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大阪府生協連合会「社会福祉問題研修会」講演録 「高齢社会における地域福祉の活動を考える」

1.Connecting Communities  2.恐るべき尼崎医療生協
3.大阪府生活協同組合連合会の可能性
講演:立命館大学 産業社会学部教授 リム ボン氏
■日時:2006年7月20日(木)  ■場所:大阪府社会福祉会館3階第2会議室

2. 恐るべき尼崎医療生協


さて、生協の話ですが、大阪府生活協同組合連合会の話をやる前に、私と生協の関りというのは、もちろん、わたしは学生の頃、大学生協に加入していました。それから、購買生協にも加入していましたが、ただの消費者というだけで、生協に入ったらいいものがあると、しかも1割引で買えるというだけの事で加入してただけで、運動なんか全然関与したこともありません。ところが、13年前に今の職場に行った時に日本生活協同組合連合会医療部会、医療生協と共同研究ブロジェクトをやるようになって、それ以来、医療生協とは、ずっとお付き合いさせていただいて、結構声をかけていただいて、楽しいプロジェクトをいっぱいやらせてもらっています。
その内の1つに、医療生協の職員の「職員アンケート調査」というのを2回やりまして、2回目が1999年だったんです。この職員のアンケート調査をやっていた時に、当時の事務局長に集計をする前に、事務局長としては今、日本の医療生協で1番元気があって、面白いところはどこだとおもいますかと言うと、尼崎が面白いですよと言ってくれました。当時は、医療生協で全国トップ3とか言うと、大体出てくるのが、埼玉医療生協だとか、大阪の淡路、それから城東鶴見、名古屋の港医療生協、こういったところに調査に行けと言われたのですが、尼崎がけっこう面白くなってきたという話を聞きました。そうかと思って、職員アンケートを集計していて、自由記述なんか見ると、やっぱり熱心なコメントが非常に多かったので、なるほどなと思ったのです。
城東鶴見は桁外れに凄かったですが、ああいう大きいところではなくて、もっと小さいところで動き出したという意味で、その尼崎の凄さを知ったのが、2001年に、尼崎医療生協に呼んでもらって、何かしゃべれと言われたんです。その時に、私がお話したのは、医療生協があってくれて良かったなあという地域になれば、組合員さんが当然増えるわけです。93年から医療生協とお付き合いしだした時に、街づくりというジャンルでやってきましたから、実は私は医療とか保健の事はまったく知りませんでした。私が自己主張するためには街づくりしかキーワードがないので、医療生協と街づくりと強引につないで、「地域まるごと健康づくり」と主張したんですね。そしたら、医療生協は非常に懐が深いところで、それを受け入れてくれたんです。
なぜ「地域まるごと健康づくり」かと言いますと、たとえば、医療生協というのは、こういう政治色です、こういった人たちで成り立っていますとなったら、うちは自民党やと、まずこうなってしまうわけではないですか。だけど、医療生協の凄いのは、みんなが健康になりましょうということを言っていて、これは思想心情を問わず、老若男女を問わず、人類の誰もが欲する共有課題です。その事に、お医者さんを中心とした専門家が上からではなくて、組合員さんたちが主役になって作っていって、病院を経営して、医者を雇っているわけです。そういう組織が元気でいてくれると、地域は非常に安心出来る。つまり、医療生協が元気であればあるほど地域丸ごと元気になりますよという事は、自治体にとっては非常に有り難いことです。ですから、自治体なんかをどんどん巻き込んで行きましょうという話をしました。そしたら、必然的に組合員さんも増えやすいのではないでしょうかと、素人意見を言ったんです。
2001年の尼崎の講演でも言いました。そういう事を目に見えてするために、ちょっと恥ずかしいけれども「けんこう探偵団」と称して、大人だけでなくて、高齢者の方も、子育て世代のお母さんも、それから小学生も連れて、地域の探偵をして、町並みチェックをして、ここがいいとか悪いとか、そういう事をチェックして、行政に要求したらどうですかと。その時言ったのが、行政の担当者も人間ですから、いきなり糾弾ありきみたいな、なんとか解放同盟みたいな、要求だけでなくて、まず相手にご苦労さまですと言ってあげて、だけどこういう問題が地域にあります。場合によっては、地域の調査の時に一緒に、たとえば公園を見に行く時は公園課の人も一緒に来て、町並みチェックしませんかと、そうしたら変わるのではないですかと、提起をしたんですよ。
