらに、国保をめぐる闘いというのが各地でおこっているわけで、国保の資格証明書や短期保険証の発行が国民の生命を奪っている深刻な事態、要するに健康保険証が無い、資格証明書だと一時10割を自己負担しなければいけない。領収書を持って市町村の窓口へ行けば保険診療分は戻ってくると言っても、一時負担が出来るかという問題なのです。そういうふうな人々の問題というのが起こってくるわけであります。
あるいは、障害者自立支援法をめぐる闘いというのも各地域で展開されているということでありまして、それで最低限度の生活が出来るのかという問題がおこってきているわけです。あるいは年金者組合による最低保証年金を求める運動であるとか、また最近注目されるのは、フリーターなどの非正規雇用の青年労働者たちが組織して「首都圏青年ユニオン」というのを作っているということです。さらに「反貧困キャンペーン」を展開している反貧困ネットワークの運動など、それぞれの団体による多様な運動が展開されるようになってきているわけです。
非正規雇用=低所得層が増加すればするほど正規職員の賃金も上がって行かない。むしろ低所得層が増えてくれば、「あの賃金は高い」とか「生活保護水準も高い」と足を引っ張り出して来るわけです。ですから非正規雇用労働者、あるいはワーキングプアの人たちの生活を保障しなければ、正規職員=基幹労働者・サラリーマンの生活も危ぶまれる。自分たちの生活の水準も下がって行く。それぞれの「貧困化への道筋」にそった運動が、それ以下の生活は許せない・受け入れがたい「最低生活の岩盤」に突き当たったのではないかと考えられます。
「最低生活の岩盤」が一枚岩となって横に連なり、それらの運動を相互に結びつけるものと考えられる。それがナショナル・ミニマムの体系であります。