私は講演に呼ばれて、その場限りで、その話を忘れていたんです。そしたら、しばらくして「けんこう探偵団」やるので、町並みチェックをやるので、もう1回出てこいと言われて行ったら、驚いたことに「けんこう探偵団」ののぼりまで作ってしまっていて、ここのセンスが凄いなと思ったのは、健康を漢字で書かずに、ひらがなでけんこうと書いてありました。恥ずかしかったですね。僕はみんなと歩くのはいやだと言って、僕だけ自転車に乗って、全体を見まわしますとか言ってたんです。
しばらくすると、今度は町並みチェックで、国道2号線に行きました。国道2号線というのは、震災の後でもありましたから、非常にダンプカーがたくさん通るんですね。そしたら、ガードレールがあるんですけれども、ある交差点のところに、雨降りに、小学生の子が雨ガッパを着て歩いていて、ダンプカーが通ったら、水しぶきが頭からまともに来る。こういう所は、この交差点の信号がこう問題で、子どもたちにこう水がかかってというのを、尼崎市役所に持って行ったら、担当者は驚愕してたというのです。普通の要望は苦情だけだけど、あなた達みたいに調査までして、ここでこうなって、いつどうなって、だからここをこう改善するべきだと問題提起されたら、やらざるを得ない。
そこで、次やったのは公園調査で、本当に公園課の人を連れて行ったんです。そしたら、その担当課長さんが、頼みもしないのに自ら、ここはこういうふうに改善しなければいけないと、やってくれたと言います。
それから、今尼崎医療生協は市長さんとの関係も非常に良くて、この9月30日には、市長さんが尼崎医療生協に来てくれて、一緒にシンポジウムをやろうという事になっているそうなんです。
去年、新たな通信教育をやるという事で、ちょっと参加させてもらったんです。通信教育というと、こんな分厚いテキストにレポートを書かせて、普通の人はそんな事いやでしょうから、そんな事やめましょうと、絵本にしたんです。見開き1ページで7章ぐらいで「医療生協とは何か」ぱっと見て解る。医療生協とは何か、医療生協とは医療生協法に基づく、何とかかんとかで、地域と何とかの自主的活動による革新的取り組み・・・こんな事医療生協の幹部でも暗記していますか?してないでしょう。そんな事、初めて生協に入る組合員さんに、しかも30年ぐらいレポートを書いたことのない人に、いきなりさせて、やる気おこりますかというのです。医療生協とは、自分たちのお金を出し合って、病院、診療所を経営する団体ですと、法律的には生協法で認められています。それでいいじゃあないですかって言ったら、すっと入ってくる。もっと勉強したい人は、アドバンスドクラスでこんな事して下さいという事で、その理でやると、結構またこれも楽しく出来ます。
なお且つ、今尼崎医療生協は何をやってるかといいますと、特別養護老人ホームを新しく作ったのです。去年、まずは寄付金を3ヶ月で1億円集めたんです。来年は病院を30億円で建て替える。病院の建て替えは、向かいの敷地が借りれたので建てて、今のところは、今度は老健施設にするということです。それから、なお且つ、歯科の診療所も作るということです。一気に病院の建て替え、老健、特別養護老人ホーム、歯科と、4つも作ってしまいます。西宮にも新たに診療所を作ると言っています。それ以外にも、すでにいくつもの診療所があったり、訪問看護ステージョンがあったりするんです。
この尼崎医療生協の存在というのは、そりゃあ尼崎市役所が仲良くしたいと思いますよ。もの凄い社会資本になるわけです。しかも、尼崎市長も尼崎医療生協に来て挨拶で、申し訳ないと言ってるそうなんですが、特医やるにもお金がないので、補助金なんかもう出せない。お金は出せないけれども、応援はすると、だから頑張ってくれと、そんな虫のいい話はないではないかと思いますが、これはただ尼崎市の責任というよりも、日本の地方自治というのは、これからそうなって行くのです。それから、これまでのように財政も縦割りで、中央省庁からどうこうではなくて、一括して財源が来て、それをどう使うか自治体が真剣に考えないといけなくなります。はっきり言えば、生協と組むと、地方自治体は、保健、医療、福祉、上手くいったら安上がりになるかもしれない。無駄が生じないかもしれない。この典型的な例が、城東鶴見保健生協の事例で、大阪市が1人暮らしの老人のために緊急ペンダントをやった時に、城東鶴見保健生協にお願いした所と、医療生協のない所でやった時に、1年間を通じて、城東鶴見保健生協は1件も、1人暮らしの緊急ペンダントが鳴らなかった。他のある地区は頻繁に鳴る。その都度、救急車が行く。行ってみたら、寂しかったから押してみた。でも、その度に救急車が出動するとか、それなりの専門家が行くとかになったら、コストが凄いですね。城東鶴見保健生協の1人暮らし老人の所には、たまには1人にしてくれと言いたくなるほど、入れ替わり立ち代り、誰かが来ています。緊急ペンダントを押す必要がないわけです。そしたら、コストのことを考えたら、こっちはゼロ、こっちはどんどんコストがかかる。これは自治体にとっては、どっちが有り難いかと、もう明快なわけです。
こういう事をやっていくと、どんどん新たなネットワークが出来ます。それから、もう1つは、たとえば、尼崎医療生協の取り組みを見ていて、やっぱり、ただ単に活動をやっているというだけでなくて、それを研修機能を持った研修センターにしているからいいのです。「研修するから来てください」とお願いしたら、こっちが下手になるので、「研修させてやるから来い」と言って、この地域でいろんな課題でワークショップをやってみろとやらして、アイディアを出させる。そしたら、本当はお願いに行かなければいけないのに、来てもらって、それは、さっきのJapan Societyのやり方です。日米のイノベーターたちを呼んでいたら、みんな忙しい社長さんたちですから、講演料払っていたら、みんな1回100万円とか払わなければいけない人たちを、交通費だけで、議論させてアイディアだけをJapan Societyによこせなんてやり方、これ凄いでしょ。そういう事もどんどん取り入れて、いろんな組織とネットワークコネクティングしていくのもいいんじゃないかと思います。
たとえば、そう言った意味で、これはまだやると方針が決まっているかどうかわからないので、ここで言っていいかわかりませんが、非常に面白いのは、大阪の南部の同仁会と医療生協とが合併しませんかというお話が出てますけれども、これなんか、まさに単独でやるよりも、合併したことによる、人的交流のネットワークとか、組織の信頼性だとか、ブランド力のアップだとか、何よりもこれがある事によって、私は大阪府の安心・安全街づくりにものすごく貢献できるという事で自治体にも凄く喜ばれるのではないかと思っています。そこに医療生協などの可能性なんかを見てしまうわけです。
1.Connecting Communities  2.恐るべき尼崎医療生協
3.大阪府生活協同組合連合会の可能性
講演:立命館大学 産業社会学部教授 リム ボン氏
■日時:2006年7月20日(木)  ■場所:大阪府社会福祉会館3階第2会議室

2. 恐るべき尼崎医療生協


さて、生協の話ですが、大阪府生活協同組合連合会の話をやる前に、私と生協の関りというのは、もちろん、わたしは学生の頃、大学生協に加入していました。それから、購買生協にも加入していましたが、ただの消費者というだけで、生協に入ったらいいものがあると、しかも1割引で買えるというだけの事で加入してただけで、運動なんか全然関与したこともありません。ところが、13年前に今の職場に行った時に日本生活協同組合連合会医療部会、医療生協と共同研究ブロジェクトをやるようになって、それ以来、医療生協とは、ずっとお付き合いさせていただいて、結構声をかけていただいて、楽しいプロジェクトをいっぱいやらせてもらっています。
その内の1つに、医療生協の職員の「職員アンケート調査」というのを2回やりまして、2回目が1999年だったんです。この職員のアンケート調査をやっていた時に、当時の事務局長に集計をする前に、事務局長としては今、日本の医療生協で1番元気があって、面白いところはどこだとおもいますかと言うと、尼崎が面白いですよと言ってくれました。当時は、医療生協で全国トップ3とか言うと、大体出てくるのが、埼玉医療生協だとか、大阪の淡路、それから城東鶴見、名古屋の港医療生協、こういったところに調査に行けと言われたのですが、尼崎がけっこう面白くなってきたという話を聞きました。そうかと思って、職員アンケートを集計していて、自由記述なんか見ると、やっぱり熱心なコメントが非常に多かったので、なるほどなと思ったのです。
城東鶴見は桁外れに凄かったですが、ああいう大きいところではなくて、もっと小さいところで動き出したという意味で、その尼崎の凄さを知ったのが、2001年に、尼崎医療生協に呼んでもらって、何かしゃべれと言われたんです。その時に、私がお話したのは、医療生協があってくれて良かったなあという地域になれば、組合員さんが当然増えるわけです。93年から医療生協とお付き合いしだした時に、街づくりというジャンルでやってきましたから、実は私は医療とか保健の事はまったく知りませんでした。私が自己主張するためには街づくりしかキーワードがないので、医療生協と街づくりと強引につないで、「地域まるごと健康づくり」と主張したんですね。そしたら、医療生協は非常に懐が深いところで、それを受け入れてくれたんです。
なぜ「地域まるごと健康づくり」かと言いますと、たとえば、医療生協というのは、こういう政治色です、こういった人たちで成り立っていますとなったら、うちは自民党やと、まずこうなってしまうわけではないですか。だけど、医療生協の凄いのは、みんなが健康になりましょうということを言っていて、これは思想心情を問わず、老若男女を問わず、人類の誰もが欲する共有課題です。その事に、お医者さんを中心とした専門家が上からではなくて、組合員さんたちが主役になって作っていって、病院を経営して、医者を雇っているわけです。そういう組織が元気でいてくれると、地域は非常に安心出来る。つまり、医療生協が元気であればあるほど地域丸ごと元気になりますよという事は、自治体にとっては非常に有り難いことです。ですから、自治体なんかをどんどん巻き込んで行きましょうという話をしました。そしたら、必然的に組合員さんも増えやすいのではないでしょうかと、素人意見を言ったんです。
2001年の尼崎の講演でも言いました。そういう事を目に見えてするために、ちょっと恥ずかしいけれども「けんこう探偵団」と称して、大人だけでなくて、高齢者の方も、子育て世代のお母さんも、それから小学生も連れて、地域の探偵をして、町並みチェックをして、ここがいいとか悪いとか、そういう事をチェックして、行政に要求したらどうですかと。その時言ったのが、行政の担当者も人間ですから、いきなり糾弾ありきみたいな、なんとか解放同盟みたいな、要求だけでなくて、まず相手にご苦労さまですと言ってあげて、だけどこういう問題が地域にあります。場合によっては、地域の調査の時に一緒に、たとえば公園を見に行く時は公園課の人も一緒に来て、町並みチェックしませんかと、そうしたら変わるのではないですかと、提起をしたんですよ。
私は講演に呼ばれて、その場限りで、その話を忘れていたんです。そしたら、しばらくして「けんこう探偵団」やるので、町並みチェックをやるので、もう1回出てこいと言われて行ったら、驚いたことに「けんこう探偵団」ののぼりまで作ってしまっていて、ここのセンスが凄いなと思ったのは、健康を漢字で書かずに、ひらがなでけんこうと書いてありました。恥ずかしかったですね。僕はみんなと歩くのはいやだと言って、僕だけ自転車に乗って、全体を見まわしますとか言ってたんです。
しばらくすると、今度は町並みチェックで、国道2号線に行きました。国道2号線というのは、震災の後でもありましたから、非常にダンプカーがたくさん通るんですね。そしたら、ガードレールがあるんですけれども、ある交差点のところに、雨降りに、小学生の子が雨ガッパを着て歩いていて、ダンプカーが通ったら、水しぶきが頭からまともに来る。こういう所は、この交差点の信号がこう問題で、子どもたちにこう水がかかってというのを、尼崎市役所に持って行ったら、担当者は驚愕してたというのです。普通の要望は苦情だけだけど、あなた達みたいに調査までして、ここでこうなって、いつどうなって、だからここをこう改善するべきだと問題提起されたら、やらざるを得ない。
そこで、次やったのは公園調査で、本当に公園課の人を連れて行ったんです。そしたら、その担当課長さんが、頼みもしないのに自ら、ここはこういうふうに改善しなければいけないと、やってくれたと言います。
それから、今尼崎医療生協は市長さんとの関係も非常に良くて、この9月30日には、市長さんが尼崎医療生協に来てくれて、一緒にシンポジウムをやろうという事になっているそうなんです。
去年、新たな通信教育をやるという事で、ちょっと参加させてもらったんです。通信教育というと、こんな分厚いテキストにレポートを書かせて、普通の人はそんな事いやでしょうから、そんな事やめましょうと、絵本にしたんです。見開き1ページで7章ぐらいで「医療生協とは何か」ぱっと見て解る。医療生協とは何か、医療生協とは医療生協法に基づく、何とかかんとかで、地域と何とかの自主的活動による革新的取り組み・・・こんな事医療生協の幹部でも暗記していますか?してないでしょう。そんな事、初めて生協に入る組合員さんに、しかも30年ぐらいレポートを書いたことのない人に、いきなりさせて、やる気おこりますかというのです。医療生協とは、自分たちのお金を出し合って、病院、診療所を経営する団体ですと、法律的には生協法で認められています。それでいいじゃあないですかって言ったら、すっと入ってくる。もっと勉強したい人は、アドバンスドクラスでこんな事して下さいという事で、その理でやると、結構またこれも楽しく出来ます。
なお且つ、今尼崎医療生協は何をやってるかといいますと、特別養護老人ホームを新しく作ったのです。去年、まずは寄付金を3ヶ月で1億円集めたんです。来年は病院を30億円で建て替える。病院の建て替えは、向かいの敷地が借りれたので建てて、今のところは、今度は老健施設にするということです。それから、なお且つ、歯科の診療所も作るということです。一気に病院の建て替え、老健、特別養護老人ホーム、歯科と、4つも作ってしまいます。西宮にも新たに診療所を作ると言っています。それ以外にも、すでにいくつもの診療所があったり、訪問看護ステージョンがあったりするんです。
この尼崎医療生協の存在というのは、そりゃあ尼崎市役所が仲良くしたいと思いますよ。もの凄い社会資本になるわけです。しかも、尼崎市長も尼崎医療生協に来て挨拶で、申し訳ないと言ってるそうなんですが、特医やるにもお金がないので、補助金なんかもう出せない。お金は出せないけれども、応援はすると、だから頑張ってくれと、そんな虫のいい話はないではないかと思いますが、これはただ尼崎市の責任というよりも、日本の地方自治というのは、これからそうなって行くのです。それから、これまでのように財政も縦割りで、中央省庁からどうこうではなくて、一括して財源が来て、それをどう使うか自治体が真剣に考えないといけなくなります。はっきり言えば、生協と組むと、地方自治体は、保健、医療、福祉、上手くいったら安上がりになるかもしれない。無駄が生じないかもしれない。この典型的な例が、城東鶴見保健生協の事例で、大阪市が1人暮らしの老人のために緊急ペンダントをやった時に、城東鶴見保健生協にお願いした所と、医療生協のない所でやった時に、1年間を通じて、城東鶴見保健生協は1件も、1人暮らしの緊急ペンダントが鳴らなかった。他のある地区は頻繁に鳴る。その都度、救急車が行く。行ってみたら、寂しかったから押してみた。でも、その度に救急車が出動するとか、それなりの専門家が行くとかになったら、コストが凄いですね。城東鶴見保健生協の1人暮らし老人の所には、たまには1人にしてくれと言いたくなるほど、入れ替わり立ち代り、誰かが来ています。緊急ペンダントを押す必要がないわけです。そしたら、コストのことを考えたら、こっちはゼロ、こっちはどんどんコストがかかる。これは自治体にとっては、どっちが有り難いかと、もう明快なわけです。
こういう事をやっていくと、どんどん新たなネットワークが出来ます。それから、もう1つは、たとえば、尼崎医療生協の取り組みを見ていて、やっぱり、ただ単に活動をやっているというだけでなくて、それを研修機能を持った研修センターにしているからいいのです。「研修するから来てください」とお願いしたら、こっちが下手になるので、「研修させてやるから来い」と言って、この地域でいろんな課題でワークショップをやってみろとやらして、アイディアを出させる。そしたら、本当はお願いに行かなければいけないのに、来てもらって、それは、さっきのJapan Societyのやり方です。日米のイノベーターたちを呼んでいたら、みんな忙しい社長さんたちですから、講演料払っていたら、みんな1回100万円とか払わなければいけない人たちを、交通費だけで、議論させてアイディアだけをJapan Societyによこせなんてやり方、これ凄いでしょ。そういう事もどんどん取り入れて、いろんな組織とネットワークコネクティングしていくのもいいんじゃないかと思います。
たとえば、そう言った意味で、これはまだやると方針が決まっているかどうかわからないので、ここで言っていいかわかりませんが、非常に面白いのは、大阪の南部の同仁会と医療生協とが合併しませんかというお話が出てますけれども、これなんか、まさに単独でやるよりも、合併したことによる、人的交流のネットワークとか、組織の信頼性だとか、ブランド力のアップだとか、何よりもこれがある事によって、私は大阪府の安心・安全街づくりにものすごく貢献できるという事で自治体にも凄く喜ばれるのではないかと思っています。そこに医療生協などの可能性なんかを見てしまうわけです。